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2023年5月の記事一覧

赤い想い出(短編小説)

赤い想い出(短編小説)

 アパートのワンルームに帰宅する。
激務で忙しい毎日が続いたので、ほんの癒しが欲しくて、LEDキューブランプを購入した。部屋の明かりを消し、ランプを灯す。優しい夕陽のような
灯りが部屋を包む。ボーッとその灯りを眺めていると小学生の思い出がえる・・・・・・。

 小学校の時。明里ちゃんという友達がいた。
明里ちゃんとよく学校へ一緒に行った。手を繋いで。
明里ちゃんは、赤ら顔で可愛い。 
私は色白でお

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天賦を探しに (短編小説)

天賦を探しに (短編小説)

 遂に、オール三の成績となった。ここまでの努力と道のりは
長かった。
しかし、もう受験シーズンとなり、これ以上の成績アップは望めない。
頑張って頑張って、努力したものの、これが、限界だ。
始まりは、オール1からだった。
だが、ここまで上り詰めた。そして、高校受験。
受ける気すらない。
もう懲り懲りなのだ。頭の悪さと不器用さが自慢なんだ!
と、ひどく自暴自棄になり、ひどく項垂れていた。
 塾の個室で

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怒りの快進撃 (ショートショート)

怒りの快進撃 (ショートショート)

 文化祭の準備が憂鬱だ。
苦手な里奈がという女がいる。
その子に会うだけでもう反吐が出そうだ。
私は勝手に彼女に敵愾心を持っていて、彼女もそれに気づいている。だが、里奈の方が一枚も二枚も上手だ。
周りの子も皆、里奈の采配に頼り切っている。
今日も犬のように、彼女に擦り寄っておべっかを取っている。

勝ち目のない娘に、敵愾心を抱くとは、私ってなんてバカなんだ。
勝てると思っていたのか?私は??
ぐう

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インターホンを押しに 2  短編小説

インターホンを押しに 2 短編小説

気になるこの住所を覚えてしまった。即座に思いついた答えが
フードデリバリー。
これになれば彼女に会えると思った。

そして、なった。

僕は、彼女のアパートの前に立っている。
今更ながら、なんで何も頼まれてもいないのに彼女のアパートの前にいる???

これ、完全にストーカーじゃん!!

汗が滝のように出て、体全身を覆った。

でも、後に引く気はない。
「死のうかな」彼女のあの言葉を思い出す。
嘘だ

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インターホンを押しに 1  (短編小説)

インターホンを押しに 1 (短編小説)

フードデリバリーへアルバイト先を変えた。
別に前のアルバイトの労働条件や待遇に不満があったわけではないし、他にやりたいことがあった訳ではない。

気になる子がいたからだ。気になる子。その子は問題児だった。

その子とは、前のバイトで一緒だった。入ってきてから早々 お客様に対して問題発言をしまくり、厳重注意を受けていた。

ある日の休憩時間。
その子に突然ライターある?と尋ねられ焦った。タバコは吸わ

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今際の映画 (短編作品)

今際の映画 (短編作品)

   

 恩師が50歳という若さで、この世から去ろうとしている。
僕は、そのことを聞いた途端、脱兎の勢いで故郷に戻った。
恩師との約束。はたせないでいる。
約束を果たしたら、最初に恩師に伝えるのが夢だった。だがそれも果たせなくなる。

病院につき、恩師に顔を合わせる。恩師は目を開けるまでもなく僕に気付く。
どっと涙が込み上げる。ここまで愛してくれているのだ。だが、もうこの愛ももらえなくなる。悲し

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