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赤い想い出(短編小説)


 アパートのワンルームに帰宅する。
激務で忙しい毎日が続いたので、ほんの癒しが欲しくて、LEDキューブランプを購入した。部屋の明かりを消し、ランプを灯す。優しい夕陽のような
灯りが部屋を包む。ボーッとその灯りを眺めていると小学生の思い出がえる・・・・・・。

 小学校の時。明里ちゃんという友達がいた。
明里ちゃんとよく学校へ一緒に行った。手を繋いで。
明里ちゃんは、赤ら顔で可愛い。 
私は色白でお化けみたいコンプレックスだった。

一緒に手を繋いで歩いていると、よく男子の健太に揶揄われた。
その都度、明里ちゃんは赤ら顔を余計に赤らめて、怒った。
そして、いつも助けてくれた強い子だった。
冬場は、余計にあかりちゃんの顔が赤く際立って可愛い。私は、温かい気持ちになる。明里ちゃんが好きだ。赤くて強くて優しくて。明里ちゃんみたいになりたかった。私は、色白でお化けみたい。気持ちも弱い。

 私から手を差し伸べると、快く手を繋いでくれた。
その度、ポッと心の灯りが灯されるたようだった。
手を繋ぐのは、明里ちゃんの赤を分けてもらいたかったし、明里ちゃんの強さも分けて欲しかったから。
それを言ったら、「幸子ちゃんは、甘えん坊さんだね」
そう言って朗らかに笑った。
 健太君に、いつしか、
「赤鬼と青鬼だぁと」と言われるようになった。それがしつこくて、腹が立ったので、
「喰ってやるぞ!!」
手を繋ぎながら、健太君を追っかけたら、結構ビビって本気で逃げたから面白かった。

 ある日、明里ちゃんから、手を繋げないと言われた。
どうして?と私。
好きな子ができたとあかりちゃん。
そっか。仕方ないよね。
好きな人がいるのに、女二人で手を繋いでいたら可笑しい事だと悟った。
でも、とっても寂しかった。

 それからと言うものの、手を繋ぐことはなかった。
一緒に帰ることはあっても、明里ちゃんは別の友達を連れてきた。
明里ちゃんとは、ぎこちない会話しかできなくなった。
遂には、一緒に帰ることもなくなった。
好きな子とも、どうなったのかもわからなかった。

 中学になった頃、告白された。明里ちゃんが好きだった男の子。
友情に軋轢を生じた人であったから。冷たく振った。
明里ちゃんと付き合ってほしかった。
そしたら、もう少し明里ちゃんと仲良くできたのに!
もっと私も強くなれたかもしれないのに・・・・・・・

淡い想い出だ。いや、赤い想い出かなぁ


あかりちゃん、元気かなぁー・・・・・・。


私の心は、また赤く灯り出しているのだ。

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