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天賦を探しに (短編小説)

 遂に、オール三の成績となった。ここまでの努力と道のりは
長かった。
しかし、もう受験シーズンとなり、これ以上の成績アップは望めない。
頑張って頑張って、努力したものの、これが、限界だ。
始まりは、オール1からだった。
だが、ここまで上り詰めた。そして、高校受験。
受ける気すらない。
もう懲り懲りなのだ。頭の悪さと不器用さが自慢なんだ!
と、ひどく自暴自棄になり、ひどく項垂れていた。
 塾の個室で、頭を抱えた。もう何もやりたくないし、消えたいとも思った。そんなとき、塾講師に言われた言葉がある。
「健人君、勉強なんかで人生は変わらんよ。勉強なんてこれっぽっちの人生のカケラだよ。けど、そのこれっぽちのカケラのために、努力した君は美しかった。偉かったよ。
でも、やっぱり勉強はこれっぽちのこと。囚われるのはよしなさい。 人には天賦の才というのがある。これからは、それを見つける努力をしなさい。」

その言葉を胸に、大人になった。僕にとっての天賦はまだ見つけ出せていない。けれど、先生のあの言葉は、僕の気持ちを楽にしてくれている。世の中の枠組みに囚われずに、自分らしく生きる術を学んだ。
僕の旅は、まだ続けられそうだ。

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