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入社10年目にうつ病で休職した話【前半】

それは自分が気づかぬうちにやってきた。そろりそろり。だがしかし、身体は異変を感じ始めていた。気づいていなかったのではなく「気づいていないふり」をしていたのかもしれない。

ある朝、ただ1人の、親友と呼べる相手に弱音を吐いた。何気ない内容のLINEが来ていたのだが、本題の件には1行だけの吹き出しで返信。それから朝起き上がるのも、電車に乗って会社に向かうのもしんどいと、その他付随することを併せて書きなぐって送信したのだった。

『ちょっと病院行ったらどうだ?』

彼はありがたいことに参考となる心療内科のクリニックのリンクまで送ってくれた。そこは家や会社から離れていたため最終的に通う場所にはならなかったのだが、ただ僕の為に色々と調べてくれる時間を使ってくれていた、その気持ちがありがたかった。

自分でたくさん検索して連絡したのは会社から徒歩で10分ほどの場所にある精神科・心療内科のクリニックだった。電話をしてみると新規の予約は毎週月曜日のみ先着順での受付で早くても受診できるのは10日後という。このご時勢に悩みを抱えている人の多さを目の当たりにした瞬間だった。

いかんせん仕事の定時時刻が朝は一般より少し遅く始まりその分遅く退勤時間を迎える僕にとって、定時であがっても受診するには間に合わないクリニックが多かった。そこは定時を少し過ぎても何とか間に合う場所だったので、たとえ初診の受診が先の日付になろうとも、そのクリニックが頼りであった。

初診にかかることができた日は、最初に電話で問い合わせをした日から2週間が経過していた。

その間にも所謂うつ病の症状は様々なかたちで身体に表れてきた。最初は仕事のことが頭に浮かび続けて入眠できないところからだった。それから仕事中や通勤中に鈍い腹痛がやってくる。隣の席にいる上司の気分が気になって仕事が手につかない、集中できない。そして食欲がなくなり昼休みはスタバのラテで過ごすようになっていった。

その間、親友は何でも言ってくれていいからなと伝え続けてくれた。今日は調子どうだ?としばしばLINEをくれるようになった。その都度、それまでため込んだものや不安や仕事の話をとりとめもなく吐き出したのだった。

実は身体が異変を感じ始めた頃、何気ない気持ちでうつ病セルフチェックをやっていたのだがその時に、うつの可能性があります、と表示されていたのは確かに記憶している。ただ、その時の気持ちは「まさか自分がそんな訳ない」であった。
よく分からない責任感で「今の仕事がしんどいからといって、逃げる口実に使うわけにはいかない」という、後から思い返せば完全に誤りな思考が存在していたのである。当事者にとってはそういうものなのだろう。既に客観的に見れていなかったのだと思う。

心療内科の初診で診て下さった先生に僕は『仕事を続けるために楽になれる方法を知りたい』と訴えていた。先生は不眠と食欲不振にフォーカスを当てて、まず睡眠導入剤と胃薬でそこを改善すること、そして僕に良く寝て良く食べることを勧めた。

この時はまだうつ病だと診断されたわけではなかった。よくある、薬を飲みながら様子を見ましょう、というやつだ。これは初診の時はしょうがないのだろう。僕の場合は心療内科にかかったこと自体が初めてだったのもあったと思う。

翌週、経過はあまり回復せず。睡眠導入剤は正直なところ恐くて飲めなかった。この1週間の間の休日で試しに飲んでみたのだが翌朝が仕事の日は、まだ何とか行けていた仕事に本当に行けなくなることが恐かったのである。

結局、睡眠導入剤にはほとんど手を付けず10日ほど経った時、一向に症状が改善されずしんどさを増した僕は、先生を変えることを決めて予約を取り直した。

たまたま受診していた先生は毎週同じ曜日限定の人だったらしく、通っていたクリニックの代表の先生が別にいらした。その先生の空いている時間で仕事の後に受診できる枠を押さえたのだった。

翌受診日、クリニック代表の先生はとても親切に丁寧に話を聞いてくれた。そして「あなたはうつ状態です。診断書を書きますからお仕事は休みましょう」と言ってくださったのであった。

書いていたら長くなってしまったので一度前半ということで、後半に続きます。


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