『実に気が利いている』

実に気が利いている

本来なら夏休みの書入れどき

海からほど近いこの街は

こんな冴えないビジネスホテルですら

満員御礼のはず

ところがご時世もご時世

俺みたいな社畜がちらほら利用するだけ

（商談なんてオンラインでいいだろう）

だからサービスがとても良い

朝食バイキングからして夏らしいメニュー

俺は食欲の高ぶりを抑えて

まずはそうめんをお盆に載せる

ん？

んんん？

あの前方に見えるのは

ビアサーバーではありませんか

どうやら朝食バイキングから飲めるようで

商談は午後からだから

構わないでしょ

いただいちゃうとしますか

へへへどうもすいませんね

グイッと朝から

たまらないね

くうぅ

こうなりゃ枝豆も

最高ぉ

太陽は少し西に傾いている

締めにカキ氷を食べたところまでは覚えている

チェックアウトを忘れ

寝間着のままに

朝食会場を追い出され

ロビーのソファで眠りこけていたようだ

商談の時刻はとっくに過ぎている

社用スマホの着信履歴がエグい

急ぎ部屋に戻ると

廊下にスーツケースと衣服が一式

雑に放られていて

だから商談なんてオンラインでいいんだってば

ホテルを出て

あてもなく近所の公園のベンチに腰を下ろす

きれいなひまわりが

いち

に

さん

し

ぜんぶで五輪

愚かな俺をあざ笑うように

皆こちらを向いている

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こちらの作文は、闇夜のカラス様から一言、ならぬ「ビール」「枝豆」「お盆」「海」「カキ氷」「そうめん」「五輪」というお題をいただいたので全部盛り込んでみました。多分全部入ってると思います。

闇夜のカラスさん、ありがとうございました。

闇夜のカラス｜note