『せやからボール遠くへ飛ばして自分はゆっくり走るんや、なぁ。』
いまから一昔前の
取材メモが出てきた
なかば口癖のそんな常套句から
大打者の語りはいつも始まる
通算777本
歴代2位
昭和の夜空に
数多のアーチを架けた
いまでこそ大打者の
その特権と言われる
ホームラン確信歩き
つまり
打った感触だけで自ら
ホームランを確信し
一塁へ向かって
全力疾走することなく
悠々と歩き始める
レジェンドの語りは
まだまだ続くが
取材班は次の現場へ
先を急ぐことにした
明日かもしれないし
あさってかもしれない
あるメジャーリーガーの
去就次第で
紙面の都合が変わるから
さいあくボツかもなんて
言えるわけがないよな
なんてことを思ったのを
いまでもよく覚えている
往年の大打者は
元気だろうか