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『せやからボール遠くへ飛ばして自分はゆっくり走るんや、なぁ。』


いまから一昔前の

取材メモが出てきた




せやな…


なかば口癖のそんな常套句から

大打者の語りはいつも始まる


んまあオレにとっては、ホームランちゅうのは仕事やな。なんや、打者は打つことが仕事やで言われたらそら言い返せへんけどもやね。までもぉ、オレはそこんとこまぁそら、あれよ、結果残してきたつもりやからね。探究させてもろてええやろ思うとるよ。


通算777本

歴代2位

昭和の夜空に

数多のアーチを架けた


この腹みてみぃホレ。こんなんがダイヤモンド全力で走ったってしゃあないやろ。せやからボール遠くへ飛ばして自分はゆっくり走るんや、なぁ。楽なもんやで。妙にゴロがライトへ抜けたりなんかしたらかなわんのよ正直。いまでこそその辺勘弁してもろうとるけど、若い頃はなぁ。怠かったわ、あぁ怒らんといて。


いまでこそ大打者の

その特権と言われる

ホームラン確信歩き

つまり

打った感触だけで自ら

ホームランを確信し

一塁へ向かって

全力疾走することなく

悠々と歩き始める


ま軽いもんや、ほんまのホームランは。スコーンと抜けるような感覚やね。これは打ったことないとわからんやろけどな。そんときはもうほんま快感も快感よ。スタンドも盛り上がっとるからねぇ。オレも浸らせてもろうてね。ただオレの場合はなかったけど、のんびり歩いとってフライアウトなってみぃどやされるだけやすまへんでほんま。



ホームランの手応えは確かであった



いまぁ?なあーんもしてへんよ。生放送であかんこと言うから解説の仕事もこぉへんし、そもそも人様に教えられるほど理屈なんてもってへんもんでな、監督やコーチなんかもってのほかやねんな。そもそもいまどきの野球で全力疾走せぇへんやつなんかいらんやろ。そんくらいオレでもわかるわな。


レジェンドの語りは

まだまだ続くが

取材班は次の現場へ

先を急ぐことにした


おぉ兄ちゃんら、これ記事になるのいつや?


明日かもしれないし

あさってかもしれない


あるメジャーリーガーの

去就次第で

紙面の都合が変わるから

さいあくボツかもなんて

言えるわけがないよな




なんてことを思ったのを

いまでもよく覚えている


往年の大打者は

元気だろうか





















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