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2022年2月の記事一覧
連続note小説『みやえこさん』終『生き恥じて』
(前回:4.『新宿にて』)
編集者より まえがきにかえて
この書籍は、20XX年X月、当編集部宛に自費出版の依頼として手稿を寄せてくれたとある女性の独白をほぼ原文のままに、活字に起こしたものです。
かつて知られざる生々しい体験を私たちは読み進めていくなかで、その文化的価値を認め、筆者本人とも幾度かの打合せを重ねた末、当社において経費負担のもと、刊行するに至りました。
当社に送られた手稿に
連続note小説『みやえこさん』③『祝い弔い』
(前回:2.『あんずあめ』)
実家の母から、めずらしく電話があって。きけば、このあとすごくイイおカネになるお仕事があるから待ちなさいとのこと。それ以上をこちらが尋ねてもはぐらかされたので諦めた。
西山ツドイ二十八歳男子。田舎のそこそこ優秀な高校から東京へ出て大学を卒業後、小さな商社に勤めたものの夢をあきらめきれず、あてもなく退社、専門学校で写真の基礎を学ぶ。その後は大御所の弟子になるで
連続note小説『みやえこさん』②『あんずあめ』
(前回:1.『とろける』)
八月のおわり、お盆の翌週にある祭の日は、いまや年に一度、慶壱が家の外に出る日。
漁業と海運で中世から生きながらえてきたこの集落、窪の祭は、山の中腹にある神社から御神体を担いで下り、舟に乗せて祀る。防波堤が松明で縁取られ、日没が迫る頃、舟は港を出る。翌朝、人の気配がない時分に神様は引き揚げられて、お社に戻される。
港の広場には屋台が出て、地元住民と、里帰り
連続note小説『みやえこさん』①『とろける』
(前回:序『みやえこさん』)
その夜はじめて、苦虫一郎は以前から気になっていたサイトにアクセスした。ひとまず無料見積りの依頼を済ませ床に就く。
あくる日、さっそく先方からの返信、近日直接会いたいの旨。焦る気持ちもなかったから、ちょうど一週間後、きょうと同じ曜日の午後を指定してみた。
待ち合わせの場所に着くと、すでに先方らしきダークスーツの男がひとり、こちらに背を向けて座っている。
連続note小説『みやえこさん』序『みやえこさん』
本日より6日連続でアップいたします。
よろしゅう。
まずは序の口でこちらの雑誌記事からどうぞ。
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つづく
(次回:1.『とろける』)
https://note.com/mako_makkonen/n/nc4a60dacd11b