『その瓶があるというだけで』


その瓶があるというだけで

嫌悪感を抱かれる


その瓶の存在を口にしただけで

疎ましがられる


どんなに厳重な梱包をしても

どんなにスタイリッシュなラベルでも

その瓶が棚に置いてある場合

周囲の空気は張り詰めるかあるいは

どんよりとしたものになる


もとより

そもそもその瓶詰の製造過程で

どんな個体でも若干は内容物が

漏れ出るようにできているというから

諦めるほかないのだろう


もっとも酷いのは

何かのはずみで棚から落ちて

瓶は粉々

内容物があたり一面を

不快の海としてしまうこと

まったくもって迷惑の極み

そうならないように誰しも

瓶は丁寧に取り扱う必要があって


なかには好んで瓶を手に取り

蓋を開けるものもいる

独得の風味が

たまらないそうだ

そういうものはそういうもので

好きにしたらよい


時間の経過とともに瓶は

棚から消えてなくなる

でもその変わりに次々と

新しい瓶が置かれる


加齢臭を詰めた瓶詰は

老害とかいうブランドの専売特許

これまでも

これからも

市場での勢いは衰えることがない








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