『「あのふかふかシートのスクリーンさぁ』

開演を告げるチャイムとともに

薄暗かった照明が

一段と落とされる

この瞬間が

とても心地よい

とはいえ

駆け込みで入ってくる客がいる

私のちょうど目の前に腰を下ろすので

なんだか面食らった気分

まずスクリーンに写されるのは

予告編が何本かと

映画泥棒がなんちゃらっていう

ようやく配給会社の

オープニングムービーが流れて

あれ…？

いつのまに？

エンドロール…

私としたことが

情けないことに

上映の間まるまる

眠ってしまっていたようで

とてもじゃないけど

悔しくて帰れない

次の回は20分後に開演とある

どうやらチケットも余っているから

観ていかねば

不思議なことに

先ほど目の前に駆け込んだ客も

私と同じ状況だったのか

20分後の回のチケットを買っている

ん？

右隣に居た人も

買っている？

まぁ気持ちがわからないでもない

先ほどの回で腰を下ろしたスクリーンは

かつて体験したことのないような

ふかふかのシートに

なんだか心地よいアロマのような香り

チケットは通常の2倍以上の価格だった

眠ってしまうのも無理はない

しかし次の回は

幸か不幸か

通常のシート

たっぷり寝ただけあって

映画を堪能できるだろう

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「ねぇねぇ副支配人

「は、なんでございましょう支配人

「あのふかふかシートのスクリーンさぁ

「は、おかげで収益は上々です

「それは知ってるでもさぁ

「は、なんでしょう

「催眠ガス流すの、よくないよ