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友達というか社外取締役

40代女性3人が、食事をしながら会話をしている。
彼女たちは高校以来の旧友だ。

現在、Aは夫と子どもを持ち、Bはパートナーと2人暮らし、Cは時折パートナーと趣味を変更して楽しみながら、それぞれの人生を歩んでいる。

30年近い時の経過のなかで生活環境の共通点は少しずつ減ってきているものの、こうして年に何度か会って話をするために食事をともにしている。

不惑といわれる40代、もはやさすがに自分探しなどというフワフワした悩みはないが、仕事や家庭や親などについて悩んだり苛立ったりし、そんなそれぞれのテーマを抱えて集う。





「はい。おつかれー
で、Aのあれはどうなった?」


乾杯するやいなや、前置きもなくまるでアジェンダがすでに共有されているかのように話が始まる。


「いや一旦保留。保留というか現状は中止かな。もともとの課題がなくなってきてね」

「いい選択だと思うよ。選択肢は手段でしかないしね。本質見直すことができてよかったよ」

「ほんと、前回はもうその道に突き進むしかないくらいの勢いだったよね。変化のきっかけがあったの?」

「2人がいい具合に水を差してくれたからね、帰りの電車で考えてさ、もう一度課題と向き合ってみて会社と相談しようと思ったんだよ。
それでCは?最近仕事以外のことできる時間作れてる?」




前回の食事会で出た懸案についての進捗が共有されて、状況にポジティブな変化があることが分かると、すぐさま次の議題が振られる。

次のCの話は新しい彼との進展で、忙しいなりに週末を利用した短い旅行を頻繁に楽しんでいるらしい。
Cの楽しげな話に対して、AとBは思案顔をする。

Cのもともとの多忙な生活に加え、(Cの話によれば)要求の多い彼の存在のリスクについて話が進む。

結局、関係は保ちつつ要求を断ることをして反応を確認してみることにまとまる。


続いてのBの話は仕事のことで、いちいち指示をあおぎにくる所謂かまってちゃんな若い部下についてグチまじりに語る。

それを聞く2人は同調するかと思いきや、Aはいう。

「いやー、若い頃なら私もかまってちゃんだったよ。何するにも不安だから先輩にいちいち話聞いてもらってたわ。当時の私だと思って話聞いてあげてよ。」

「そう?そんなだった時代あるかな?まぁそういわれてみればね。いやしかし解決は自分でしてほしいけど話聞くだけはすることにする」

そう返すBの表情はすでに明るくなっている。





そのあともたくさんの話が上がり、めいめいが意見を言い合う。

同調するときもあれば、真っ向から反対意見が上がるときもあるが、お互いに「そう?」という調子で受け取り合う。

受け入れ難い意見は「ちょっと考えてみる」といってすんなり下がる。険悪な雰囲気になることは不思議とない。


友人同士の会話というより、まるで社外取締役にさまざまな経営判断について相談し、意見をもらうようなやりとりだ。

直接的な利害関係がなく、自分にはない知識や経験に基づいて、役にたつ本質的なアドバイスをしてくれる存在。
しかも付き合いが長い分、お互いを深く知り、人生における意思決定に必要な知識に広がりだけでなく深さまで与えてくれる。


友達を再定義するとしたら、「私の人生の社外取締役」かもしれない。


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