お子様接待の、本気度
「お子様接待」という言葉がある。
たぶん誰にでも通用するような言葉ではないのだろうけど「この連休は遠出ができないから毎日お子様接待よ〜」みたいな感じで私の界隈ではたまに使う。
個人的に1日遊んでやらなきゃくらいのライトな感覚で使っていたが、お子様接待は実はもっとガチでシビアな接待なのではと思った件について。
旅先にて、夕食のビュッフェでのこと。
我が家の次男(小2)はこれまで、ビュッフェでは私か夫がお盆を持って回っていたが、今回初めて自分でお盆を持って回ることができた。
私は多少次男を気にしつつ自分の料理を気兼ねなく取れてとても楽だった。
長男時代から数えると10年以上、ビュッフェでは社長のカバン持ちならぬ子供のお盆持ちをしていたわけなので、子育てのステップを一段昇った気がして軽く感動したほど。
こりゃ楽だわ〜
今までなら子供のを運んでから自分のを取りに行ってたのが、一度で済んで全員の料理が温かい状態で一緒に「いただきます」ができたのも初めてな気がする。
食べながらふと隣を見ると、3歳くらいと1歳前後の小さなお子さんのいるご家族で、席に不都合があったのか、係の人にあれやこれやと相談をしていた。
・赤ちゃんが座れる椅子
・赤ちゃんが食べれる離乳食
・食べやすいスプーンや取り皿
・いつでも寝かせられるようにベビーカーを広げておけるスペース
・グズッたときに気をそらすための外が見える窓
・グズッたときに気をそらすのにちょっと出られるテラス(への入り口がそばにあること)
・横に軽く寝かせてもおきたいからソファ席
そんな感じのことを要望していたと思う。
あと、赤ちゃんが機嫌の良いうちにロケーションを万全にしたいのか、とにかく焦っていた。
私も子供が乳児のころはロケーション万全にしたい派だったので、分かるなーとも思ったし、しかしながら昨今はすぐに「子連れ様」とか言われるのを見るのでザワッともしながら、同時に気づいたのが
「これ、あれだ。接待」
ちょうどその前日にアマプラで見ていたドラマで取引先の重役を接待するシーンがあったからだと思う。
若手社員のちょっとした(良かれと口にした)一言で重役が気分を害してしまい「帰らせていただく!」みたいな展開で、若手が同席していたモラハラ上司に理不尽に怒られる話だった。
(ちなみに見ていたのは「転職の魔王様」だ)
先方の重役の好みをリサーチして食事場所や出身地の地酒を用意したり、個室だの仕事の話以外の話題提供だの一発ギャグだの。
赤ちゃんのいる食事も、気を使うポイントがほとんど同じではないか、と。
そう思ってお隣を見ると、必死に要望を伝えるママは若手リーマンで、要望を聞く係の人はリーマンの無理めな相談をたしなめつつ粋な代替案を提供する女将で、抱っこ紐を常時腰にスタンバイしているパパは環境が整うまで場を持たす若手リーマンだった。
いわずもがな重役は赤ちゃん。
本当にそれくらい、赤ちゃんの一挙手一投足に全員が右往左往する緊張感があった。
ドラマで見た「ザ・接待」の風景と大きく違ったのは、指示をだす接待慣れした上司はいないという点。
要は、接待初心者の若手リーマンだけで、完全に手さぐり状態で超重役の接待をしている感じだ。
(ドラマでは接待慣れした上司がすごいモラハラで、それも大変そうだったが)
これでは重役の顔色を伺いすぎて女将に無理難題を言ってしまうのも、重役の気を損ねて重役が大暴れしてしまうのも、重役の怒声で他の客に迷惑かけてしまうのも、大いにありえそうではないか。
いま世の中でさんざん聞く「子連れ様」の言葉は、ほとんどは、接待初心者の一生懸命な仕事の結果への酷評なのかもしれないなと思った。
赤ちゃんは傍若無人で難しい。どんなに難しい人柄の重役よりも難しいのが赤ちゃん。
初心者ながら赤ちゃん接待に挑戦中の若手人材には、白い目ではなく温かい目で見ることを決意した、次男のビュッフェ独り立ち記念日。
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