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レバレジーズを退職します/人材紹介の最前線で見えたITエンジニアとして長く生き続けるための傾向と対策

 本日8月26日、レバレジーズ最終出社でした(8月末退職)。レバレジーズではメディアシステム部部長としてエンジニアリングマネージメントを中心に担当した他、レバテック技術顧問としてエージェントの専門性向上などを担い、ITエンジニアのキャリアについて接したり深く考える機会が多くありました。写真は最初の勤務地のヒカリエと、現在のスクランブルスクエアです。

 退職理由などについてはここ数年情シスの長としてレピュテーションリスクの観点から監視する側だったので特に書きませんが、代わりに私が採用時・入社後に示してきたITエンジニアとして長く生き続けるためのポイントについてここに記します。つまりは「指名されるエンジニア」になるために必要な事柄です。IT業界に出入りして20年。数多のプレイヤーの栄枯盛衰を見てのお話です。この観察結果からまとめた内容になります。

最も恐れなければならないのは忘却されること

 以前にも少し触れましたが、レバテックでの活動を古巣の大学研究室で話した際、アメリカ人の先生に下記のような話を頂きました。

私が大学生の時、キャリアについて二人の印象深い先生が居た。
一人はある技術の権威だった。その技術が全盛の時は引き合いが強く彼は頼られた。しかしその技術が廃れると彼は大学を去ることになった。彼の専門は半鑽孔テープだった。
もう一人はまた別の技術の権威だった。しかし彼は周りとコミュニケーションを取ることをしなかった。そして技術が廃れると彼は忘れられ、彼に声を掛ける人は居なくなった。彼は大学を去った。

 技術の更新と、周りの認知があって初めて指名されるエンジニアになります。

 エンジニアとしての現役感を出すキャリア像としてT字やπ字などが持て囃されて来ましたが、更に踏み込んだほうが生き残る傾向にあると考えています。それが下図。

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 気の利いた〇字が思い浮かばないのですが・・・免震構造型キャリアとでもしましょう。黄色い部分については5つのうち2つ以上持つ方が残る傾向にあります(以下Opt)。次にそれぞれについてお話していきます。

1)基礎知識

 コンピュータサイエンス、及びインターネットの基礎技術に関する知識です。プロセスとは/メモリとは/効率の良いソースコードとはといったところから始まってWEB系のプログラミングですと何をサーバ側に置き、何をクライアント側に置き、どう問い合わせを行うのかといったところが昨今では重要なファクターになってきます。メンテナンス性を考慮し、序盤からコンピュータサイエンスの学位を持っている方限定の求人票というのも見たことがあります。

2)専門性は2つ

 T型、π型の議論が起こって久しいですが、単一の専門性は非常に危ういです。時折、投棄的なキャリア形成をされる方が「俺はこの技術一本で食っていく!」と人生をフルベットされるのですが、自殺行為と断言して良いと思います。単一の技術に絞ることは心中のリスクがあります。ある時突然自動化ソリューションが表れたり、トレンドが流れていく可能性があります。ウリにできるスキルは2つ、そしてそれを時代の流れに合わせて変化させていくのが必要です。

3)(他職種との)コミュニケーション能力

 新規の仕事を依頼してくる殆どはエンジニアではなく他職種です。エンジニアからやってくるのは下請けの可能性もあります。できれば経営層と意思疎通ができるようになれば直接仕事を依頼される可能性が高まるのでお勧めです。仕事を依頼されるだけでなく、相談されることで存在感を出していくのが重要です。是非BizDevまで意識して踏み込んでいただきたいところです。

4)(Opt)リーダーシップ

 1メンバーだと2020年現在は30代前半くらいまでは何とかなります。しかし30代中盤になってくると単価が安くてパフォーマンスが高い若手に声が掛かりやすくなってくるため、自然と優先順位が下がっていきます。

 以前、「3年で転職しないと腐る」という転石苔むさずという観点の論調が拡がっていた時期がありましたが、これは多くの場合、万年メンバーになるリスクがあります。典型的な日本企業では3年を迎えるあたりで組織としての信頼を勝ち取りリーダーを任す傾向にあります。ベンチャーは多少短くなりますが、マネージャーやCxOに繋がる部長職などを想定するとやはり3年というのは一つの節目です。つまりは3年以上同一組織に在籍して居ないと職務経歴書にガツンとかける肩書は得にくい傾向にあります。3年未満の周期で転職を繰り返し、リーダーなどをしないままメンバーであり続けた35歳以上の方は多く居られますが、どうしても年収のアッパーが見えてしまいます。

5)(Opt)マネージメント

 PjM、PdM、EMと色々とあります。期せずして自身の転職でこの辺りの質疑は多かったので、23社と話をした2020年夏の傾向をまとめます。

 PMの場合はPjMなのかPdMなのかをはっきりすることが市場的に求められます。また、PjMの場合はきちんとしたアジャイルを回した経験が強いです。なんちゃってアジャイルの場合は転職の際は不利です。このあたりは面接を経て確証を得ました。あと「火消しが強み」は楽しくお話できますが、炎上してない会社ではそんなに響かないです。

 EMはまだ日が浅い職種なので質問は手探りな傾向があります。1on1、離職防止、パフォーマンスを発揮できていない社員の活かし方、評価制度(作ったエピソードは強い)とかに言及できると良いでしょう。ただ全社員数50名くらいの企業だとEMやVPoEのポジションでも実装力やPjMの代行を求めます。全社員数200名以上/エンジニア50名程度になってくると専任のEMやVPoEの話が出てくる傾向にあります。しかし多くの場合、充足しています。

6)(Opt)プレゼンテーション

 社内外に対して自身が取り組んでいる内容、興味がある内容を発信することです。ブログなどでも構いません。勉強会・LTの登壇はスライドを共有することが重要です。この際心がける必要があるのはメディアの性質です。Twitterのようなフロー型メディアは発信の一種ではありますが、継続的にバズらない限りはTLの藻屑と消えていきます。バズらず、ピックアップもされないTweetは発信としてはノーカウントです。ブログやスライド共有、最近だとYouTubeやPodCastなどもありますがストア型メディアで「検索したら出てくる」状況が必須です。もちろんここ、noteも良いですよ。

7)(Opt)採用

 チームビルディングの一環です。自社のことを理解し、求職者さんに訴求をしていきます。EMも同じですが相手がヒトなのでどうすれば気持ちが動くかを考えながら訴求して行かなければなりません。不快な思いをさせるなどは論外です。この項目のポイントは面接経験があるかどうかではありませんし、ましてや面接数でも採用数ありません。15万人とかも無意味です。嘘をつかず、実直にアトラクトして入社、定着・活躍に繋げられたかです。

 これが普段のコンピュータを相手にした業務とは異なるため、エンジニアの中では興味がある人が少なく希少性が出ます。人事に丸投げする企業もありますが、それで採用できる企業は有名企業のごく一部です。自身と共に働くメンバーを集めるのだという気概がなければ現在の採用シーンは厳しいです。

8)(Opt)教育

 新人教育・オンボーディングなど後進に教えるという行為です。ここで注意したいことは自分のスキルを抱え込まないことです。門外不出のように自身のスキルを頑なに伝承しない人が居ますが、周りから見ると「とっつきにくい人」と見えがちです。当該スキルが時代の変化に伴い需要がなくなると、スキルと共に去っていく人は少なくありません。

まとめ:免震構造型キャリア

 下記コンテンツで下記のようにお話させて頂きました。

Q.ITエンジニアのバブルはいつまで続くのでしょうか?

A.この答えは西暦で答えるのは違うように感じています。20代-30代前半までの期間がバブルであり、ボーナスタイムなのだと考えています。現在の転職市場を見てみると35歳で企業ジャッジがシビアになり、45歳になると求人票が見つかりにくくなります。

 20年のIT業界観察を経て、行方が分からなくなった人たちの特徴は

・一時期は需要があった
・今後の需要についての夢物語があった
・夢物語を信じてフルベッドした
・夢物語は現実にはならないまま年を取った

といったことがあります。目の前のことに一点集中するということは美徳として称えられる傾向にありますが、特に誰が責任を取ってくれるわけでもなく、可用性という観点で行くと推奨しかねます。特に流れのはやいITではこの免震構造型キャリアを意識されることをお勧めします。

久松はどこへ行くか

 9月から某所にジョインします。非常に面白いジョブディスクリプションなのですが、どこまで公開していいのか分からないので追々お話しできればと思います。引き続きEM界隈には居りますし、本note、マガジン共に引き続き更新していきます。よろしくお願いできればと思います。

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