これからの自治体の人材育成で必要なこと
最新のデータを見ても自治体職員の、特に若手中堅の離職に歯止めがかからない状況です。
さらに人口減少が進む以上、人手不足はこれからどんどん増していきますし、また私の前職在籍中の体感からしても、「本当は公務員を辞めたいんだ」という潜在的な退職者層はまだうじゃうじゃいる、というのが実情と思われます。
そんな中ではエンゲージメントを高めていくというのももちろん重要です。
一方で、今までのように行財政改革で人減らしをするというのと異なり、否応なしにますます少数精鋭で組織運営をしなければならない状況にもなってきています。採用はますます困難に、退職者もますます増えることが見込まれるからですね。
今はアルムナイ採用を検討する自治体も増えてくるなど、色々な方法で対策を考えていらっしゃる方も多いです。そのうえで、職員の人材育成についてより必要になってくるのはどんなことでしょうか?
職員を「消耗品」ではなく一人の人間として捉え直すのが大前提
まず何よりも大切な前提として、職員を改めて人間としてちゃんと捉え直す必要がある、ということがあります。
長い不景気と行財政改革の中で、1人の人間であるはずの職員を軽視する風潮があまりにも当たり前に根付いてしまっています。それは実際に人減らしの旗を振る側の職員も含めてですが、公務員全体の人間性を認めない社会的風潮が強かったからですね。(もちろん、その時期は民間企業でも同じく多くの人が苦しんでいました。)
とある自治体では新人への訓示で、「あなたたちが市で最も大きいコストです」というようなことを仰っていると聞きました。確かに財務上の人件費が大きいのは事実ですが…これを言われてしまったら速攻で転職サイトに登録したくなりますよね。人をモノ扱いしてしまっているスタンスの極端な一例です。
そして10年前ならこのような態度も残念ながら社会に受けいられていました。しかし今は通用しない前提です。こういうスタンスを根底に持ってしまっていると、何かにつけて職員の人間性に目を向けられなくなってしまいます。結果的に、そんな様子を見て失望した若手や中堅はせっせと転職活動に励んでしまうんですね。
「辞めていく優秀な人材<育つ優秀な人材」になるよう人的資本へ投資する
「ちゃんと育成して能力のついた職員は辞めてしまうので、育成なんてしない。ましてや副業なんて、そこで力をつけられたら辞めてしまうから認めたりしない。」
驚くべきことに、これは実際にとある自治体の人事経験者が仰っていたことです。全ての自治体がそうではありませんが、この潜在的に人を育成しないというスタンスは色々なところで広く暗黙の前提となってしまっていることがあります。
確かに、能力の高い人材というのは公民問わず辞めていきがちです。ですがそれは本人の職業選択や人生の自由であって、仕方のないことです。これは人権に紐付いてるものだという大前提は認識したいところです。
そのうえ「辞めてしまうなら能力をつけさせないようにしよう」というスタンスでいては、日常の業務でもパフォーマンスが上がりません。
やるべきことはむしろ、エンゲージメントを高めて退職者を減らしつつ、辞める職員を押さえ込むのではなく、新しく開花する職員が増えるよう育成に投資するのが建設的です。
ところが、前述の"人減らし"時代の名残というのは至るところに痛みを残してしまっており、、「人材育成にそんなにお金をかけるなんて効率が悪いことはできない」という拒絶反応が出てしまうことすらあるのです。
こうして生まれているのが、カオナシ公務員ですね。。
一方で昨今の退職者の増加というのは、誤解を恐れずに言えば、こういった負の文化を変えるチャンスです。これからはちゃんと個を見て人間性を認め育てていく、人的資本投資をしっかりやっていく必要があります。そうでないと、組織運営自体が困難になってしまうからですね。
育った人材がフルパワーを出せる組織環境に変えていく
特に異動の激しすぎるゼネラリスト偏重なケースにおいて、ちゃんと業務上必要なスキルを特定していって、専門性の高い職員を育成することが大切です。
それは「自分ならできる」という自己効力感を育むことにも繋がるうえに、自己効力感はエンゲージメント向上にも寄与する要素なのです。
そういう意味でも、ちゃんと人を育てることだけでなく、育った人材に最大限力を発揮してもらう組織づくりも大切な前提になってきます。
もちろん私もそこそこ自治体で色々な部門を体験しているので、それを実現することがいかに容易でないかは痛いほど分かります。。
だからこそ、一歩ずつでも先に進んでいこう、という勇気がとても大事になりますね。
「そんなの無理だ」と思うかもしれません。もしかするの長年の失望が重なって、「訓練された無力感」を身に着けてしまっていませんか?まずは自分自身の人生のためにも、そういったマインドロックを外していくプロセスも重要です。
そんなときはコーチングを受けてみるのも一つの手です。自治体の人材育成も含めて、お困りのことがあればご相談ください^_^
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