風秋冬

恋愛、ギャグ、ファンタジーなどあらゆるジャンルに手をつける物書き。 知識をつけるのが好…

風秋冬

恋愛、ギャグ、ファンタジーなどあらゆるジャンルに手をつける物書き。 知識をつけるのが好きだとほざくが、覚えたはしから忘れていくのでメモは必須。 いろんなジャンルの記事を書いて行きます。

最近の記事

あまりにもモテないので京都の縁切り縁結び神社に行った

#創作大賞2024 #エッセイ部門 もう行こうと思った時には新幹線に乗っていた。 心の中で思った時に既に行動が終わっているものだ。本気とはそういうこと。 京都に突然行くことになったのだ。単身弾丸旅行に出たのである。 金を下ろして東京駅から新幹線に乗り、後ろに飛んでいく景色を見ながら我に返った。 なぜ私はこうやってたまに行動力の鬼になってしまうのだろうか。コミュ障ヘタレで、うたれ弱いくせに、自分の行動力には驚かされる。 新幹線代はべらぼうに高かったし、何がしたいのかお前はと

    • 三流絵師 十一話 【短編恋愛小説】

      #創作大賞2024 #恋愛小説部門 十一話 明野星は死んだ。自殺だった。 それを教えてくれたのは富岡先生。あの後病院まで行ったけれど、結局会えなかった。それもそうだ。恋人でも友達でも家族でもないのだから。 明野は最後の時を何故里見と過ごしたがったのか。本人がいない今は誰にもわからない。 彼の中にどんな苦悩があったのかとか、里見がそれを聞いてやれなかったとか。 いろいろあるけれど。最後に里見にスケッチブックを渡すために旅行へ行ったのだろう。 明野星は里見を導いた。 里見は

      • 三流絵師 十話 【短編恋愛小説】

        #創作大賞2024 #恋愛小説部門 十話 軽く喫茶店の人間に挨拶を済ませると、ちょうど着信が入った。相手は富岡だった。 「珍しいな。富岡先生」 アトリエから離れて以来、富岡とは連絡を取ることもなかった。彼は里見が芸術から本当に離れることになるかもしれないと言っても特に怒らなかった。また戻っておいでと言っていた。富岡から連絡ということは、何かの依頼だろうか。いや、完全に芸術と手を切りつつある里見にそんなことはしないはずだ。 「もしもし、先生。お久しぶりです」 「ああ。里見君

        • 三流絵師 九話 【短編恋愛小説】

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 九話 旅行から戻って少しすると、里見はアトリエに美大生の連中を集めた。そしてしばらく活動を中止する宣言をした。 「明野星を知っていますか?」 里見は静かに言った。別の芸術家の名前を出した里見にみんな動揺を隠せない。 「彼の世界は素晴らしい。彼の世界を世間も認めている。優秀な画家です。だから本当に売れる芸術を、本当にいいものを見つけたいなら彼の絵を見てほしいと思っています」 里見が他の芸術家を褒めたことに、みんな互いの顔を見合わせて驚いて

        あまりにもモテないので京都の縁切り縁結び神社に行った

          三流絵師 八話 【短編恋愛小説】

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 八話 乱れた布団を押して起き上がると、足元に浴衣が転がっていた。 そのまま寝てしまっていたのだろう。いつのまにか時計は午前五時になっていた。立ち上がろうとしたが、腰の重みでへたり込んだ。 足が押し付けられていたせいか、畳の後がくっきり残ってしまっている。 太ももが痛い。全身に鈍いだるさが走る。首をもたげると、視界の隅で明野が動いた。 「おはよう」 明野は微笑むと、里見に近寄りそっと額にキスを落とした。 これは夢なんじゃないかと思う。 だ

          三流絵師 八話 【短編恋愛小説】

          三流絵師 七話 【短編恋愛小説】

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 七話 恋愛なんてお遊びだ。下らない茶番だ。作りだすことに恋い焦がれて、生身の相手への好意を忘れていた。性欲と情動を混同した遊びだと思っていたのに、焦がれていたものが消えてから気づいた。 人に全身で寄りかかることの心地よさを。これを好きだと言っていいのだろうか。 好きという言葉のなんて曖昧で複雑なことか。 ちょっと旅行に行きたいなんて我儘を明野は簡単に聞いてくれた。 海が見たいななんて言ってみると直ぐに車を走らせて運んでくれた。夏だから

          三流絵師 七話 【短編恋愛小説】

          三流絵師 六話 【短編恋愛小説】

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 六話 里見が目を覚ますと、知らない天井だった。 起き上がろうとして骨が軋んだ。神経をすり減らして描き上げた後は決まって全身が痛む。 右手が鉛のように重い。熱でもあるのか。 確か、アトリエで気絶する前は。体を起こそうにも、うまく体が動かない。 全力で挑んだ作品は、先生の作品が好きだという言葉だけでできていた。それを誰がくれたかなど関係なく、強い力を持っていた。 (情けないな) 全てをかけたオーディション、里見のもとに話が来ることはなかっ

          三流絵師 六話 【短編恋愛小説】

          三流絵師 五話 【短編恋愛小説】

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 五話 今度の万博のために行われたオーディション。それに早々に作品を渡すと、彼はゆっくり自宅へ帰っていた。これから趣味の料理でもしようかと歩いていた。 葛西彩人は本名だ。だがどうしても里見には彩人と呼ばれたかった。 明けの明星なんか大したあだ名でなく、彩人と呼ばれたかった。 明野は酷く気分がよかった。おそらく万博に里見も絡んでいるだろうから、邪魔はできない。 できれば今すぐ駆けつけて抱きしめたいが、それだと失礼だろう。 何せ自分を殺し

          三流絵師 五話 【短編恋愛小説】

          三流絵師 四話 【短編恋愛小説】

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 四話 まず慌てて服を着て、葛西改め明野に土下座する勢いで謝り倒した。謝りながらもそこは里見円である。明野に対する恨みや罵倒を混ぜながら声高に演説もした。明野はその姿を面白そうに見た後、再び里見を抱きしめて布団の中に引きずり込んだ。 やめろと藻掻く里見を押さえつけて明野は目を閉じた。 あまりに力が強くて振りほどけず、心労で疲れ切っていた里見はそのまま宿敵の胸の中で気持ちよさそうに眠ってしまった。 明野のせいで心かき乱され荒んでいたというの

          三流絵師 四話 【短編恋愛小説】

          三流絵師 三話 【短編恋愛小説】

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 三話 ちょっとお洒落なロビーについたころにはもう、これから何が起きてもいいやと考えていた。淡々とフロントでチェックインをする彼を髪の間からそっとみる。 こんな危ないこと、御上りさんの小娘でもあるまいし自分には縁がないと思っていた。 よく見れば黒いジャケットも上品で洒落ているし、なかなかだ。 まさかこんな恰好でよかったのかと里見は絵の具だらけの服を見ながら考えた。 「先生」 いきなり低い声で呼ばれ、跳ね上がった。 広いロビーには他にも遅い

          三流絵師 三話 【短編恋愛小説】

          三流絵師 二話 【短編恋愛小説】

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 二話 東京芸術博物館からそれほど遠く離れていない飲食店にて。 明野星を褒めちぎる自分と明野星へ殺意を飛ばす自分との闘い。彼女はあまりにも不毛な戦いに疲弊していた。 人の心をここまでかき乱しておいて、明野はそれも知らずに、涼しいアトリエで今度の国際芸術博覧会の準備でもしているのだろう。 疲弊しきった彼女は空になったジョッキを並べ、それについた水滴をおしぼりで只管拭いた。 日曜日の夜ということもあり、あまり客はいない。 里見は顔を赤く染め、

          三流絵師 二話 【短編恋愛小説】

          三流絵師 一話 【短編恋愛小説】

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 あらすじ 有名美大出身の里見円(さとみえん)は、日本代表の芸術家になりつつあった。稀代の天才明野星(あけのほし)が現れるまでは。 明野星に敗れ荒れ狂った里見は、強く思うのだった。 「明野星を殺したい。こいつが死ねば、自分はもっと先を見られるのに」 負けたショックから、いつもの店で飲み潰れていると、見知らぬ男に声をかけられる。 妙に気が合うこの男に、里見は言われるがまま着いて行ってしまい・・。 二話 https://note.com/m

          三流絵師 一話 【短編恋愛小説】