真嶋ハート@白くて儚い言葉

白くて儚い詩のようなものを書いています。黒いハートが白くなりました。

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黒いショートショート自選集

発狂メリークリスマス地獄のフタが開き、無数のサンタクロースが現われた。皆が皆なにかおかしくて面白い。奇妙な動きをするサンタ。右腕を筋トレし続けるサンタ。「宗教も哲学も文学も私を救うことはなかった」と連呼するサンタ。遠い目を夜空に向けるサンタ。「死にたい生きたい死にたい生きたい」を連呼するサンタ。公園のベンチに座る僕に向かって執拗にウィンクし続けるサンタ。 しかし残念ながら、全てのサンタがミニチュアサイズだった。トナカイがいたら面白かったけれど、トナカイはどこにもいなかった。

    • 素晴らしきこの世界【掌編小説】

      今日、俺は二十歳の誕生日を迎えた。昨日、同じ大学に通う俺の恋人がスマホに動画を送信してきた。その動画には彼女の姿が映っていた。彼女の隣には俺の知らない男がいた。知らない男と彼女は俺がよく知る彼女の家のベッドに二人で座っていた。男がこちらを見て微笑んだような気がした。長い動画だった。俺は最後まで見ていた。彼女は延々と男の下にいた。男の背中に腕を回し何かを探すようにしながらやがて動きを止めた。聞いたことのない声だった。少なくとも俺は聞いたことがなかった。低く唸るその声はいつもの彼

      • 私の眼球は見つめていた【散文詩】

        私の身体が千切れる様子を眺めていた。私の身体が、右腕が、左腕が、右足が、左足が。千切れて飛び散る様子を私の眼球は見つめていた。赤黒くて、美しくて、夏の日差しが目映すぎて、何もない世界の片隅で、私の身体は、特急列車に轢かれて飛び散るのだった。それは決して、グロい世界観ではなかったのです。それはやがて、冷たく固まり消えてしまうのです。 私は死を選んだ。いくつも通り過ぎる列車が愛おしくて、狂おしくて、切なくて。私はその日、死を選んだ。死を選ぶ理由を線路の手前でうつむき、しばらく考

        • 生きてくの

          夢と 希望を ワンセットに閉じ込めて わたしは 冬の公園に立っている 誰もいないのに 何もないのに 思い出のかけらさえ 失ってしまったのに あなたが 見えた気がした あなたの笑顔が わたしだけに向けられて あなたの心が わたしの心と同化して どこにいても 何をしていても わたしが いま どう考えていても 後ろを向いていても 横を向いていても 前を向けなくても あなたは全く 知らないことで どれほど苦しくて どれほど哀しくて どれほど思い詰めても あなたは全く 知らないこ

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        黒いショートショート自選集

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        • 創作
          3本
        • ショートショート
          3本

        記事

          ホワイトイルミネーションのクリスマス

          さようならと 言う代わりに この街を 彩る ホワイトイルミネーションが あなたの 長い 髪に投げかけた光と 明かりを 僕は 覚えたままに 生きたままで 生きて 生きて 生きて 生きて生きて生きて 生きたまま ただ 生きた ままで あなたを 見かけましたよ 同じ場所で この街の 東と西を区切るイルミネーションの 3丁目の交差点で あなたは とても幸せそうで とても嬉しそうで とても無邪気で とても綺麗で とても嘆かわしくて 切なくて あなたは もう 僕の 知らない 男性と

          ホワイトイルミネーションのクリスマス

          パパ【超ショートショート】

          恋人が、僕に送ってくれたスマホ動画。一所懸命、苦手な料理をする動画。僕のために、頑張ってくれたらしい。「パパ、ちゃんと撮ってね!」と、彼女は撮影している人に、そう言った。パパは、「分かったよ」と。実に爽やかな光景だった。彼女の料理を、早く、食べたくなった。僕は間違いなく、世界で一番、幸せだった。パパが、そういう意味じゃないと、気づくまで。彼女には、父親がいないのだ。

          パパ【超ショートショート】

          黒い雪【詩】

          偽りの美学を、私にくれませんか? それが本当に必要ならば 夢が夢のままで過ぎるのならば 不要な時間が粉砕されるのならば 言葉の片隅にうずくまるのならば 泣きながら 静かに 道の向こう側を 傍観できるのならば それは複雑な事象として それはそれとして あなたの心が腐敗するさまを 僕はいつだって見つめていた というのに 今年も 雪が 降るのです 静かに冷たく 降るのです 死にたい夜に包まれながら 生きたい明日にくるまれながら いつだって雪は 僕の欲望を 願望を 絶望だって

          パンと雪【詩のようなもの】

          おいしい、パン屋さんに、来てるよ、と、君は、嬉しそうに、LINEで。 まさか、一年後、一人で、その、パン屋に、いるとは、思わなかった。 君が、座っていた場所は、もう、分からない。 何も、分からない。 平日の、昼下がり、人も、少ない。 僕は、窓際の、席で、外を、見ている。 雪が、降っている。 雪が、降ってきた。 そろそろ、積もり、始めるだろうか。 長く、険しい、季節が、訪れる、だろうか。 誰の声も、何の物音も、聞こえない。 静かな、世界で。 誰も、いない、世界で。 君は、どんな

          パンと雪【詩のようなもの】

          戦場【詩のようなもの】

          これ以上、やめてくれないか、よしてくれないか。閃光が行き来する大地で。誰かが誰かを損なう狭間で。時間が底抜けに明るくて、明るいままに固まって、固まりながら、流れすぎて。 ついさっきまで、動いていた塊が停止する。ついさっきまで、歩いていた塊が崩れ去る。飛び散る血液に何かが混じり、混じりながら倒れ、倒れながら踏まれ、その塊を越えて、いつまでも、僕たちは。 この戦場で。 この戦場の。 この戦場という。 誰かが定義した身勝手なフィールドで。 もう、僕は誰かを殺したくない。

          戦場【詩のようなもの】

          美しい時間をありがとう【小説のような手紙みたいなもの】

          誰かと、間違って君が送信した、僕以外の誰か宛ての君の淫らな動画を見て、僕はすぐ斜め下を向き、しばし留まり、それから旅に出た。旅先で、様々な人間を見つめながら、なぜ人間は、感情を持て余して生きているのだろうと思った。感情を、己の中に梱包し続ければ、ただ、それだけでよかったのに。何を言っても仕方ないなと思いながら、僕が見たことない君の姿を思い出した。嬉しそうに、悲しそうに、切なそうに、君の声は、惨めな空間を切り裂いていた。男が、僕の、知らない、誰か、知らない男が、君の美しい裸体を

          美しい時間をありがとう【小説のような手紙みたいなもの】

          見ていたい【詩のようなもの】

          ふと 探してみた 夜の街を 歩きながら どこかに あなたが 今も いるような 気がして わたしと あなたの距離を 埋めて くれる ような気がして 照れた笑顔 まっすぐな視線 いじわるな言葉 難しい性格 わたしより ずっと大人なのに 大人の 男の はずなのに 子供っぽい あなたを わたしは ずっと ずっと 好きでした もう どこにもいないのに もう どの街にも いないのに わたしは ときどき あなたを思って 歩くのです 今年も もうすぐ 雪が降りそうだよ 一緒に

          見ていたい【詩のようなもの】

          一人で【詩のようなもの】

          愛する人の手を握り ずっと側にいたけれど 最後は一人で死んでいった だから わたしも 愛する人に手を握られ ずっと側にいたとしても 最後は一人で死んでくのだろう

          一人で【詩のようなもの】

          雨【詩のようなもの】

          静かな気配に 祈りを捧げています今も 雨が いつまでも降り続いて 雨は いつの間にかやんでしまって 雨も わたしの心の片隅で 静かに 固まっているのです どしゃぶりの雨が 悲しい雨が 冷たい雨が 切ない雨が きっと雪に変わるまで この街を 黒く染めてしまうので わたしの心は 静かに 固まっているのです今も

          いい男【詩のようなもの】

          満たされないものを満たそうとするから いけなかったんだって わたしはいま 思ってる 彼との時間を大切にしながら物足りなくて ないものはないし あるものはあるんだって 言ってくれれば もっと楽だったのに すれ違いとか すれ違わなくても 何もない 冷たい時間に 彼の背中が遠くなって 隣で 寝てるのに 気持ちが 分からなくなって つらい言葉と つらい気持ちと つらい素振りと つらい唇で 温かい夢と 温かい香りと 温かい思いと 温かい腕の中で もっと ずっと 抱かれてたかっ

          いい男【詩のようなもの】

          恋【詩のようなもの】

          冷たいあなたの歪んだ顔に そっと手を当て 考えてみる わたしはなぜ あなたを愛していたのか 愛してる? と 聞いたとき 無言だったあなたを 何もない時間の中で 深夜にひとり 考えている もう二度と 呼吸しないあなたを

          捨てられた【詩】

          どこまでも 夜が 飛び越えてゆくと 思うのです わたしの声が消えても わたしの夢が消えても わたしの姿が どこまでも あなたに 近づいてゆくと 思うのです あなたの声が消えても あなたの夢が消えても あなたの姿が 殺して しまいたいと思いながら わたしたちは 全ての存在を費やしていた 生き物としての 悲しみとしての 象徴としての この惑星の片隅で そんな風に肩を寄せ合って ただ 抱き合っていただけなのに いつまでも 抱かれていたかった だけなのに あなたはいない