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パンと雪【詩のようなもの】

おいしい、パン屋さんに、来てるよ、と、君は、嬉しそうに、LINEで。
まさか、一年後、一人で、その、パン屋に、いるとは、思わなかった。
君が、座っていた場所は、もう、分からない。
何も、分からない。
平日の、昼下がり、人も、少ない。
僕は、窓際の、席で、外を、見ている。
雪が、降っている。
雪が、降ってきた。
そろそろ、積もり、始めるだろうか。
長く、険しい、季節が、訪れる、だろうか。
誰の声も、何の物音も、聞こえない。
静かな、世界で。
誰も、いない、世界で。
君は、どんな思いで、この、店に、いたのだろうか。
分からない。
だから、僕は、パンを撮る。
スマホで、撮る。
そして、LINEを開いて、君に、送ろうとする。
分からない。
もう、何も、分からない。
君のいない世界で、僕は、一人で。
ただ、一人で、雪を見て。
誰もいない、この世界で、泣き崩れ。





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