戦場【詩のようなもの】

これ以上、やめてくれないか、よしてくれないか。閃光が行き来する大地で。誰かが誰かを損なう狭間で。時間が底抜けに明るくて、明るいままに固まって、固まりながら、流れすぎて。

ついさっきまで、動いていた塊が停止する。ついさっきまで、歩いていた塊が崩れ去る。飛び散る血液に何かが混じり、混じりながら倒れ、倒れながら踏まれ、その塊を越えて、いつまでも、僕たちは。

この戦場で。

この戦場の。

この戦場という。

誰かが定義した身勝手なフィールドで。

もう、僕は誰かを殺したくない。もう、僕は誰かに殺されたくない。もう、僕は誰かの死体を黙殺したくない。もう、僕は誰かの夢を蹂躙したくない。なのに。

僕はこれ以上、殺さなくていい。僕は、これ以上、殺されなくていい。僕の役割は終わった。勝者などいない。憎悪も憐憫もない。見知らぬ者同士が殺し合う。命令のままに殺し合う。首が飛んだ。手足が飛んだ。内蔵がはみ出て固まった。

この、美しくて悲しい大地は。

この、切なくてふらちな大地は。

この、不必要に強制された大地は。

僕は、もう、いいんだ。殺さなくていい、誰も。

圧倒的な苦しみも、やがて過ぎ去るだろう。欠けた肉体は、誰にも気づかれることなく放置されるだろう。僕の左の手首は。僕の右のくるぶしは。僕の顔の左半分も。

申し訳ない。

戻れなかった。

申し訳ない。

愛する人よ。

申し訳ない。

長生きしてください。

申し訳ない。

申し訳ない。

さようなら。

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