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黒い雪【詩】

偽りの美学を、私にくれませんか?
それが本当に必要ならば

夢が夢のままで過ぎるのならば
不要な時間が粉砕されるのならば
言葉の片隅にうずくまるのならば
泣きながら
静かに
道の向こう側を
傍観できるのならば

それは複雑な事象として
それはそれとして
あなたの心が腐敗するさまを
僕はいつだって見つめていた
というのに

今年も
雪が
降るのです
静かに冷たく
降るのです
死にたい夜に包まれながら
生きたい明日にくるまれながら
いつだって雪は
僕の欲望を
願望を
絶望だって
笑いながら
受け止めてくれるのです

あなたの失望も
希望も
熱望だって
何も言わず
受け止めてくれるのです

だから
安心して生きてください
僕も
あなたも
必ずしも
死という暗闇に
包まれる

今年も
雪が
降りました
あなたのような
美しい
雪が降りました
僕のような
黒い大地を
覆い尽くすように
今年も
雪が
降ったのです

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