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素晴らしきこの世界【掌編小説】

今日、俺は二十歳の誕生日を迎えた。昨日、同じ大学に通う俺の恋人がスマホに動画を送信してきた。その動画には彼女の姿が映っていた。彼女の隣には俺の知らない男がいた。知らない男と彼女は俺がよく知る彼女の家のベッドに二人で座っていた。男がこちらを見て微笑んだような気がした。長い動画だった。俺は最後まで見ていた。彼女は延々と男の下にいた。男の背中に腕を回し何かを探すようにしながらやがて動きを止めた。聞いたことのない声だった。少なくとも俺は聞いたことがなかった。低く唸るその声はいつもの彼女の高い声とは違っていた。あまりにも違っていた。それは見たことのないものだった。見たくもないものだった。俺は笑おうとした。何かの冗談に違いない。俺は笑おうとした。何かの冗談に違いない。俺は、必死で、笑おうとした。

「ごめんね」と、今日彼女からLINEがきた。私じゃないの。あいつが勝手に送ったの。最低だよね。ごめんね。あらゆる言い訳が俺の心を素通りした。無感情に無表情で無機質なこの世界をこれからどのように生きればいいのかと考えていた。男が誰かは知らないけれど何とかして殺してやろうかと思ったけれど彼女の声を思い出してやめた。彼女の獣のような声を思い出してやめた。彼女に電話をかけても出なかった。俺は途方に暮れた。だから彼女にLINEした。俺は素晴らしきこの世界に別れを告げた。美しくて有頂天で、素晴らしかった、この世界と。

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