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私の眼球は見つめていた【散文詩】

私の身体が千切れる様子を眺めていた。私の身体が、右腕が、左腕が、右足が、左足が。千切れて飛び散る様子を私の眼球は見つめていた。赤黒くて、美しくて、夏の日差しが目映すぎて、何もない世界の片隅で、私の身体は、特急列車に轢かれて飛び散るのだった。それは決して、グロい世界観ではなかったのです。それはやがて、冷たく固まり消えてしまうのです。

私は死を選んだ。いくつも通り過ぎる列車が愛おしくて、狂おしくて、切なくて。私はその日、死を選んだ。死を選ぶ理由を線路の手前でうつむき、しばらく考えていたのだけれど、良い言い訳は出来そうになかった。あの人がいなくなった。私の前からいなくなった。私の知る誰かとあの人が一緒にいた。今も一緒にいるだろう。今も、一緒にいるだろう。こんなにも私が、苦しんでいたことも知らずに。

私の身体は千切れてしまった。私の身体は、右腕も、左腕も、右足も、左足も。千切れて飛び散った様子を私の眼球だったものは見つめていた。悲しくて、寂しくて、夏の日差しが無意味すぎて、何もない世界の片隅で、私の身体は、特急列車に轢かれて飛び散ったのだった。それはとてもグロい世界線だった。それはやがて、冷たく固まり消えてしまった。

私は死を選ぶ。いくつも通り過ぎた列車が愛おしくて、虚しくて、息苦しくて。私はその日、死を選ぶ。死を選ぶ理由を線路の手前でうつむき今も考えているけれど、素敵な言い訳は出来そうにない。あの男がいない。私の前にもういない。私の親友があの男と一緒にいるから。今も一緒にいるから。今も、一緒にいるんだろ? こんなにも私が、苦しんでいることも知らずに。

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