まいたけ

まいたけ

最近の記事

【禍話リライト】もてなしの家

承前  かぁなっきさんが羊羹の怖い話で悩んでいる最中、そんな事で悩んでいるとは露とも知らなかった友人が、とある話を持ち込んできた。 「いやぁ、かぁなっきさん。すっごい怖い話聞いたんですよ」 「すっごい怖い話って、自分でハードル上げちゃって大丈夫ですか?」 「いやいや、これが本当に怖いんですよ。ほら、こっちが勝手に思っているお化けのパターンってあるじゃないですか。そんなの関係ないんだなって。ストーリー上こうなるっていうお約束の展開なんてないんだなって、そう思いましたよ。すご

    • 【禍話リライト】「羊羮」

       かつて、禍話リライトVol.3(2021/03/15発売)の発売にあわせ、購入者特典として、禍話のお題リクエストを行うという企画があり、その中に「羊羹」というリクエストがあった。  羊羹で怖い話というのは中々に難題で、「羊羹羊羹……」と探してみるものの簡単には見つからない。  流石のかぁなっきさんも困りはてていると、Aさんという女性から「何か、羊羹をお探しだとか」と声がかかった。 「いや羊羹を探してるんじゃなくて、羊羹で怖い話というのに挑んでいるんですよ」 「分かってま

      • 【禍話リライト】手順のようなもの

         「新入社員」というお題を頂きまして、探してみたらこんな「新入社員の話」がありました。  怖い話というか、不思議な話ですね。 ───────────────  大学を卒業してから半年ほど経った頃の事。  親しい仲間うちで集まって、軽い飲み会がてらの近況報告会を開くことになった。  やれ就職して仕事が大変だ、大学院の勉強が大変だ、そんな事を順繰りに話していって、最後の一人になった。 「いやあ中々仕事が覚えられなくて…この集まりも晩飯の時間で良かったよ。実は今日も残業してき

        • 【禍話リライト】電話の出先のひと

           あるお寺に、夜中の三時か四時ぐらいの時間に行くとお化けが出る、そんな話があった。その寺は無人の廃寺ではなく、普通に人が住んでいるちゃんとしたお寺で、夜中は普通に戸締りがされている。しかも出ると噂のお化けも、男か女かよく分らないが、とにかく白い服を着て歩いている、そんな非常に曖昧な話だった。  その噂を確かめに行くと言い出した男が居たという。周りの人間は常識的な人間が多く、「不法侵入になるからよくない」とか、「お寺に住むお坊さんをお化けと見間違えたんだよ」とか言って引き留め

        【禍話リライト】もてなしの家

          【禍話リライト】話あわせの山

           Aさんが友人のBさんと山を登っていた時の事。  Bさんが急に、「前を行く男がどうにも会社の同僚に似ている」と言い出した。  つられてAさんも前の登山客を見るが、何をもってBさんが似ていると言い出したのかが正直よく分からない。  服装はごく普通の私服で、髪型にも特徴的なものがあるわけでもない。  挨拶を交わしたわけでも、先方が何か鼻歌を歌っているわけでもないから声で判断した訳でもなさそうだ。  背格好がよほど似てるのかな、そう思ったAさんは、特に気にせず山の風景を見ていた

          【禍話リライト】話あわせの山

          【禍話リライト】架空殺人指名手配

           渡辺君は高校生の頃、予備校に通っていた。  渡辺君の家から予備校までは大きく分けて2つの道があった。  一つは大通りの道で、車の交通量が多く、歩道もあまり整備されておらず、ちょっと危ない道。  もう一つは狭い道で、こちらは車が殆ど通らないのだが、大通りに比べて遠回りになってしまう道。  渡辺君は主に安全性を考慮して、細い道の方を、自転車に乗って予備校に通っていた。  その細い道の途中に、ちょっと変なアパートがあった。  目につく所に、若干電波の入った謎の文言が書かれた看

          【禍話リライト】架空殺人指名手配

          【禍話リライト】記憶さかしま

          「この前小学校の同窓会に行って、その時に『そんなわけないだろ』って言われちゃった話なんだけど。  色んな思い出話に花が咲いて、その流れで思い出した事があったの。  三年生の時に、委員の仕事だったか何だったかで、授業中に教室から一人で出ることになって。  それで、階段に差し掛かった所で、下からすごい視線を感じたのね。  そんな視線を感じるなんてこと、その時が初めてで、気になって手すりの隙間から下を覗いてみたら。  そしたら、下に居た人と目があって。うわっ、やっぱり人が居たん

          【禍話リライト】記憶さかしま

          【禍話リライト】五寸釘の遊び

           こっくりさんの話を集めてるKくんって後輩がいまして。  その彼が、「こっくりさんじゃなくて五寸釘で遊ぶ話を聞いてきたんですけど…」って浮かない顔で言うんです。  五寸釘でどうやって遊ぶんだろうって思って 「それってメンコみたいにして遊ぶとか、あるいは釘を地面に刺すとか?」 「だったらまだ良かったんですけどね…」 「お前なんかドラマみたいな口調になってるぞ」 「いやぁ……じゃあ、話しますけど…」 *********  Kくんは基本的にこっくりさんの話を集めてるんですけど

          【禍話リライト】五寸釘の遊び

          【禍話リライト】落ち着かない家

           木村さんが高校生の頃の話。  一年生の頃から木村さんと仲良かった友人の一人が、高校二年生になって家を引っ越すことになった。  といってもどこか遠くに行くというわけではなく、家族が新しく産まれ、今まで住んでいたマンションが手狭になってしまい、近くで見つけた一軒家に引っ越すという事だったらしい。  同じくマンション住まいだった木村さんは一軒家暮らしを若干羨ましがりながら、落ち着いたら遊びに行くと約束していた。  ところが、その友人が引っ越してからというもの、段々と彼の顔色が

          【禍話リライト】落ち着かない家

          【禍話リライト】混線と伝言

           Sさんが通っていた大学院の研究室に、Aさんという先輩がいた。  このA先輩、自身の研究がなかなかうまくいかず、論文が書けないまま何年も過ごす羽目になっていたそうだ。それがストレスになっていたのか、Aさんは周りの人に毎晩長電話を掛けるという悪癖があった。  毎晩の長電話に周囲の人間は辟易しており、Aさんからの電話をすぐ切ったり、中にはAさんの電話番号を着信拒否にしてしまった人もいた。そうなって来ると、被害の矛先は主に下級生に向かっていた。  電話の内容も、どうでもいいよ

          【禍話リライト】混線と伝言

          【禍話リライト】見えない探し人

           一種ののろけ話である。  Aさんには最近できた彼女がいた。この彼女というのがとてもよく気が利く子で、Aさんは若干ガサツな所があり、とてもありがたいと思っていた。彼女はまた普段はあまりお酒を飲まない子で、Aさんがべろべろに酔っぱらって繰り出すくだらない話を、クスクスと笑いながら聞いている、そんな控えめな子だったらしい。  正直、ここまではただの彼女自慢である。若干イラっとしながら、そういう話なら別の人にやってくれというと、ここまでが前振りなのだという。 「今思い返すと、

          【禍話リライト】見えない探し人

          【禍話リライト】彼氏男と友達女

           Iさんという社会人女性の方から聞いた話。  Iさんには親しい同僚が一人いて、休日のたびに一緒に遊びに行くような仲だった。その週の土曜日も、いつものようにとあるビル前のバス停で待ち合わせをした。  待ち合わせ場所にはIさんが先に到着した。しばらくバス停で待っていたが、どうも友人は遅れるようだ。このままだと乗客と勘違いしたバスが停車して面倒になりそうだと考えたIさんは、その日は夏の暑い日だったこともあり、近くのビルの陰になっている場所に移動して同僚を待つことにした。  ふ

          【禍話リライト】彼氏男と友達女

          【禍話リライト】ひさしぶりおじさん

           「久しぶり」という挨拶が怖い、ヒトコワな話。 ───────────────  今から40年ほど前の話である。当時中学生だったAさんは、田舎に住んでいたこともあり、電車通学を行っていた。通学に利用していた駅は乗降客がいつも少なく、Aさんが利用していた時間帯となると駅に居るのは自分と駅員だけというようなありさまだった。  ある冬の寒い日のこと。  Aさんは部活やらなんやらで帰りが遅くなり、9時過ぎというかなり遅い時間に駅に着いた。薄暗い通路を通って、改札口向かいのひと

          【禍話リライト】ひさしぶりおじさん

          【禍話リライト】先生と妻と子

           Aさんが中学生の頃はこっくりさんブームの最中で、Aさん達も例に漏れずこっくりさんをやっていた。  その頃のAさんは、当人の表現を借りれば「痛い霊感少女」だったそうで。  例えば、こっくりさんの10円玉を触る時に、Aさんは毎回ゴム手袋を付けていた。何故そんな事をしているのかと聞かれると、幽霊がこの10円に降りてくるのだから直接触ってはいけないのだと答える。  そんな感じのオリジナルルールを作っていたら、周りの中学生達もそういうものかという空気になっていき、結果として、A

          【禍話リライト】先生と妻と子

          【禍話リライト】山の落とし物

           坂本さんは、折に触れて「山道で物を拾うのはあまり良くない事だ」というような事を言う。これは何かきっかけになった体験があるのでは?と思って聞いてみると、以下のような話を語ってくれた。 ───────────────  その山には国道が通っており、昼間はそれなりに交通量がある。流石に夜になるとひと気が少なくなり、長距離トラックが通るくらいになる。道路の形が悪いのか何なのかわからないが、暴走族や走り屋といった連中もあまり来る事がない。  そんな山が九州のどこかにある。  坂

          【禍話リライト】山の落とし物

          【禍話リライト】雨垂れ花子さん

          私が中学生の時の話です。 私が通っていた学校にも、トイレの花子さんの怪談話がありました。 「三階の女子トイレの三番目のドアを三回ノックして『花子さん』と呼びかけると、花子さんを呼び出すことができる」というような、よくあるお話です。 それで、きっかけが何だったのか覚えてはいないんですが、クラスの友達と、花子さんの噂を確かめてみようって事になったんです。 その中には男子も混じっていたので、放課後になって人が居ない時間を見計らって女子トイレに行きました。 え?ああ、私の学校の

          【禍話リライト】雨垂れ花子さん