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京都御所の近く、気づかずに通り過ぎてしまう路地奥の喫茶店。 京に生まれ育った店主と転々…

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京都御所の近く、気づかずに通り過ぎてしまう路地奥の喫茶店。 京に生まれ育った店主と転々としながら育った人生駆け出しガール。 「ありふれてるけど、なんかいい」古都の暮らしを世代も性別も出自も異なる2人が綴ります。

最近の記事

路地奥の喫茶店

孫右ェ門という場所はちょっと異様な雰囲気があるらしい。 お会計の時に「以前から気になっていて」と伝えてくださるお客さまが多い。 みんな少しの勇気を持って門をくぐってくれているようで、良し悪しはさておきお馴染みの会話になりつつある。その度に私は心の中で勇気を出してくれたことに感謝をしつつ、「そんなことないよ、みんな気軽においでね。」などと思っている。 noteでも不思議に見えているかしら…ということで少しだけ、私から見た孫右ェ門を話してみようと思う。 2022年10月17日、

    • モ・リ・キ・モ・リ・キ・チ

       私の生業はグラフィックデザイン。彼此40有余年が過ぎる。会社員として仕事をしている時からフリーランスになれば屋号は「ウッド・フォー」と決めていた。おかげさまでウッド・フォーを創業して今年で32年。会社員からフリーランスに転身したときは当然あてになる仕事はなく不安ばかりだったが、野球の世界に例えれば、社会人野球からプロ野球にようやく足を踏み入ることができたという満足感もあった。  私の名字は森木で「木」が4つ並ぶ。だからウッド・フォー。森本さんはよくあるが森木は珍しい。今年

      • 秋の香

        数年前からこの時期になると、バラエティショップやフレグランスを扱うお店には金木犀の香りがする商品が数多く並ぶ。 昔からある植物、みんながよく知る香りが急に注目の的になったのか。 金木犀の香りとの出会いは、あるおしゃれ好きの先輩がきっかけ。 人の集まる場でどこか懐かしい匂いがするなと思っていたら、その先輩の香水だった。 話を聞くと、先輩は秋分過ぎから紅葉を見届ける頃まで金木犀の香水をつけるという。 粋な人だなと思った。それまで何となく香りがするものは私の心をほぐしてくれるものを

        • brand

          リピーターの観光客が多い京都。特に多いのが40才以上の女性。地元人よりも京都通になっておられてガイド本など必要としない。「こちらは京都ですけど」と知ったかぶりして商売をやっていたらしっぺ返しを喰らうので気をつけないといけない。そんな時は素直に教えを請うのが無難だ。とは言えその他大勢の人はスマホ片手に溢れる情報の中から吟味され京都の街を闊歩されている。 でもスマホの情報を頼りにしても辿り着けない事がまだまだ多い京都。人通りの少ない場所で看板も出さずに自立している店などがあるから

        路地奥の喫茶店

          日本の夏

           夏を楽しむ行事はたくさんある。海やプールに花火、スポーツの大会だって夏に開催されるものは多くそのどれもがキラキラと輝いて眩しい青春のページを彩る。それらが「動の夏」であれば「静の夏」として日本人であることをまじまじと体感させるのがお盆じゃないかと思う。日本のどこにいても一斉に会社やお店が休みになるのだからその浸透っぷりはすごい。  お盆は言わずもがな8月半ば。初週を過ぎているので暦の上ではもう秋ということになる。この時期を境に夏まつりの印象も少し変わる気がしている。夏まつり

          夏はじめのおさかな 2

          7月になると街中では提灯とお囃子の音で一気にお祭りムードになる。 京都、夏の味覚として欠かせないのが、梅雨から祇園祭の頃に脂がのる鱧(はも)だ。関西ではお馴染みの食材で、スーパーに並べられているので最初はびっくりしたものだが、今ではそんな時期かぁと思わせてくれるものの一つになった。 その昔、海のない京都では担ぎと呼ばれる人が港から海産物を運んできていた。夏場はどうしても新鮮な状態を保つことが難しかった中で、鱧だけは生命力が強く少量の水があれば生きたまま京都に届けられるため当時

          夏はじめのおさかな 2

          ロージ

          路地。京都では「ロージ」と言う。 表通りから入り込んだ家に通じる細い道のことだ。 ロージには二種類あって、一軒ロージと呼ばれる一軒の家専用のものと、数件共用のものがある。 このようなロージは京都の中心部の街中の町内には2〜3本はある。 (街中の町内は通りから次の通りまでの区間が一つの町内になっているところが多い) 行き止まりになる細い道を「路地(ロージ)」と言い。それに対して次の通りへ抜けている細い道を「図子(ずし)」という。 ロージの多さに比べて図子の数は少ない。ロージに

          夏はじめのおさかな

          紫陽花の咲く頃、京の夏の片鱗が見えてくる。 せっかく春の心地良さに身を預けていたのに。体が少し重くなるような無風の日々がこちらに思い出せと言わんばかりに顔を出してきて参ってしまう。 そんな日々に涼しさを取り戻してくれるのが、あゆだと思っている。まさにスウィート・フィッシュ!(本来は“素敵な“と言うよりも、香魚と呼ばれるようにスイカやキュウリの香りがすることにちなんで英語でこう呼ばれているのだとわたしは思っているよ…!) 早いお店では4、5月から食べられるが、旬は夏、夏至を越え

          夏はじめのおさかな

          オヤカマッサン

          「おおきに、はばかりさん」。「トイレを拝借してありがとうございました」ということではない。東京ではトイレのことを「はばかり」と言うので、京都ではトイレにも「さん」をつけるのかというとそうではない。京都では何にでも「さん」をつける傾向がある。 「大丸さん」とデパートにもさんをつける。「うんこさん」も然り。 京都での「はばかりさん」は、ご苦労さんと骨折りを謝すときの言葉。それもそんなに大変な骨折りではなく、ちょっとお世話になった時に使う。 例えば、大丸さんでぎょうさん買いもんして

          オヤカマッサン

          アーケード

          京都で暮らしてみると、商店街の多さに気づく。 しかもその多くがアーケード付きだ。晴れの日は燦々たる陽光から守ってくれるし、雨降りの日には傘をささずに歩けるんだからとても助かっている。いつもありがとう。 日本においてアーケードの起源を辿れば、雪国の商店などが軒下を連ねて積雪時の通路にした雁木、17世紀半ばの江戸で景観を整えるために作られた庇下がある。昭和初期には道路の全面を覆った現在の形へと近づき、食品や衣料品の褪色を守るため、日差しの強い西日本を中心に広まったとか。 横浜に住

          アーケード

          アガルサガル

          その昔、都の一番北には御所があったから、 京都では北へ行くことを上ル(あがる)、一方、南へ行くことを下ル(さがる)と言う。 住所表記も然り。 例えば孫右ェ門の住所は衣棚通(南北の縦の通り)に面していて、竹屋町通(東西の横の通り)から少し北へ行ったところなので「衣棚通竹屋町上ル」になる。タクシーの運転手さんにそう言えば、了解しましたとなる。 東西の道に面しているところなら、東西の通り名が先にきて、南北の通り名が後ろに。そして次に「東入ル、西入ル」と続く。京都の街中は碁盤の目で道

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