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アーケード

京都で暮らしてみると、商店街の多さに気づく。
しかもその多くがアーケード付きだ。晴れの日は燦々たる陽光から守ってくれるし、雨降りの日には傘をささずに歩けるんだからとても助かっている。いつもありがとう。
日本においてアーケードの起源を辿れば、雪国の商店などが軒下を連ねて積雪時の通路にした雁木、17世紀半ばの江戸で景観を整えるために作られた庇下がある。昭和初期には道路の全面を覆った現在の形へと近づき、食品や衣料品の褪色を守るため、日差しの強い西日本を中心に広まったとか。
横浜に住んでいた頃にはショッピングモールが殆どだったし、福岡(市外)に住んでいた頃、商店街はシャッター混じりの繁華街という印象しかなかった。ところが、京都ではしっかりと生活の音がする。“よそもん”の私、びっくり。地方から出てきたばかりの学生や親子連れ、80年は住んでいるだろうおじいちゃんまで誰もが日常的にそこに在る。ご近所さん同士の挨拶、スーパーの特売、地元の人に愛される喫茶店。おまけにネオンの照明や提灯を使って商店街はそれぞれおめかしをする。煌びやかでは決してない。でも、文化祭のような温かさがある。確かにそこにいる人の数だけ生活があるんだなあと思わせてくれる。京都の商店街を歩くようになって、地方へ出かけた時アーケードを見つけるとワクワクするようになった。ひとりで歩いていてもひとりじゃないし、誰かと歩けば気取らずにいろんな話ができたりする。わたしもそんな風景の一員に溶け込んでいるか、などと考えているうちに端まで歩いてきてしまった。

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