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路地奥の喫茶店

孫右ェ門という場所はちょっと異様な雰囲気があるらしい。
お会計の時に「以前から気になっていて」と伝えてくださるお客さまが多い。
みんな少しの勇気を持って門をくぐってくれているようで、良し悪しはさておきお馴染みの会話になりつつある。その度に私は心の中で勇気を出してくれたことに感謝をしつつ、「そんなことないよ、みんな気軽においでね。」などと思っている。
noteでも不思議に見えているかしら…ということで少しだけ、私から見た孫右ェ門を話してみようと思う。


2022年10月17日、孫右ェ門は満10周年を迎えた。
細い路地の奥でひっそりとはじまり、最初の頃は看板も出していなかったとか。
グラフィックデザインを生業とする店主の事務所兼住居に水屋を作った。
全く別の仕事に思えるかもしれないけれど、
グラフィックデザインの仕事と喫茶店はどこか似ているらしい。

私たちの日常にはいろんなことが起こる。
だからそれを誰かに話したり、1人でゆっくりと過ごす時間を作ることで
こころの中を整理しているんじゃないか。
それが紙面に様々な情報を落とし込んで整列させていく過程とオーバーラップする。
私にはそんな風に見えている。
それは街中のカフェでも同じかもしれない。
ただ、孫右ェ門の場合はその場所に暮らしがある。
狭い間口を通って路地を歩きながら普通の民家じゃんと思ったあなた、正解です。
ここ、お家です!
「おばあちゃんの家みたい!」と思ったあなた、正解です。
ここ、人住んでます!
普段の生活の中で人の暮らしを見る機会はあまりないから不思議な感じがするかもしれない。いろんなものを見て、聞いて、自分を重ねることで新しい自分の気持ちに出会うことがある。私や、孫右ェ門もそんな一部になれたちょっと面白いなと思う。

色々と私の思う孫右ェ門を切り取ってみたけれど、どんなふうに映っただろうか。
かくいう私も見たかったギャラリーが定休日でなければ路地奥の喫茶店には気づかず通り過ぎていただろう。そこで仕事をすることになるのだから本当に縁とはどこにあるかわからないものだ。訪れる人の数だけ見え方があり、違った孫右ェ門になる。
自由にふらっと立ち寄って、京都の細い路地の奥にて思い思いの時間を過ごしてくれたらこんなに嬉しいことはない。

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