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夏はじめのおさかな

紫陽花の咲く頃、京の夏の片鱗が見えてくる。
せっかく春の心地良さに身を預けていたのに。体が少し重くなるような無風の日々がこちらに思い出せと言わんばかりに顔を出してきて参ってしまう。
そんな日々に涼しさを取り戻してくれるのが、あゆだと思っている。まさにスウィート・フィッシュ!(本来は“素敵な“と言うよりも、香魚と呼ばれるようにスイカやキュウリの香りがすることにちなんで英語でこう呼ばれているのだとわたしは思っているよ…!)
早いお店では4、5月から食べられるが、旬は夏、夏至を越えた頃からだ。6月になるとテレビからは鮎釣り解禁のニュースが流れ、和菓子屋さんには求肥をほんのり甘い生地で包んだ鮎菓子が並びはじめる。割烹料理店では「鮎ある?」「何匹しましょう?」の声が飛び交う。正直、京都に来るまではあゆ=観光地で見る串刺しのおっきいお魚、あれ丸ごと食べちゃうの?という風にしか思っていなかった。和菓子をいただいた時も、塩焼きにして頭から丸ごと蓼酢で頂いた時も鮎のイメージはガラッと変わった。後から酢に入っていたのが「蓼食う虫も好き好き」の蓼だと知り、これなら美味しいじゃんとも思った。味は勿論、わたしはその姿にとても夏を感じる。和菓子の鮎なら表情やひれの形に個性が出るし、籠やガラスなど器によってどんな風に泳いでいるのか感じることができる。塩焼きもお店によって泳がせ方が違うから目の前に出された時に想像してしまってなんだか愛おしくなる。こんなことをいちいち考えている同志はいるんだろうか?水の無い月に少しだけ涼感をくれる彼ら、是非ご賞味あれ。

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