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日本の夏

 夏を楽しむ行事はたくさんある。海やプールに花火、スポーツの大会だって夏に開催されるものは多くそのどれもがキラキラと輝いて眩しい青春のページを彩る。それらが「動の夏」であれば「静の夏」として日本人であることをまじまじと体感させるのがお盆じゃないかと思う。日本のどこにいても一斉に会社やお店が休みになるのだからその浸透っぷりはすごい。
 お盆は言わずもがな8月半ば。初週を過ぎているので暦の上ではもう秋ということになる。この時期を境に夏まつりの印象も少し変わる気がしている。夏まつりの起源は様々だが、大きく二つに分けると、疫病や悪霊などの邪気を祓うものと先祖の御霊をお迎えし、送り出すためのものがある。京都でいえば、祇園祭と五山の送り火。(送り火はお祭りというより年中行事で盆踊りの方がわかりやすいかも)今年はどちらも3年ぶりに開催され、なんとなく当たり前のものが当たり前にそこにあるっていいなと思ったりもした。話を戻そう。立秋を越え、お盆のあたりもしくはそれ以降のお祭りは、パアッとした明るさや活気というよりも少し湿り気や哀愁を感じる。それは幼いころ誰もが経験した夏休みのイベントがひとつまたひとつと終わっていく感覚が奥の方に残っているからなのかもしれないし、気候が変わっていくからかもしれない。
 天候、今季のトレンド、スーパーに並ぶ期間限定商品、代表的でみんなが楽しめる行事。現代に生きているとそんなものから季節を感じとっているように思う。普通に暮らしていれば、昔ながらの日本の生活に触れる機会はそう多くない。季語も季節の花も旬の食材もわかっている人はきっと少ないし、もっとわかりやすくて楽しくハッピーなことの方が目立つ。だからこそこの楽しいとは少し違う季節の感じ方をたまにはしてみてほしいなと密かに思っている。そして暑くって嫌になっちゃうし、田舎に帰るのはちょっと退屈に思えたりもするけど、今年も楽しさの影に侘しさを感じながら「はあ、日本の夏っていいな〜」と秋口に振り返りたいものね。

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