【BL二次小説(R18)】 真夜中の告白①
カチャ。
ドアの開く音でオレは目を覚ました。
真っ暗な部屋に誰かが入ってくる。
誰だ?
今何時だと思ってる。
泥棒かァ?
っても、高校生の寮に盗るモンなんか何もねェけどな。
ヒタヒタ……。
足音忍ばせたってなァ、その歩幅、香り、気配で誰なのか丸わかりなんだぜ?
── 新開。
眠ってるフリをしているとも知らず、新開はオレの傍に立ってじっとしている。
「……」
……寝ぼけてんのか?
それとも、トイレに立ったあと帰る部屋を間違えて、ついでにイタズラでもしてやろうと?
なんて色々考えてたら、身体を寄せてくる気配がして……。
唇にふにゅっ、と柔らかいものが押し付けられた。
……こ、これは……。
この弾力。
この温もり。
このしっとり感。
間違いねェ。
新開のあの分厚い唇だ。
鼻と鼻もあたってるし。
エ……?
てことは、これって……。
困惑しているうちに新開は唇を離し、慌てたように早足で部屋を出て行った。
パタン。
……ガバッ!
思わず飛び起きるオレ。
な、なんだ?
アイツ……キスしやがったぞ?
どして?
なんで?
……ワケわかんねェ。
ひとつだけハッキリしているのは……。
オレのファーストキスだった、ってことだ ──。
「おはよ!靖友!」
翌朝、食堂で新開が明るく挨拶してきた。
とびきりの笑顔で。
「お、おは……」
コイツ……。
何事も無かったような顔しやがって。
オレはなァ、あれから一睡も出来なかったンだよ!
腹が立ったが、ここで騒ぐわけにはいかない。
オレは平静を装っていつもの席につく。
「フワァ~」
「寝不足か荒北」
朝メシを食いながら大アクビをしているオレに、福ちゃんが声を掛けた。
ああ寝不足だよ。
オレの目の前に座ってニコニコしてるコイツのせいでな!
「荒北が寝不足のわけあるまい。コヤツはいつでもどこでも熟睡出来る男だ」
隣に座っている東堂がオレを指差して言った。
「なンだよ。オレがいつ熟睡したってンだ」
オレはイラついて東堂に絡む。
「覚えて……いるわけないな。貴様はあの時も熟睡していたのだから」
「あァ?何の話だァ?」
「先日の遠征の帰りだ。隼人達が大騒ぎしてバスから降ろされたのだ。その間、貴様はずっと爆睡していた」
「ア……なんか新開や葦木場達が後から泣きべそかいて歩いて帰ってきた日のことかァ?」
「ひでぇよ尽八。あんな何もない原っぱで降ろすなんてさ」
「貴様3年生だろう!後輩達と一緒になって騒いでどうする!」
「いったい何を騒いでたンだよ」
「え?いやぁ……たいしたことじゃないよ」
「隼人も隼人だが、荒北も荒北だ。傍であんなに騒いでいて、しかもバスは急ブレーキもかけた。それなのに貴様、全く起きなかったのだ。よくあの状況で眠れるものだ」
「靖友は一度眠ったら起きないもんな」
「……あン時は目ェ覚めたら寮に着いてた。そんな騒ぎ全く記憶にねェ」
「最早特技だな」
……フーン、そんなことがあったのか。
だが、そン時は疲れてたからだろ。
いつもいつも熟睡してるわけねェじゃねーか。
オレは皆より先に席を立った。
……そうしねェと、ついつい、アイツのあの分厚い唇に目が行っちまうからだ……。
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