映画感想文コンクールの書き方を教えてください(by中学生)
毎年夏休み恒例の読書感想文一日講座。10人に1人くらいの割合で、「映画感想文でもいいですか?」というお申込み(お問い合わせ)があります。もちろん大丈夫だよー♬
近年、映画感想文コンクールを課題の選択肢に入れている学校もあるみたい。選べるってとってもすてき。応募の締め切りも、2024年9月17日(火)までなのでもう少し時間はありそうですね。
この記事では、作文教室に通う生徒さん達と書いてきた映画感想文をもとに、映画感想文の書き方についてまとめてみます!
2024年も開催されています。映画感想文コンクール。映画館に加えて、Blu-ray・DVDや各種配信アプリ(サイト)での視聴も推奨されていて、取り組みやすいところがいいですよね♡
生徒「まちか先生~!今年は映画感想文にする」
わたし「いいねいいね。何を見るの?」
生徒「もう見た!○○○○○」
わたし「おおーっ。それ先生も見たよ先週」
生徒「えっ、本当?あーよかった」
わたし「よかった???」
生徒「感想書こうとしたら、あんまり覚えてなくて。先生は覚えてる?」
わたし「感想書こうと思って見てなかったから細かくは自信ないなあ(正直)」
生徒「えーっ、どうしよう」
わたし「そうだよねえ、まだ上映中だからDVDにもなってないし、もう一度見に行けたらいちばんだけど……」
生徒「無理だよーーママに言えないよーー」
わたし「んー、あっ、じゃあ、ノベライズ本を見て思い出したら?」
生徒「のべらいず?」
わたし「そう!話題の映画って、小説とかマンガになってたりするでしょ?そういう本のこと。ノベライズは小説版って意味ね」
生徒「そっかーーー!ママに頼んでみる」
わたし「はーい、講座のとき持っておいでねー」
映画感想文だからといって、特別なテクニックが必要なわけではなく、基本的に読書感想文の書き方と同じ。下記↓記事を参考にしてね♬ 読書感想文1日講座でも、映画感想文を選んだ子に渡す教材は読書感想文用と同じものです(*^-^*)
とはいえ、さっきの生徒さんとの会話にあったように、読書ではなく視聴ならではの注意点ってあったりしますよね。映画館だとメモしながら見るわけにもいかないし……。映画感想文を楽しく書けるコツを見ていきましょう!
①どの映画にする?感想が書きやすい映画とは
公式サイトさんで、2つのアドバイスが出てますね♡ 別のページに分かれてますけど、感想文を書く側からすると選ぶ時に意識したい2つのポイントになるかなって思います。
【1】見たことある映画
映画感想文を書くなら、これまで見た映画のなかで好きな作品を選ぶといいかなって思います。ストーリーを知ってる映画だから書きやすい。書きやすいって、それがいちばんのメリットです!
【2】推奨作品の映画
何にしようか迷うなら、おすすめ作品がいいと思います。小学生&中学生が感想を書きやすい新作作品がラインナップされています。過去の名作もピックアップされているので、映画と出会う楽しみもありますよ! 賞を取るという視点なら、推奨作品ごとに各賞が設定されているので、ここから選ぶのも1つの手だと思う。
【3】子ども向けの映画
新作映画でも、レンタルショップでも、配信アプリでも、子ども向けもしくはファミリー向けとカテゴリ分けされているものから選ぶのもあり! テーマの難易度というより、作品のテーマが子ども向けにかみ砕いてあるかってことだと、まちか先生は思ってます。大人が見ても面白い子ども向けの映画っていうのが、本当はいちばんかっこいい。「子ども向け」を軽口で言う人って、わたしは好きじゃないなあ。子ども向けと子どもだましは違います。大人なのに中身は子どもと言われる(我が子に…)まちか先生はそう思います。
【4】何度も観ることができる映画
初めて映画感想文を書くなら、書くときに観なおすことができるように、DVD(Blu-ray)とか動画配信アプリで観られる作品を選ぶといいよ♡ 新作映画は映画館で見ることになると思うけど、上映中はスマホなどの電子機器を触るのNGだし暗くてメモも取れないし、ね。
②開催趣旨をおさえておくといいよ!
感想を書くのに直接は関係ないと思うかもしれないけれど、コンクールの開催趣旨を知っておくと、意外なヒントになったりする。
映画を見て、自分なりに考えてみる。
映画について身近な人と話してみる。
それを伝えるために感想文を書く。
趣旨を、どう取り組むかのヒントに言い換えるとこんな感じです。ね? 何をしたらいいか、どう進めたらいいか、ちょっと見えてくると思いませんか。
③誰と一緒に観る?”誰と”がポイントだよ
映画感想文コンクールの応募資格は小学生と中学生。映画館の場合は、誰かと一緒に観に行く子も多いんじゃないかなと思います。
映画館に行くって、日常の中にあるちょっとワクワクする非日常体験。
見たい映画があって行く?映画でも見ようって出かけて、何を見るか選んだ?誰と一緒に観た?選ぶ時どういう会話をした?観る前にどういう会話をした?
何気ないやり取りかもしれないけれど、ちょっと意識しておいてほしいなと思います。感想文を書くとき、とっても役に立つから。
④映画館ではメモが取れない。どうしたらいい?
本は文字を読んで、そこから頭のなかでどうイメージするかは自由ですよね。思い描いているものが他人と同じではないところが面白いなと思います。挿絵が豊富な小説だと、そのビジュアルで脳内再生されるけれど、文章を読みながら頭の中に情景が映像のように浮かぶってのは、読書ならではの楽しさです。
映画の場合は?
映画の場合は、みんなが同じ映像を見ます。目から入ってくる情報が文字だけじゃなく、画像、音響、なども受け取る。ストーリーだけでなく、俳優さん達の演技に感動することって多いんじゃないかな。
演技について言及するのは難しいって身構えてしまうかもしれませんが、演技について解説するのではなく自分が「あっ」「いいな」「うわぁ」と思ったところをピックアップする感覚でいいと思うんです。
わたしは映画の、会話をしているシーンの、セリフがない(しゃべっていない)”間”で見せる、俳優さん達の目線の動きや体を使ったちょっとした動作が好きです。ついつい注目して見ちゃう。そういう自分なりの楽しみを紹介するつもりで感想文を書くのもありかなって思います。
映画館は暗くてメモが取れません。それに、周囲の人たちは映画の世界を楽しみたくて観ているのに、近くの人がゴソゴソと何かしていたら気が散りますよね。わたしは舞台を観るのも好きなのですが、上演中にメモを取っている人を見かけたりします……。人間は同時に色々できないから、メモに気を取られると舞台に集中できません。舞台ファンの間で「メモは失礼」という意見があるのも一理あるのかなと思います。
映画館に話を戻します。忘れないようにメモしたい、というのは理解できますが、メモを取れない場所であれば”集中して観る”、これがいちばんの対処法です。純粋に作品を楽しみたい、ネタバレは嫌い、という人もいると思いますが、”一見で作品を頭に入れる”ためなら映画を見る前にパンフレットなどで情報をチェックしておくという方法もあります。
映画の内容を確認しやすいという意味でいちばん安心なのは、Blu-rayやDVD、動画配信アプリなどで観るという選択です。何度でも観れていいですよね。
どちらにも魅力があるから、作品の良さとは別に「感想の書きやすさ」で作品を選ぶやり方もあるって思ってもらえたら、少し気が楽になるんじゃないかな。
▲とっても面白かったおすすめの記事!
⑤映画を見たその日のうちにやっておくと良いこと
鉄は熱いうちに打て。日本語には便利はことわざがありますね。
どんな映画だったか、一緒に観に行った人がいれば、いっぱいおしゃべりしましょう。観てすぐだと、記憶が新しいのでおしゃべりもしやすいもの。この「しゃべってみる」のために、映画感想文を書くなら誰かと一緒に観に行くことをおすすめしたいなって思います。
▲たとえば、この記事。感想文を書く予定はなかったのですが、家族で映画館に行った帰りにあれこれおしゃべりしていたら、書き残しておこうかなって気になったのでした。映画作品を自分の体験に引きつけて考えるって、文字で見るとちょっと難しいけれど、映画を見て思い出してしまった自分のことを今の自分の目線で振り返るってとっても素敵なことだと思います。
▲これは、「映画作文コンクール」のサイトにアドバイスとして載ってる情報です。ひとりで作文用紙に向かっていても、なかなか言葉が出てこなかったりしますよね。そういうときは、身近な人とおしゃべりしてみると、自分でも意外なくらい言語化できたりするから、ぜひやってみてもらいたいなと思います。
これって、普段わたしが「読書感想文はいきなり書かない方がいい」「まずは読んだ本のことをおしゃべりしてみよう」と言ってるのと繋がってるよ。
⑥あらすじや作品説明は必要?
審査員はたいていの映画は視聴済みなのだから、そういう意味では作品のあらすじっていらないと思うかもしれませんね。あらすじを書くか書かないか、まちか先生は「あらすじ問題」と呼んでますが、結論から言うと凝縮したあらすじはあった方が感想文は書きやすいというのがわたしの考えです。
あらすじを書くときのポイントとしては、その作品を知らない人に「これってこういうお話だったよー」と紹介する程度にぎゅっと要約すること。感想文の冒頭に要約を入れておくことで、その後の感想を展開しやすくなります。書かない方法もあるけど、書くか書かないか迷ったら書いていいと思う!
映画ならではなのは、「作品説明」という目線での言葉を足すと、映画という文化へのリスペクトが感じられる感想文になります。具体的には……
・俳優さんの情報を入れる
・シリーズものなら何作目とかどういう位置付けなのか
・監督の言葉から作品の意図を知る
・原作があればそれに触れるのもあり
これらをぜんぶ盛り込むのはさすがに大変だと思います。映画レビューや映画コラムを書く仕事をしているわたしでも大変だと思うもの。この中にもし、自分が書こうとしている感想に関連する情報があるならそれを入れておくといいよっていうアドバイスと思ってもらえたら嬉しいな。
余談だけれど、あらすじは「覚えてる範囲」で書くしかないから、ちょうどよくコンパクトに書けるっていう側面もあるよ。あんまり覚えてないから再生しながら書こう…とがんばっちゃうと、あらすじじゃなく筋書きになっちゃうから、「覚えてる範囲」でOKって気楽に書いてみてね。
⑦関連作や過去作も見た方がいい?
必須ではないけれど、そういう楽しみもあるよ!
本と同じように、映画にもいろんな切り口での楽しみ方があるよね。数珠つながりのように、次を観たくなる……そういう体験ってとっても素敵だとまちか先生は思います。
シリーズだったり、監督つながり、俳優つながり、映画音楽つながりだったり。ジャンルくくりで見ていくのも面白いですよ。あとは、リメイク作品だったら新旧見比べてみるのもおすすめ!
▼映画作文コンクールを主催するキネマ旬報さんのサイトに、映画感想文に関する対談が載っていたからよかったら読んでみてね。
原作をあたる面白さですね。”感想”ってすごく自由なんだっていうのが分かります。読書感想文講座で生徒さんによくお話するんですけど、感想文って誰かにとっての正解を書くわけじゃないんです。ひとりひとりが、その作品に触れてどう感じたか、何か感じたということは感じる前の自分とは少し違うんですよね。そういう、ちょっとした変化かもしれないけれど、それを描くのが感想文なんです。
関連作、シリーズの過去作、原作などなど、興味があれば観てみてほしいなと思います。観る観ないでは、説明や感想の深みが変わってくるというのは、現実にあるよ。でも必須じゃないから、映画って楽しいなー他も観てみようかなーって思ったら観てみてね。
⑧2時間で切り取られた世界を
なんで映画ってだいたい2時間なんだろうと思ったことありませんか? 調べるといろいろ出てきて面白いよ。
大人の事情だったり、人間の物理的事情だったりで、映画は2時間くらいという枠があります。言い換えると、2時間で収まるように脚本は書かれているってこと。
まちか先生が先日アップした、マンガ感想文コンクールの書き方とは逆だよね。マンガ感想文では、「何十巻と出ている漫画の、そのうちの1冊についての感想でもOK」というルールになっていて、わたしはじゃあそういう場合の書き方の工夫を紹介するねって記事にしたのがこちらです▼
映画って、原作がどんなに長くても、制作陣が描きたいことが山ほどあったとしても、上映時間という制限がある。この制限が映画の魅力でもあると思うのです。
削ぎ落とされて残されたエッセンスが映像化されているわけですね。何が削られて、何が残ったのか。場合によっては加えられることもある。そこを意識して映画を観てみるのもすごく面白いからいつかチャレンジしてほしいなって思います。
ここまで、長いお話をぎゅっと凝縮したケースについてお話してきました。「2時間で切り取られた世界」には、逆の捉え方もあります。2時間で描くために盛り込むことができなかった色々を、観ているわたし達が想像して楽しむ余韻があるってことです。
映画感想文を書くとき、そういう「すき間時間」「描き切れなかった背景」にも思いを馳せることで、とっても読み応えある映画感想文になりますよ。”想像する余地がたくさんある”2時間を楽しむ。映画感想文の魅力ってそこにあるのかなって思います。
ここでちょっと脱線。
わたしが中学生だった夏休み、トルストイの「戦争と平和」を読んで読書感想文を書けという宿題が出たんですよ。死ぬかと思った。長いから読んでも読んでもページが進まないし、登場人物多すぎ人間関係複雑すぎで頭がこんがらかるから感想なんてむりー!感想?は?「めんどくせぇ」が感想ですが何か?みたいな感じで、なかば義務感と気合と根性で読んで書いたわけですが。
新学期その話をしたら、クラスメイトが「だよねーーだからうち、お母さんに本じゃなくて映画にしたらって言われたんよ。映画の戦争と平和を観て感想書いたー」と言ったの。衝撃だったよ!!!その手があったか!!!!!(209分かよ!わたし1週間かけて読んだんだが!)
負けず嫌いのわたしは、自分も映画「戦争と平和」を観てみたわけです。それでね、あれ「ものすごいダイジェストストーリー?」って思ったの。映像化するために削ぎ落として魅力を加えてある。それで、「本を読んだ感想と映画を観た感想じゃ、別のことを書くかもしれない」と。
別の作品であり、別のカルチャーなんだなって感じたのです。読書感想文コンクールは50年くらい続いていて、映画感想文コンクールはまだ10年くらいですけど、「感想文」がそういうふうにもっと立体的に捉えられたらすごくいいなと考えています。音楽感想文とかもあっていいですよね。感想文文化、もっと広がるといいなぁ。
⑨「考察する」「読み解く」から広がる世界
この項目は、先日書いたマンガ感想文コンクールについての記事と共通だから引用しますね。作品に触れて新しい見方になったとか、知見を得たとか、そういう「自分の世界が広がった」ストーリーを、感想文に落とし込んでみると書くプロセスも楽しいし、意図しなくても自分らしさが出てとても素敵な感想文になると思います!
⑩日常と非日常がつながるとき
映画館から出てきたら、なんだわふわふわした気持ちだったってことない? 本を読むときにもそういう感覚あるんだけど、映画館って閉ざされた空間で目も耳も全神経奪われてその世界に没頭するからかもしれない。すごくふわふわします。良くも悪くも。
この映画を観たときは、ものすごくひきずりました。「いただきます」ってごはんを食べようとして、それが当たり前じゃない兄妹が頭をよぎるの。いてもたってもいられなくなるのよね。ああ、この社会で自分はどう生きていくべきなんだろうって。
わたしはシングルママなんですが、離婚した理由は元夫のDVでした。いい年した大人のわたしでもDVから逃れて新しい暮らしを作るって、めちゃめちゃ大変でした。なのに児相に通報もせず10代の女の子ひとりで立ち向かわせるなんて。その後の兄弟は描かれていないのにヒロインの吹っ切れた笑顔だけがエピローグで描かれていて、気になってしょうがないんですよ。
だからもし、自分が映画感想文を書くとすれば、非現実として見てる自分と、現実として見てる自分を、どう折り合いをつけるか、映画で描かれて良かったことと映画で描くべきだったことなどを綴るんじゃないかなと思います。
だいぶ重い話をしてごめんね。
映画はエンターテイメントだけれど、そのなかに「リアル」を感じる瞬間ってありますよね。日常と非日常の境目がとけるような……。そういう体験も盛り込めたら、映画感想文はもっと自分らしく仕上がります。チャレンジしてみてね。
▼マンガ感想文の書き方についてはこちら
まとめ
マンガ感想文コンクールについての記事を書いてから、映画感想文コンクールの記事も書きたいなと思っていました。感想文の基本は、≪永久保存版≫読書感想文の書き方のコツを図解してみたに解説しています。読書感想文の書き方をベースに、映画感想文ならではの視点を加えて、書いてみてくださいね!きっとすてきに書けるはず。
一人で本を開く読書との違いは、映画って誰かと一緒に楽しむこともできるというところ。この夏の思い出の1つになるような、とびきり大好きな映画に出会えるといいね!