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わたしのイマジナリーフレンドを紹介します

突然ですが、作文の先生が書く「作文」に興味ありませんか?

何年も作文教室をやっていると、子ども達から「先生の作文、読んでみたい」と突っ込まれること多々。たしかにそうですよね。何となくの興味だったり、教わる相手がなんぼのもんか知りたい心理だったり、あるある、わかる。それは当然です。

わたしの場合は、生徒さんにも保護者さんにもSNSをオープンにしているので、普段どんなこと発信しているのか筒抜けです。もっと知りたい生徒さんには、別名義(ライターや作家として)の作品をお伝えしたりします。


映画「ブルー きみは大丈夫」を見て

昨日、わたしの娘達(高校生&小学生)と映画を見に行きました。朝ごろごろしながら今日は何しよっか、と聞いたら「映画がいい!」「見たいのあるんだけど!」「それ自分も気になってた!」「うっそマジ!?」と娘達は大盛り上がり。

映画タイトルは「ブルー きみは大丈夫」です。わたしは映画レビュー等の仕事もしていますが、これは関わっていないやつ。えー、めっちゃ見たい!とウキウキで映画館へ出かけました。

※娘達のこと、高校生は「いっちゃん」、小学生は「にこちゃん」とSNS上では呼んでいます。一と二です。安直ですみません。ちなみに大学生のお兄ちゃんは「れいくん」です。漢字だと零。

映画を見終わった帰り道で

いっちゃん(以下:いち)「すっごい良かったね~」
にこちゃん(以下:にこ)「面白かった~」
わたし(以下:ママ)「うん!」
いち「……ねえ、ママってさ、見える方の大人なんじゃない?」
ママ「えっ」
にこ「どんな子?」
いち「おしえてよ」
ママ「ちょ、待って。なんで見える前提なのよw」
いち&にこ「いないの?」
ママ「いるけど…」
いち&にこ「やっぱり~~~」

わたしのイマジナリーフレンドを紹介します

わたしが高校生のときでした。放課後に友達とカラオケ&ショッピングで遊びに出かけた帰り道、バス停の近くにアンティークっぽいイギリス雑貨のお店がありました。わたしはなんとなくドアを開けて入りました。

店内にはドレスを着たお人形や、紅茶、ビスケット、本、文具、…イギリス関連のアイテムがところせましと並べられていて。でもわたしの目は棚に座っていたテディベア(クマのぬいぐるみ)に引き寄せられました。

「くまこう……?クマ公なの?」

わたしが幼い頃からずっと友達だったクマ公にそっくりだったのです。

これね、この名前が出た瞬間、娘達に突っ込まれましたよ。「クマ子?」「くまモンの仲間?」ううん、そのどれとも違うの。(40年前にくまモンいませんからw)

クマ公がなんで「公」なのかは、自分でもよく分からないけれど、たぶん、絵本で読んだ”ハチ公”にネーミングの影響を受けてると思う。

幼いころから、親が転勤族で半年とか1年とかで引っ越しを繰り返していたわたしには、ずっと一緒の友達なんていなかった。新しい学校でできた友達とも「どうせすぐにバイバイだし」と、どこか距離を置いていた。そんなわたしのいちばんの友達が、クマ公だったの。ぜったいの味方だったの。

クマ公の背中に乗ればいつだってどこへでも行けた。疲れたらもふもふのおなかにくっついて眠ると元気になった。大人にいっぱい叱られても大丈夫大丈夫まちかちゃんはいい子だよって話を聞いてくれた。

わたしのことを軽々と運べちゃうくらい大きいクマ。大きさのイメージはアニメ「名犬ジョリィ」だったんじゃないかな。すっごく憧れていたから。余談だけれど、「SPY×FAMILY」のボンドがアーニャを背中に乗せて走れるサイズ感なのもすっごく好き。犬種が同じグレート・ピレニーズだもんね。

でも、棚に並ぶクマ公は少しよそいき顔のおじさんで、わたしは少し戸惑いました。もうずっと、何年も、忘れていたのに。どこにいたの。

「クマ公、どうしてここにいるの?一緒に帰ろう」

高校生のお小遣いにはけっこうお高めだったけど、わたしは数千円払ってクマ公を連れて帰りました。ベッドヘッドのそばに置き、毎晩クマ公を眺めながら眠りました。抱きしめるのも照れくさいし、昔みたいにクマ公とおしゃべりはできなかったけれど、わたしはそれでもとっても嬉しかったのです。

二度目のさよならは10年後でした。

大学を卒業したわたしは実家を出て、東京でひとり暮らしをしました。一生懸命恋をして、大好きな人と結婚しました。実家から遠いところで暮らしていたのですが、初めての子供を産むとき里帰り出産することにしました。

それまでもお盆やお正月には帰省していたけれど、しばらく暮らす、というのはとっても久しぶりです。臨月のおなかを抱えて、実家の2階にある自分の部屋のドアを開けたわたし。ちょっとした違和感がよぎります。

「なんかきれいになってる……お母さん、片付けた?」
「そうよ。これから赤ちゃんグッズも増えるしね。あなた、自分のもの全部そのままにしてるんだもの」

本棚、学習机、ベッド。家具はそのままなのに、まるで別の人の部屋にいるみたいでした。でも、まあ、仕方ないか。

約1か月後、わたしは息子れいくんを産んで、産婦人科から実家へ戻りました。乳腺炎で高熱が続いてフラフラだし、一日中泣き止まないれいくんの抱っこに疲れてベッド脇にへたり込んだ時、「クマ公にれいくんを紹介しよう」と思いました。

そこでハッとなります。
クマ公はどこ?

母にとっては赤ちゃん向けと思えなかったのでしょう。長い巻き毛の古いテディベアはそこにはいませんでした。かわりに新品の赤ちゃん向けのキャラクターぬいぐるみが置かれていました。

わたしは泣きました。

自分のせいなのは分かっていたの。実家を出る時にクマ公を連れて行かなかったわたしが悪いんです。だってもう、自分は一人で何でもできるんだって思っていたから。そう思いたかっただけかもしれないけれど。クマ公ごめんなさい。

泣き疲れて、ベッド脇の床に座って息子を抱っこしたまま、わたしはいつのまにか眠ってしまっていました。

ふと目が覚めました。カーテンの隙間から朝日が差し込んで、ちょっとまぶしい。腕に感じる息子の重みに目を向けると、パチッと目を開けてるれいくんと目が合いました。泣いていないれいくんのお顔なんて、初めて見たかもしれない。そう思ったとき

「わあ、…おはよう」

そのとき、クマ公が言いました。れいくんを覗き込んだあと、にっこりわたしに笑顔を向けました。

「大丈夫大丈夫、まちかちゃんには一緒に眠る彼も、抱きしめてあげられる子どももいるよ」
「えっ。でも、クマ公がいないのはいやだよ」
「僕がいなくても自分で手に入れたんだ。もうさみしくない。だから大丈夫」
「大丈夫じゃないよ!いやだよ!」
「大丈夫」

それがクマ公の声を聞いた最後でした。

いち「それ、本当なの?」
ママ「うん。ママにとってはね」
にこ「クマ公ともう会えないの?」
ママ「どうなのかなぁ。わたしがピンチになったら、また会いに来てくれるんじゃないかなぁ」

わたしは思います。クマ公が見えないのは、わたしはまだ大丈夫まだ頑張れるってサインなんだって。クマ公はわたしに大丈夫大丈夫って伝えるために今も姿を隠しているの。

大人にこそIFが必要って、どういうこと?

映画の中に「イマジナリーフレンドは大人こそ必要」という言葉がありました。映画のキャッチコピーにも「大人になったあなたに贈る」とあります。

わたしだって、クマ公に会いたいよ。
いつでもそばにいてほしいよ。
でも、会えないんだよ。

「目を閉じれば、思い出が波のように押し寄せる」だったかな? 映画はまだ1度しか見ていないからうろ覚えだけれど、おじいちゃんクマの”ルイス”がそう言っていた気がする。

でも”ピンチ”って、なんなんだろうね。もう耐えられない、そんなこと大人になってから何度も何度もあったのに。手ひどい裏切りにあったり、大切な人を失ったり。顔が筋肉痛になるくらい泣いた日もあるのに。でもクマ公には、まだ会えてない。

クマ公、かいかぶりすぎだよ。
わたしのこと信じすぎなんじゃない?

「わたしはまだ大丈夫」…そんなふうに、会えないことを支えに、わたしは今日も大人社会を生きています。

歌「クマのぬいぐるみ」作詞作曲みなみらんぼう

NHKみんなのうたで、大好きな歌。クマ公も「少し淋しくてちょっと悲しくてとても嬉しいよ」って思ってくれてたらいいなぁ。

本「くますけと一緒に」新井素子

高校生のときに学校図書館で見かけて手に取りました。

「子供は親を嫌っていいの」
「親が子供を嫌う権利は、少なくとも子供が小さい時にはないのよ」

くますけと一緒に

読んだのは、わたしがクマ公と再会してすぐの頃だったけれど、この本にものすごく衝撃を受けた記憶があります。身を固くしてぬいぐるみを抱きしめるしかできない子ども達。当時は「イマジナリーフレンド」って言葉が今ほど浸透していなかったと思うのだけれど、”くますけ”も”なんなん”もイマジナリーフレンドだったのね。

絵本「こんとあき」林明子

我が子達みんな大好きな絵本。表紙が取れちゃうくらい読み聞かせして、ママの方が暗唱しちゃった。それでね、教育学部の大学生になった息子れいくんは、教育実習先の幼稚園にこの絵本を持って行って読み聞かせをしたんだって。それを聞いた時、わたしすごく嬉しかったなぁ。

大人じゃない大人にできること

わたしとクマ公の話を聞いたあと、娘達が言いました。

にこ「実はさー、なんでママはぬいぐるみに話し掛けるんだろうって不思議に思ってたんだよ」
いち「だよねー。うちらが小さい頃に全部のぬいぐるみ(マスコットキーホルダーとかおもちゃのフィギュアとかも)に名前つけてたやつ、ママは全部覚えて名前で呼んでたもんね」
ママ「いや、それは、普通に名前だと思ってたからで…」
2人「普通は名前なんか呼ばないらしいよwwwww」

あはは。それもそうか。「みずちゃーん、ここにいたの?みかんちゃん、おうちに帰るよー」ってお片付けしてたもんね、たしか。今日はなんとなく切り出さない方がいいかなって思って聞かなかったけれど、いつかふたりにも、それぞれのIFのお話を聞かせてもらいたいなぁ。

冒頭に、”作文の先生が書く「作文」に興味ありませんか?”と書きました。

書いておきながら、なんですけど、わたしには美文をつづるセンスはありません。ライターなので仕事原稿は指示通りに仕上げるし、作文教室ではみんなを書けるようにしてあげられるけれど、自分のこととなるとこの通りグダグダよ。

この映画に出合えてよかったなぁ、この映画を我が子と見れてよかったなぁ、そんなふうに心から溢れた気持ち、ほったらかしにしていたら忘れてしまいそうだったので、ちゃんと文字にすることにしました。もしかしたら、クマ公のことを思い出せなくなってしまう日が来るかもしれないから。

感想文なんて、こんなんでいいと思うんだ。
だからみんな安心してどんどん書いたらいいんだよ♡
と、まちか先生は思います。

この感想文(この記事のことです)を書いているとき、いっちゃんが言いました。

いち「大人がみんなママだったらいいのになぁ」
ママ「えーっ。そんな、世の中しっちゃかめっちゃかになっちゃうよ!」
いち「wwwww 自覚あるんじゃんw」
ママ「でもまあ、作文の先生やってて、子ども達の目が変わる瞬間があるんだよね。"なんだこいつ仲間じゃん"的な。心の扉バーン!」
いち「そこらへんの小学生より子どもやけんねぇ」
ママ「うっさいわw」
いち「ママ、作文の先生になってよかったね!天職だよ」

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今日のnoteは、ゆるっと楽しく書きました。普段は「まちか先生の作文アドバイス」シリーズを更新しています。。読書感想文★攻略術の全記事は↓ここから読めるのでぜひチェックしてみてね!

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