小説|赤いバトン[改訂版]|第8話 結婚三十五周年(語り:コウサク)
先月、ボクたち夫婦は、めでたく結婚三十五周年を迎えた。語呂あわせで[珊瑚(さんご)婚式]と言うらしく、ボクたちは、よそ行きの服で着飾って、夫婦水入らずのディナーを楽しんだ。このディナーは、すでに嫁いでいる一人娘からのプレゼントで、名古屋駅に直結しているホテルの、最上階ラウンジのコースディナーを用意してくれた。しかも娘はわざわざ車での送迎までしてくれた。
帰り道の車内、娘が妻に「地上二百十メートルからの夜景はどうだった?」と訊ねると、
「光の宝石だった」と妻は答え、つづいて、