まもやん

マーモットの小説を書いてます。 イラストも時々描きます。 マーモット好き。

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短編小説 「マーモットになりたかった男」

 ある日の早朝、1人の男が険しい山道を深刻な面持ちで登っていた。この男は人間社会に嫌気がさし、1人山の中で生活する決意をしたのである。この男の名は星雲。至極真面目な性格で働き者であった。朝は早くから新聞配達をし、昼にはペンキ職人として働いていた。一度足りとも仕事を休んだり遅れたりしたことはない。ただ欠点があるとすれば、人との関わりが苦手であった。産まれた時から孤児院に預けられた星雲は、16歳の時に孤児院を飛び出し、住込みで新聞配達を始めた。名は星雲としか分からなかったが、自分

    • マモの剣-第二章 遥かなる敵-第六部-初めての戦い-

       マーモスと聡明は人間が住む村にいた。マーモスはかつて、人間から剣を奪ったことがあるだけあって、人間の村のことはだいたい把握していた。マーモスはこれまでの聡明の話を聞いて、ターゲットをマーモットを連れ去り、闇市で売り捌くブローカーに狙いを定めた。マーモスと聡明は村の市場に忍び込んだ。キッキとくい坊を連れ去ったブローカーがいつものように、珍しい動物を売っていた。夕方になると、ブローカーが、「ちぇっ、今日はさっぱり売れなかったな」と小言を言いながら、帰り支度をしていた。ブローカー

      • マモの剣-第二章 遥かなる敵-第五部-真剣-

         その日、聡明はヤクの側で寝た。聡明は、マーモスから修行の許しを、もらえたことで、緊張が解けてぐっすり眠っていた。ヤクが聡明に顔を近づけて起こしてくれた。聡明が目を擦りながら辺りを見回すと、まだ外は薄暗かった。聡明がマーモスのいる岩場の中に入っていくと、マーモスはもう目を覚ましていて、木の実を何種類か用意してくれていた。マーモスは聡明に向かって「二度目はないぞ」と釘を刺された。聡明は一瞬、不安がよぎったが、何が何でもやり抜くぞと自分に言い聞かせた。  ご飯を食べ終わると、マ

        • マモの剣-第二章 遥かなる敵-第四部-修行再び-

           聡明はどきどきしながらマーモスのもとに向かって歩いてた。険しい坂道を登る足取りも重い。一度、修行から逃げ出した僕を再び受け入れてくれるだろうか。あれだけお願いして弟子にしてもらったのに、きっと呆れているに違いない。何度も立ち止まって引き返そうとしたが、このまま帰っても長老に合わせる顔がない。聡明は覚悟を決めて、マーモスが住む岩場に向かった。近くまで来ると、岩場の外で休んでいたヤクが聡明に気付いて、近寄ってきた。そして、聡明に顔をすり寄せて挨拶してくれた。すると、岩場の中から

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        短編小説 「マーモットになりたかった男」

        マガジン

        • マモの剣 -第二章 遥かなる敵-
          6本
        • マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-
          11本
        • マーモットになりたかった男
          6本
        • 最近思うこと
          1本

        記事

          マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第十一部-聡明の決意-

           聡明はくい坊が飼われている家を後にして、マモ村に戻ることにした。悔し涙を腕で拭いつつ長い坂道を登った。坂道を登りきったところの大きな岩にさすらいが待っていた。さすらいは聡明を見つけて駆け寄ってきた。「とても心配してたんだぞっ、とにかく長老のところに行こう。話を聞かせてくれ」聡明は慌てて涙を拭いた。長老の巣穴に行くと、キッキが長老から手当を受けていた。聡明は長老をはじめ、さすらいとキッキにも人間の村での出来事を話した。長老は「聡明くんには、くい坊くんのことで辛い思いをさせてし

          マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第十一部-聡明の決意-

          マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第十部-くい坊の決意-

           聡明はしばらくくい坊がいる家の庭でうつ伏せで倒れていた。くい坊さんが食べ物に釣られて飼い慣らされてしまっていることや、自分の弱さを考えると悲しかった。剣を抱えながら、「僕は本当に勇者の血を継ぐものなのかな。さすらいくんの言うように僕のご先祖様が巣穴の中でたまたま剣を見つけただけの話じゃないのかな」そう思うと涙が出てきた。人間は僕たちが知らないような美味しい食べ物をたくさん持っている。それに力の差は歴然としている。僕たちが立ち向かって敵う相手では無さそうだ。聡明は悔し泣きしな

          マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第十部-くい坊の決意-

          マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第九部-不思議な四角いもの-

           夜になって家の明かりが灯り始めた頃、聡明はくい坊がいる家の窓にいた。くい坊は丸くて固い食べものを一心に食べている。くい坊の頭の上にはその丸くて固い食べものが乗せられていた。飼い主の男がくい坊に何やら四角いものを向けていて、よく見るとその四角いものには、くい坊が食べている様子がそっくりそのまま映し出されていた。「あの四角いものはなんだろう。くい坊さんの行動がそっくりそのまま映っている」聡明はしばらくその不思議な四角いものを眺めていた。しばらくして、飼い主の男が苺を持ってきてく

          マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第九部-不思議な四角いもの-

          マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第八部-再会-

           キッキが見覚えのある坂道を登っていると、途中で聡明とさすらいに出会った。キッキは泣きながら聡明とさすらいに駆け寄って「くい坊さんが、人間に連れて行かれましたっ」と叫んだ。聡明はさすらいにキッキをマモ村まで連れて帰るように頼んで、急いで市場の方に走り出した。聡明が市場に到着した頃にはすっかり日が暮れて人間は一人もいなくなっていた。聡明は市場を駆け抜けて、人間たちが住む村まで来た。平家がぽつんぽつんと立ち並んでいて、家の窓からは明かりが灯っている。聡明は一軒一軒窓から覗いてみた

          マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第八部-再会-

          マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第七部-市場-

           その頃、キッキとくい坊は人間たちが集まる村の市場の片隅にいた。人間たちがキッキとくい坊の檻の周り集まってきて興味深く眺めていた。ブローカーの男は、集まってきた人間たちに向かって「めずらしい生き物だよっ、ここでしか買えないよっ、でぶっちょも小さいのも同じ値段だっ」と威勢よく声かけをした。すると、1人の男がキッキの方をじっと見て、「かわいい顔をしてるな」と言った。キッキはその男に向かってキーッと叫んで暴れ始めた。「小さいのは随分気性が荒いな、噛みつくんじゃないのか」とブローカー

          マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第七部-市場-

          マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第六部-怪しい男-

           その時、背後から「おっ、二匹入ってるな」と声がした。キッキとくい坊が声の方を見上げると、顔は浅黒く卑しい目つきの男がニヤニヤしながら立っている。「人間だっ」キッキは振り返って草原のほうを見たが、仲間の姿はない。くい坊はこれから何か恐ろしいことが起こるのではないかと思い震えた。卑しい目つきの男は檻の隙間から丸くて固い食べ物を二枚投げ入れた。「今からお前らを市場まで連れて行くからそれまでせんべいでも食べて大人しくしててくれ」と言うと檻ごと左の脇に抱えて歩きだした。キッキは檻の柵

          マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第六部-怪しい男-

          マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第五部-箱罠-

           翌日、ブローカーは、せんべいを入れた檻の罠を食いしん坊五人組の巣穴近くに置いて帰った。次の日の朝早く、くい坊が草を食べようと巣穴から外を覗くと、何やら四角い箱が置いてあることに気付いた。目を凝らしてよく見ると箱の中に丸いものが置いてある。「あっ、あの丸くて固い食べ物だっ、俺が夢にまで見たっ」とくい坊は興奮した。しかし、見張り隊三匹が朝から見張りに立っている。今日は、見張り隊三匹のうち、隊長であるキッキも厳しい目で見張っていた。キッキも四角い箱に気付いて近づいていった。すると

          マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第五部-箱罠-

          マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第四部-食いしん坊五人組-

           翌日、村のマモ達を集めた集会が開かれた。長老は集まったマモ達に向かって「皆も知っての通り、人間によって我々の生態が脅かされておる。食べ物の誘惑は恐ろしく、我々はその誘惑に打ち勝つ必要がある。そのため、本日より人間から食べ物をもらうことを禁止とする」この長老の発言にマモ達はざわついた。この突然の決まり事にあからさまに反対の態度を示したのはマモ達の間で食いしん坊五人組と呼ばれている五匹だった。この五人組のリーダー、あだ名はくい坊と呼ばれる一匹が「長老は何をそんなに怯えているんだ

          マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第四部-食いしん坊五人組-

          マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第三部-旅-

           次の日の朝、聡明マモは背中に剣を背負い、長老からもらった薬草と松の実が入った小さな袋を腰に結びつけて巣穴を後にした。「昨日は長老の前で大見得を切ったけど、やっぱり少し不安だな、僕は本当に勇者なんだろうか、そして無事にキッキさんに会えるんだろうか」聡明マモはそう言いながら背中に背負った剣の紐を握りしめて歩き始めた。草原を歩くと目立つのでなるべく茂みが多いところを歩いた。鳥の鳴き声が聞こえる度に、立ち止まり辺りを注意深く見回した。一匹で茂みの中を歩いているうちに孤独な気持ちにな

          マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第三部-旅-

          マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第二部マモの剣-

           翌る日、聡明なマモは巣穴の一番奥の土の中に隠してある布に包まれた剣を取り出し、大切そうに抱えながら長老の巣穴に向かった。長老の巣穴の前まで来ると長老が出迎えてくれた。その横でさすらいマモも待ち構えていた。長老が笑顔で「今日は大事な剣を持ってきてもらってすまないな」と聡明マモに伝えた。聡明マモはひざまずいて布に包まれた剣を長老の前にゆっくりと置いた。聡明マモが丁寧に布を広げると銀色の鞘に入った剣が見えた。聡明マモは「柄(つか)を見てください。これは我々が毎日食している草の模様

          マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第二部マモの剣-

          短編小説 「マモ対メタルマモ」

           最近、マーモットたちの人気が高まり、ここモンゴル高原に観光にやってくる人々が増えた。観光客の中には、クッキーやポテトチップスなどマーモットに害のある食べ物を与えるもや、観光客に混じってマーモットを連れ去り闇市で売り捌くものまで現れた。マーモットの数はどんどん減少し、観光にも影響が出てきた。マーモットを保護する目的で活動している団体が、交代で観光客を見張ることにした。それでも広い草原を見張るには限界があった。そこで、ある研究室にマーモットそっくりのロボット開発を依頼した。メタ

          短編小説 「マモ対メタルマモ」

          短編小説 「今夜はマモ祭り」

          「遥かなる彼方の大空より舞い降りてくるものわれわれに災いをもたらす、翼を大きく広げて、鋭い爪で捕まえ一飲みにするもの恐ろしく、そのものよりわれわれを守りたまえ」  マーモットたちからマモ守護神と言われて崇められているママスが今夜のマモ祭りのための準備を行っていた。祭壇を作り、そこに鷲の羽を一枚置いた。この羽はまだママスが幼い頃、弟のマオスが鷲に背中を掴まれ連れ去られた時に落としていったものだった。この現場にママスも居合わせていた。ママスは連れ去られていく弟、マオスを必死に追い

          短編小説 「今夜はマモ祭り」