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マモの剣-第二章 遥かなる敵-第五部-真剣-

 その日、聡明はヤクの側で寝た。聡明は、マーモスから修行の許しを、もらえたことで、緊張が解けてぐっすり眠っていた。ヤクが聡明に顔を近づけて起こしてくれた。聡明が目を擦りながら辺りを見回すと、まだ外は薄暗かった。聡明がマーモスのいる岩場の中に入っていくと、マーモスはもう目を覚ましていて、木の実を何種類か用意してくれていた。マーモスは聡明に向かって「二度目はないぞ」と釘を刺された。聡明は一瞬、不安がよぎったが、何が何でもやり抜くぞと自分に言い聞かせた。

 ご飯を食べ終わると、マーモスが「今日はここの岩場で修行だ」というと、聡明の腰にロープを巻いた。そして、聡明に高い崖から身を半分出すように指示した。聡明は高い崖から恐る恐る、半身を出し、そこから下を見下ろした。えぐれるように突き出した崖の淵から下を見下ろすと、地面は遥か遠く、聡明は恐怖に震え思わず目を瞑った。崖の上は風がピューピュー吹いていて、今にも吹き飛ばされそうになっていた。聡明は思った。マーモスは僕に巻いたロープを必死に引っ張って下に落ちないようにしてくれているんだろう。僕の命はマーモスにかかっている。僕はマーモスのことを信頼している。だから僕はここから下に落ちるなんてことはないんだと強く思った。すると、不思議と少しだけ恐怖が和らいだ。それから一時間くらい経過しただろうか。マーモスがロープを少しずつ引っ張って、聡明を崖の上に戻した。聡明は直ぐに立ち上がり、マーモスに向かってお辞儀をした。聡明は弱音を吐くことなくこの厳しい修行を絶えぬいた。聡明は明らかに成長していた。マーモスはその姿を見て、剣の使い方を教えてやると聡明に伝えた。聡明は嬉しかった。「やっと、剣が使えるんだっ、これで人間と戦うことができるかもしれないっ」と希望が湧いた。マーモスは、聡明に剣を抜くように伝えると、マーモスも同じく剣を持って、聡明とマーモスは対峙した。聡明は練習だと思って気を抜いていたが、マーモスは聡明を鋭い目つきでじっと見ている。聡明はこれは練習では無さそうだと感じた瞬間、マーモスが「来いっ」と叫んだ。聡明はびくっとしながらも、ここは向かっていかなければならないと思い、「ヤーッ」と言いながら、マーモスに向かっていった。剣を合わせた瞬間、聡明の剣は空に舞って、虚しく地面に落ちた。聡明は力の差を感じて、うなだれた。マーモスはうなだれている聡明に「剣を使う時は、精神を統一させて、相手と真剣に向き合わなければならない。恐怖心を抱けば相手に隙を突かれる」と言い放った。次の日から本格的に聡明の剣の練習が始まった。マーモスに何度も向かっていったが、簡単に持っている剣を落とされてしまう。聡明は自分が本当に勇者の血を引き継ぐ者なのか疑って挫けそうになったが、マーモスが聡明に向かって「自分を信じろっ」と叫んだ。聡明は、自信を取り戻し、精神を統一してマーモスに向かっていった。剣は「キーン」と音を立てた。聡明はしっかり剣を握っている。マーモスと初めて、剣と剣を合わせることが出来た。マーモスは、聡明に「俺は、お前を指導する立場であり、敵ではない。これは、練習に過ぎない。本当に強くなりたければ、実戦を積む必要がある。お前にその覚悟はあるかっ」と問うた。聡明は力強くうなづいた。マーモスは「よしっ、明日、人間の村に攻め入るぞ」と言った。 

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