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マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第七部-市場-

 その頃、キッキとくい坊は人間たちが集まる村の市場の片隅にいた。人間たちがキッキとくい坊の檻の周り集まってきて興味深く眺めていた。ブローカーの男は、集まってきた人間たちに向かって「めずらしい生き物だよっ、ここでしか買えないよっ、でぶっちょも小さいのも同じ値段だっ」と威勢よく声かけをした。すると、1人の男がキッキの方をじっと見て、「かわいい顔をしてるな」と言った。キッキはその男に向かってキーッと叫んで暴れ始めた。「小さいのは随分気性が荒いな、噛みつくんじゃないのか」とブローカーに言われ「はぁ、こいつはかわいい顔しとりますが、人に慣れるまでに時間がかかるかもしれねぇ、それに比べてでぶっちょの方は大人しいですよ」と言うと、くい坊は男に向かって軽くお辞儀をした。男はくい坊をとても気に入り、ブローカーにお金を渡した。くい坊はブローカーに背中を掴まれ一匹用の小さな檻に移された。くい坊は檻の柵を手で掴みながら不安気な様子でキッキの方を見つめていた。「もしかしてくい坊さんは僕の身代わりになってくれたんじゃっ」キッキは叫んだことを後悔して涙が出た。くい坊は男に抱えられながら市場から消えていった。キッキは気性が荒いとの噂が市場に流れてしまい夕方になってもキッキを買いたいという人間は現れなかった。ブローカーは「こんな売れねぇやつ飼ってても仕方ねぇ」と檻の柵を開けてキッキつまみ出した。キッキは道端に転げ落ちた。しばらく痛みで立ち上がれなかったが、よろけながら立ち上がり来た道を歩き出した。

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