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マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第九部-不思議な四角いもの-

 夜になって家の明かりが灯り始めた頃、聡明はくい坊がいる家の窓にいた。くい坊は丸くて固い食べものを一心に食べている。くい坊の頭の上にはその丸くて固い食べものが乗せられていた。飼い主の男がくい坊に何やら四角いものを向けていて、よく見るとその四角いものには、くい坊が食べている様子がそっくりそのまま映し出されていた。「あの四角いものはなんだろう。くい坊さんの行動がそっくりそのまま映っている」聡明はしばらくその不思議な四角いものを眺めていた。しばらくして、飼い主の男が苺を持ってきてくい坊の目の前に苺を差し出すと、くい坊が苺に食いつこうとした。その瞬間、飼い主の男がサッと手を引っ込めたのでくい坊は前にかくっと倒れそうになった。くい坊は苺を食べたくて両手で必至に掴もうとしているが、飼い主はなかなか苺を渡してくれない。聡明はその様子を見て段々怒りが込み上げてきた。「我々マモ族を愚弄しているっ」聡明は背中に背負っている剣の柄(つか)を掴み、柄で力強く窓ガラスを叩き割ろうと思いっきり振り下ろしたが窓ガラスは割れなかった。ガッという鈍い音で飼い主の男とくい坊が窓の外にいる聡明に気が付いた。くい坊は目をまん丸くして聡明を見ている。飼い主の男は「またあいつかっ」と言うと玄関から外に飛び出し、ホースを持ち勢いよく水を撒いた。聡明は両手で剣の柄を持ち、飼い主の男と対峙したが、ホースから出る水の勢いが強く聡明は吹き飛ばされ地面に頭を強く打ちつけた。くい坊が心配そうに飼い主の男の足元から見つめている。聡明は意識が朦朧としながらもくい坊に向かって、「くい坊さん、お願いですからマモ村に帰ってきてくださいっ。くい坊さんはその男に弄ばれていますっ。我々マモ族にも誇りがあることを忘れないでください」と訴えた。くい坊は聡明の言葉に心を痛めた。もしマモ村に戻ってしまったら、狭い巣穴で鷹や狐に怯える生活に逆戻りだ。それに丸くて固い食べ物も食べられなくなってしまう。そう思うとこの男から離れる決心が揺らいだ。「くい坊さんっ、目を覚ましてくださいっ」聡明の叫び声を聞きながら、くい坊は飼い主の男に背中を押されて家の中へ入っていった。

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