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マモの剣-第一章 マモ族の目覚め-第五部-箱罠-

 翌日、ブローカーは、せんべいを入れた檻の罠を食いしん坊五人組の巣穴近くに置いて帰った。次の日の朝早く、くい坊が草を食べようと巣穴から外を覗くと、何やら四角い箱が置いてあることに気付いた。目を凝らしてよく見ると箱の中に丸いものが置いてある。「あっ、あの丸くて固い食べ物だっ、俺が夢にまで見たっ」とくい坊は興奮した。しかし、見張り隊三匹が朝から見張りに立っている。今日は、見張り隊三匹のうち、隊長であるキッキも厳しい目で見張っていた。キッキも四角い箱に気付いて近づいていった。すると、箱の中に丸い食べ物が置いてある。「これは人間が我々に与えている食べ物だ。なんでこんなところに置いてあるんだろう」と不思議そうに見つめていた。それを見ていたくい坊はキッキが丸くて固い食べ物を横取りするつもりなのではないかと冷や冷やしていた。「もう1週間以上もあの食べ物を食べていない。最近は食いもんを持ってくる人間も減ってきている。この機会を逃したら二度とあの丸くて固い食べ物にありつけないかもしれないっ」くい坊は居ても立っても居られなくなり、四角い箱の中に入ってある丸くて固い食べ物目指して走りだした。それに気づいたキッキがくい坊を制止しようと両手を広げて立ちはだかったが、くい坊の勢いはすさまじく、キッキは空高く跳ね飛ばされてしまった。キッキは地面に強く叩きつけられたが、隊長に任命してくれた長老のためにもなんとしてでもくい坊を制止しなければいけないと思い、すぐに立ち上がりくい坊を追いかけて走った。くい坊が四角い箱の中に入ろうとした瞬間、キッキがくい坊の背中に飛び乗った。くい坊はキッキの重みで足がもたつき、よろけながらキッキと一緒に転げるように檻の中に入っていった。くい坊はキッキを振り払い、檻の奥に置いてある丸くて固い食べ物に手を伸ばした。キッキは丸くて固い食べ物に白い糸が巻き付けてあることに気付いた。「くい坊さんっその食べ物は罠ですっ」とキッキが叫んだ瞬間、檻の入り口の扉がガシャンと音を立てて閉まった。くい坊は何が起こったか分からず、丸くて固い食べ物を手に持ったまま呆然と立ち尽くしていた。キッキは直ぐにキーッと鳴き声を上げて、見張り隊を呼んだ。他二匹の見張り隊員がキッキの鳴き声に反応し檻に駆け寄ってきた。キッキはこの状況を急いで長老に伝えるように頼んだ。くい坊は丸くて固い食べ物を見つめながらうなだれていた。キッキはくい坊の側に寄って、「見張り隊に助けを求めたので直ぐにみんなが助けに来てくれます。その丸くて固い食べ物はくい坊さんの好物なんですね。こうなってしまったからには仕方がないので、その食べ物を食べてください」とくい坊に言った。くい坊は「すまない」と一言だけ言って、ボリボリと食べ始めた。くい坊の目には涙が溢れていた。キッキは檻の柵を両手でしっかりと掴みながら草原を見つめ助けが来るのを待っていた。

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