健忘録【16】

もちろん、理学療法士さんもめちゃくちゃ素晴らしい方で、かなり色々やりたいことをやらせてくれたし、色々なところへ連れて行ってくれた。

そうやって、どんどん楽しく体力も身体的機能も回復していったのである。

当然、病院ではリハビリ自主トレ漬けの毎日。

皆さんとっても親切で、病棟の外でも、看護師さんは積極的にリハビリに付き合ってくれていた。

いや~、本当。

私は元来探検好きなんです。

ということで、看護師さんと一緒に、自分の入院していない病棟やら、中から抜け道がある隣接した建物とか、めちゃくちゃ色々なところへと連れて行ってもらった。

私が、無理に連れまわしていたのかな?

とはいえ、皆和気あいあいとした雰囲気で、快くリハビリに付き合って、病院のあっちゃこっちゃの探索をさせてくれていた。

中でも記憶に新しいのは、ホスピス病棟を通り過ぎた時の記憶だ。

当時は、まだ緩和ケアという名前だったのかな?

案外普通の建物の中に、入口に病棟名が書かれただけの普通の入り口。

他の病棟のように、エレベーターで昇ったところが直ぐスタッフステーションで、そのまま病室が並んでいる状態ではなかった。

看板は壁にあったが、そこにはエレベーターがあったんじゃなかったっけ?

そのエレベーターに乗ったことはない。

私は、元々の学校の授業や家族や友人の死の影響だろうか?

自分も生死を彷徨うような過激な体験を乗り越えた後だ。

終末期というものは、いずれは自分にも起こる事象だと認識しつつ、今の自分は治療で良くなる方法が分かったから、直ぐにそうならないとも心の半分は安堵もしていたのかもしれない。

「もし、自分がそういう状況になったら、(めちゃくちゃお世話になっているし、良くしてもらっている)ここのホスピスが良いな」とふと口にした。

思いがけない言葉が返ってきた。

「ここのホスピスはやめた方がいいよ。」

その真意は分からない。

普通に、死闘を繰り広げて、目まぐるしい回復を遂げている最中に、そんな縁起でもないこと考えない方がいいよ、という意図だったのかもしれない。

話しがそれたが、リハビリに戻ろう。

ホスピス病棟の看板は、他とは違い、レンガ造りの壁に埋め込まれた白っぽいタイルっぽい作り(のような朧げな記憶……)

長い廊下を歩き、大きな柱を通り過ぎ、入院中の病棟に戻ってきた。

どれくらい歩いていたのだろう?

徒歩で別の病棟に行って、行った先で色々な所を歩いて、元居た病室に戻ってくる。

この時、階段ではなく、エレベーターで高層階の病室に戻ってきたんじゃなかったかな?

(笑)

いや~、本当、よく毎日のように色々な所に行くリハビリに付き合ってくれたよなぁ~。

穏やかで、優しくて、心温まるエピソードしか覚えていない。

健康な頃には、正直気にも留めなかった世界の光景が、物凄く心躍る美しい光景に変貌している。

だから、闘病自体は過去で一番肉体的苦痛は強かったけれども、この入院自体を記憶から消したいとか、そもそもなかったことにしたいと願ったことは一度もない。

そりゃぁね、健康な毎日を送る中で、同じようなことを学ぶことができたら、それに越したことはない。

むしろ、健康なまま向上できることほどありがたいことはない。

それでも、あまりにも人の優しさに触れたこの入院期間は、いかなる肉体的苦痛を伴っていようが、自分に必要な経験であり、自分を成長させてくれ、世界の美しさを今までにない程鮮明に自覚できるチャンスを与えてくれた、神様からの不思議なプレゼントだったと……そう、思わずにはいられない。

この時の体験を思い出すと、なんだか頑張るエネルギーが漲ってくる。

ありがとう。

(もうちょい続きます。この後のエピソードもよろしくね)

今を大切に生きよう~!

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