リンパ芽球性リンパ腫・白血病(-3)〜予兆に気がつく前 part2〜

遠い異国の地でのできごと。これが、事実かフィクションかは、読者の皆さんの判断に委ねます。

オペ前に皆で使うロッカーに院内のドアを出入りするための鍵も靴も服もロッカーにおいてきている。MRSA(多剤耐性菌)保菌者の手術で手術フロアの一角が隔離された影響で、ロッカールームに入れなくなってしまった。


友人や同僚に連絡して、ロッカーに入れてもらうことも考えたが、電話もロッカーに置いて来てしまった。


肝心のロッカールームには、その中に置いてきた電子キーがないと入れない😱


平時であれば、病院なのだから、その辺にいくらでもスタッフがいる。


しかし、もう、最後のオペが通常よりも遅く終わってから時間も経っている。「誰もいないんじゃない?」と思う私。


案の定、廊下に出ても誰もいない……


病棟に上がったが、全然誰もいない😱


内心青ざめた。


寮までは徒歩30秒程度とはいえ、コンクリート造りの車も通る外部の地面だ。ガラス片等が落ちていないとも限らない。靴を履かずに靴下だけで歩くのは、できれば避けたい。帰れても、翌日靴下か素足で出勤するのも非現実的だ。


携帯も、当然ロッカーの中で連絡手段が💦…… 病棟の普段医師が揃って作業をする一室を覗くも、帰宅後の皆の院内連絡用のPHSはの充電器に刺さって置かれている。誰とも連絡は取れなそうだ……


加えて、オペ後半からやけに腰が痛くて、脚も痛い。深部の異様な激しい痛みは、立ってるのも火を吹くくらいに痛くて内心ヒーヒーいっている。帰りたいよ〜。


頭を抱えながら、トボトボと誰かに出くわすことを祈りながら、万が一何か落ちていても足に刺さらないようにつま先立ちで足元を見ながら、慎重に廊下をロッカーに向かって靴下で歩いている。すると、オペ室と繋がっているリカバリールーム(術後回復室)の麻酔科医が声をかけてくれた。


麻酔科医「アレ? 最後のオペが終わってしばらく経つのに、まだ帰らないの? 働き者だね~。でも、休むのも大事よ😉」


天からの黄金の光を帯びた使者と遭遇したかのような心境で、私は麻酔科医の存在と日頃の自分の仕事ぶりに好感を持って見守ってくれていたことに感謝した。


おそらくは、目が尋常でなく見開き、一瞬で輝きを発したことだろう。


自分自身でも、自らの口角が両端に引き伸ばされながら上がっていく様子が感じられる。


私「お疲れ様です✨実は、MRSAの横隔膜ヘルニアのオペに入ってて💦ロッカーの鍵をロッカーに置いて来たから、締め出されちゃって困ってるんです😭」


麻酔科医「あ〜、アレに入ってたのね。ロッカーの鍵は常に手術着のポケットに入れて持ち歩いておかないとダメよ😉 私の鍵貸してあげるから、準備ができたら返してちょうだい。まだ、しばらくいるから、ゆっくり仕度して大丈夫よ。」


自宅の鍵も、車の鍵も付いていそうな大きな鍵の束を持針器(へガール)の持ち穴をキーホルダーのようにして付けている。


それを受け取り、その優しさに感謝しつつ、自分がそんなに大切なものを委ねられるほど信頼してもらえてることに驚きと喜びを感じる。


こうして、朝のオペに加えて7時間のオペを行い、病院をオペ着に靴下という異様な格好で、足に何か刺さらないように慎重につま先立ちで這えずり回った末に、ようやく普段着と自分の靴に再会できた。


とっても親切な麻酔科医のご厚意で貸していただいた鍵を一刻も早く返しに帰らねばという使命感というか、感謝を迅速な行動で返したい想いに突き動かされていた。


ロッカーのベンチが魅力的に誘惑してくるが、一度でも腰を下ろしたら最後、その日再び立って寮の一室に帰れなくなりそうだった。


急いで好意的なその麻酔科医に鍵を返しに速歩きでリカバリー室と非清潔区域を繋ぐカウンターのようなエリアに向かう。


私「ありがとうございました😊🙇☺️」


麻酔科医「あら、随分と早かったわね。そんなに急がなくても良かったのに。」


私「鍵、本当にありがとうございます!凄く助かりました!」


麻酔科医「いえいえ、当然のことをしたまでよ。困った時はお互い様じゃない。」


こうして、長い一日を終えて病院を出て、早速目の前の寮の自室までようやくたどり着けた。


窓際の左角に置かれたクッション性の低いソファーチェアに腰を下ろしたら、体の下半分の激痛でたった1、2mも離れていないであろう自室内の洗面所で手を洗うことすらできなくなった。


動けない……


立つことすらできない……


結構迷ったあげく、友人に夕食の調達をお願いできるかSMSを出そうと決意し、携帯を手に取った瞬間に友人からのメッセージが届いた。



友人「オペで疲れて動けないんじゃない? ケバブ買ってきてあげようか?」と以心伝心のようなタイミングでオファーが届いた。


「ありがとう😊😭😊」と感謝のメッセージと共に、ぜひとも夕食の調達をお願いしたい旨を伝えた瞬間、再び携帯が鳴った。


そのSMSを送信した直後、別の同僚も夕食調達を買ってでてくれたのだ😊


どうやら、私の株は上がっており、結構周囲が優しく色々と声をかけてくれる輪が広がっているよう。


痛みも消し飛んだ😊と言いたいところだが、やはり痛みと尋常じゃない疲労感でソファーチェアに根を張ったかのように、全く動くことができなかった……


この時は、長丁場のオペだったし、一ヶ月の休暇で体が訛っていたから、今まで以上に身体的インパクトが強いのだろうと自分で勝手に納得していた…… 元々、持病による痛みも相当で、寛解時でも急な疲労ではこれくらい痛くなるもんなのかな? と…… きっと、何でもないのだと自分の中で納得していた。自分で自分に言い聞かせていたのかもしれない。


ケバブを持った友人が私の寮のドアを叩いた。


私はやはり痛みで立ち上がれず、「鍵空いてるよ〜〜〜。ひゃ〜今日はハードだった。もう立てないよ〜🤣🤣🤣」と自嘲気味に笑いながらソファーチェアに座ったまま歓迎した。


友人も私も現状に爆笑。長身で普段茶髪に染めてる友人だが、生え際から地毛の金髪が顔を出している。澄み切った青い目のBMIが平均強くらいで身長175cmくらいの友人はあまりの笑顔に顔をクシャクシャにして、真っ白な歯を顔の端から端までニッと見せている。その顔の高さまで上げた合わせた両手には、誕生日プレゼントかのように、近くで買ってくれたケバブの入った薄すぎて半透明気味の近い白のビニール袋をゆらゆら面前で楽しそうに振られている。子供が絶対に喜ぶと確信して、イタズラ心を垣間見せながら子供にプレゼントだと言わずに誕生日プレゼントを渡そうと企む、久々に会う親戚のような格好をして、笑顔には喜びが織り混ざる。大事にそのプレゼント風に揺れる袋を両手から右手に持ち替え、力強い歩行でそっと突進するかのように入室してくれた。


友人「ここのケバブ美味しんだから〜」🤣🤣🤣 と。


続きは次話をお楽しみに〜


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