フォローしませんか?
シェア
唐仁原昌子
2024年5月26日 19:09
「いいですか、きみ。よく聞くがいいよ」 不意にどこからかそんな声が聞こえて、その声の持つ緊張に、私は思わず微睡から身を起こす。 ぐるりと部屋を見渡して声の主を探すけれど、この部屋には自分以外誰もいない。そっとスマホの画面をつけて、時間を確認した。 十五時過ぎを示している、その画面の明るさとは裏腹に周囲は随分と薄暗い。 大学の授業の空き時間に、使われていない教室でうたた寝をしていた。
2024年1月28日 22:00
いつからここにいたのか、それも定かではない。 気がついたら俺は「ここ」にいて、「ここ」で生きていた。 朝、行き来する車の音で目が覚める。 アレがなかなか危険なものだということを知ったのは、数年前に仲間がぶつかって二度と動かなくなったのを見たときだろうか。 どうせ今起き出しても、半端ものの俺がありつける食べ物はない。 一度だけ、ぐっと前脚を伸ばしてからまた丸くなる。 ブランコと人間
2024年1月21日 23:03
その日、家の近くの公園まで帰ってきた頃には、二十三時を過ぎていた。 昼間の賑やかさを忘れたかのように、しんと静まり返った夜の公園。 大通りからは一本ずれた道にあるため、車もそんなに通らないし、時間も時間なので人通りもほぼない。 普段は猫の多い公園なのだが、もうその姿も一匹として見当たらない。 ぼんやり歩く道すがら、思わず公園の中を見たのは、キイキイと規則的な懐かしい音が聞こえたからだ