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唐仁原昌子
2024年3月31日 19:35
三月の終わり、ぬるい春の日。 私は、今か今かと時計を見つめる。 ジリジリと進む秒針が、私の視線の熱で溶けて出す…なんてつまらない妄想をしながら、時が過ぎるのをじっと待つ。 しばらくして、待ち焦がれたチャイムが鳴る。教壇で先生が何かを言う。それを聞いたクラスメイトたちがどっと笑う。 いつもの空気、いつもの教室。 掃除のために机を動かす音、椅子を引いて立ち上がる音。誰かの笑い声に、
2023年6月11日 18:59
ついさっき、怪我をした。数年ぶりの怪我らしい怪我で、あまりに久しぶりに自分の血を見たものだから、必要以上に驚いた。怪我らしい怪我とは言ったものの、実際別に大したものではない。ハサミを使っていたときに、少し手元が狂って左手の指先を切った程度のものだ。止血をするために、右手で切った指の付け根をぎゅっと抑える。ぐっと力が入ったことで、傷口の近くに集まっていた血がわっと盛り上がる。それは
2023年4月9日 22:56
気持ちが落ち着かないときは、よく海辺のベンチに行った。特に深い意味があるわけではない。ただ、もう何年も続けていて、実際そうすると気持ちがだんだん落ち着いてくるから私には合っているのだと思う。世にいう「自分ルール」というものだ。その日の私は、朝からひどい気分だった。遠方に住む祖父が亡くなったという連絡を受けた私は、何だか気持ちが落ち着かなくてとりあえず海へ向かった。亡くなったのは明け方で