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唐仁原昌子
2024年8月25日 21:05
一日の終わり。 眠る前に、壁にかけたカレンダーにペンでバツ印を書き込む。 この夏休みが始まってから毎日、今までしたことのない何かをしてみようと思い立って、気まぐれに始めた習慣だ。 一日一日、着実に休みが過ぎていく様子が目に見える。 うまく説明はできないけれど、「今日」という日の終わりを自分で決められるような感覚がしてなかなか良い。 誰かに決められて終わるわけでも、時間に追われて気
2024年7月28日 20:59
「海の底って、簡単にはいけないのかな」「どうだろうね」 そもそも海の底って、いったいどこを示すものなのと、私はさっきまで包まっていたタオルケットを握ったまま続ける。「確かに。うーん、ただ見るだけなら、浅瀬に行けば濡れなくても見えるか」「なに、海の底に用事があるの」「ちょっと見てみたい気分なだけ」 ついさっき仕事を休むと決めたチイちゃんは、テキパキとその連絡を済ませて本当に今日一日
2024年7月14日 22:22
授業中、気まぐれに筆箱の中を探ると、コロンとした球体が出てきた。 それは何の変哲もない、淡い水色のビー玉。 そうだ、すっかり忘れていた。 消しゴムのカスや、筆箱の糸くずがついているそれに、ふうと息を吹きかける。 私の吐息でふわっと曇ったそれを、指の腹でぎゅっと擦る。そうすると、あっという間にそのガラスの球体は「透明」を取り戻す。 これは二週間ほど前に、隣の席だった松井さんがくれ
2023年7月30日 22:30
俺は、あの子のことをほぼ何も知らない。 知っているのはその名前と、俺と同じクラスで物静かなタイプであるということと…あと、笑った顔が可愛いということくらいだ。 そもそもクラスの中で、接点の少ないタイプなのだ。俺はうるさくて声もでかい。あの子の声をきちんと聞くには、俺のいる環境は騒がしすぎる。あの子は多分、俺みたいな人間は苦手だと思う。 まさに、俺とは真逆のような落ち着いた人で、だからこそ
2023年7月23日 22:25
私は、彼のことをほぼ何も知らない。 知っているのはその名前と、私と同じクラスでいつも騒がしい人たちの中にいるということと…あと、よく笑っているということくらいだ。 そもそも人生において接点のないタイプなのだ。私は日陰を好んで歩くタイプ、あの人は堂々と日向を歩くタイプだ。 まさに、私とは真逆のような人生を生きている。 私の中にある、山村くんの情報はそんな具合だった。 そんな人が、いま