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唐仁原昌子
2023年9月24日 19:16
生きていたら、ボタンの掛け違えのようなことはわりとあって、気づいたタイミング次第で、もうはどうしようもなくなっていることもある。 早めに気づくことができたら、全部外してもう一度正しく掛け直すことができる。 でも、気がつくのが遅れたら、これまで掛けてきた労力次第では、全部外してまた掛け直すという事実に心が折れてしまう。 それで、結局ちぐはぐなまま生きていく…。 私はいつもいろんなことに
2023年9月17日 22:30
「もし、明日死ぬって言われたらどうする?」「何だよ急に」 ついさっきまで、明日のテストが嫌だと騒いでいた塩谷は、机に突っ伏したまま顔だけこちらに向けて、妙にキラキラした眼差しでそう聞いてきた。「いいから。どうする?」「どうもしねえよ」「えっ」 信じられないというような顔で、塩谷は続ける。「明日だよ?もう死んじゃう、何もできないってなっちゃうのに、何もしないの」「多分、何もし
2023年9月10日 21:10
──俺は、花の名前を全く知らない。 いや、全くは言い過ぎか。 タンポポとかサクラとか、ヒマワリくらいは認識している。あとは大きく「花」という括りで認識していて、不自由することなく生きてきた。 そんな俺が、花屋の前にいる理由は他でもない。夏風邪で寝込んでいるばあちゃんに、花でも買って行ってやれという、気まぐれな親父直々の命令が下ったからだった。 親父には昔から頭が上がらない。一応「ええ
2023年9月3日 22:12
あまり人が来ない、校舎の南館。 4階にひっそりある非常階段。 屋上に繋がる、唯一の階段だ。 学校の中で、空に一番近い場所へ繋がる鉄製の重い扉は、安全上の問題とやらでしっかりと鍵が掛けられている。確かに、しっかり掛けられているように見える…パッと見た感じは。 実のところ鍵は壊れていて、屋上に出ることは難しくない。見た目は立派な錠前が付いているものだから、これは開けようとした者しか気が