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風のシャワー

自由なんだと思った、私も。
怖いなと思ってしまうのは、知らぬ間に様々な制約に縛られていたから。確かにそれは秩序を守るために必要だ。でも、誰にも迷惑をかけないなら、一人でいる時くらい、それを忘れてあるがままに居ていいんじゃないかと思う。


やり始める時が一番労力を使う。
特に冬は外に出るのが億劫だと思う。けれど犬の散歩の為に必ず出なくてはならない。そう思って外に出てみたら、意外と楽しいのだった。思っていたほど寒くないし、むしろ心地良い。つんざくような風なら更に嫌になるかもしれないが、そうではなかった。それに、上を見たら青いキャンバスが広がっていた。左を見ると、もう夕陽が沈みかけているのが分かる。目の前にある植物は、昼間見たように輝いてはいなくて、思わず切なさが込み上げてくるような、振り絞った光があった。でもそんな貴方も綺麗だね。
そう思って前を見たら、愛犬の気分が急に良くなったようで、いきなり走り出した。私もつられて走り出した。はぁ、と息を出した。そこで白い息が出るのを期待していたが出なかった。

私はまた空を仰いだ。そうして思う、あぁ、この時間の雲が一番好きだ。私は単純な人間なのかもしれない、混色の中で紫を作る工程が一番好きだ。他にももっと綺麗な色はあるし、平凡に見えるかもしれないが、なんだか楽しいと思うのだ。だからだろう、この夕陽が沈みかけた時間帯に見える、ピンク寄りの赤と、青と、それらが混ざった紫、このグラデーションに染まった雲があって、私はその雲が一番好きなのだ。見るといつも全身が奮い立ってしまうほど。

そうして犬の散歩が終わり、家に帰る。私はまだ名残惜しくて一人で散歩に行くことにした。歩くのもいいけれど、なんだか颯爽したい気分だったので自転車で。家から一番近いコンビニを目指して自転車を漕いでいた。
バイト帰りにもこの道を通る。そこにはいくつか抜け道があった。この曲がり角の先にはどんな道があるんだろう、いつも通るたびに思う。けれどその好奇心よりも疲労に負けて、なんだかんだその道を通ったことがない。今日もまたその好奇心が湧いてきた。そうだ、行ってみようと思った。
そうして曲がったけれど、肝心の景色は楽しんでいなかった。それよりも私はぐるぐる考えを巡らして、時々上を見上げて、雲の色の変化を楽しんでいた。
そして帰路に向かう道の途中、私は懲りずにまた空を見ていた。そうしたら今度は、ブルーベリー色に空が染まっていることに気がついた。雲ではなく空が。肝心の雲はちゃんと見ていなかった。笑
さっきまであった赤色はすっかり消えていて、そこには青とブルーベリーしかなかった。
ベリー類は全て美味しそうに見せてくれる。ラズベリー、ストロベリー、そしてブルーベリー、それらがあるだけでパッと華やかさが増す。
頭にブルーベリーを思い浮かべていたら、なんだか甘いものが食べたくなってきた。だからだろう、コンビニで買って飲んだカフェオレは、いつもよりも美味しく感じたのだった。




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