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【考察】生きづらい性格は変わらないから仮面を被るしかないし、仮面を被るとリア充だと思われる:『勝手にふるえてろ』(大九明子)

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しんどいのに仮面を被って生きている人はたくさんいるし、私はそういう人のことが好きだ

もの凄く良い映画でした。

私は、女優・松岡茉優も好きですし、彼女が演じる江藤良香というキャラクターもとても好きです。だから、この映画がとても良く感じられるのかもしれません。

普段から色んな映画を見ていますが、この映画を観た時のようなウキウキとテンションが上がる感覚は、なかなか感じられないと思います。

リア充として生きられそうなのに、生きるのが辛い系の人

私はこれまで、「リア充として生きられそうなのに、生きるのが辛い系の人」に結構会ってきたと思います。

そういう人は、パッと見の印象では、失礼ながら「人生楽しく生きられそうな人だな」と感じます。好かれそうな容姿で、周りの人と楽しそうに喋っていて、なんなら場の中心にいるとさえ感じる人です。深く関わることがなければ、そのまま「リア充」だと判断してしまうでしょう。

しかし、そういう人が実は、生きづらさやしんどさを抱えていたりするのだと、様々な人と関わる中で理解するようになっていきました。

私は普段から、「どんな話をしてもらっても大丈夫」という雰囲気を出しているつもりです。だから、年下の女性から当然のように「生理」の話が出てきたりします。私の方から聞いているわけではなく、話の流れの中で普通に話題として出てくるのです。それは、私が意識して「どんな話をしてもらっても大丈夫」という雰囲気を出しているからだ、と自分では思っています。

そしてだからこそ、普段は仮面を被って世間と向き合っている人たちの本音を聞けることがあるのです。

私が20代の頃に一緒に働いていた女性のことは、今でも印象的に覚えています。彼女はすごく「リア充」っぽい、日々楽しそうに生きている感じの女の子でしたが、話してみると、かなりマイナス思考で自己肯定感が低いのです。「毎日死にたいと思っている」と話していて、「遺書を書いたことがある」という点で私と共通するような感じでした。

また、同じ頃出会った別の女性が、「異性から告白されたことがあるか?」という話題の際、非常に印象的なことを言っていたことを思い出します。彼女は、「私は自分のことが好きじゃないし、ろくでもない人間だ。そんなろくでもない人間を好きだと言ってくる奴は頭がおかしいんだから、そんな人のことを好きになれるはずがない」と言っていました。後にこういう感覚には「蛙化現象」という名前がついていることを知ったのですが、彼女の話を聞いた時には本当に驚きました。彼女もまた「リア充」側の人に見えたからです。

また別の機会に、その女性の「ろくでもない人間のことを好きだと言う人間はろくでもないから好きになれない」という話を別の女性にしてみたところ、彼女は「それは私が7年掛けてたどり着いた結論だ」と至極共感していました。

この映画の主人公である江藤良香も、似たようなタイプの女性です。

私ごときが求め過ぎちゃダメなんですよね。手の届かないものばっかり欲しがって。本能のままに生きるなんて野蛮。

そう初めてあの時自分から話しかけちゃったんですよ。あぁ本能側の人間に成り下がっちゃったって。

ナチュラルにこういうことを考えているのです。

この映画には原作があり、江藤良香が原作でどのような設定になっているのか私は知りません。ただ、映画では松岡茉優が演じており、見た目だけで言えば否応なしに「リア充感」が溢れ出てしまいます。そしてそんな女性が自分を卑下するような言葉を口にするのです。

「リア充として生きられそうなのに、生きるのが辛い系の人」の存在を知らない人には嘘っぽく感じられる設定かもしれませんが、私は、江藤良香みたいな人いるよなぁ、ととてもリアルに感じさせられました。

「リア充として生きられそうなのに、生きるのが辛い系の人」は外見では分からない

「リア充」に見えるのだから当然ですが、「リア充として生きられそうなのに、生きるのが辛い系の人」は、なかなか外から見ているだけではそうとは判断できません。

誰もが「他人からの見られ方のイメージに合わせた振る舞いをしてしまう」という経験があるのではないでしょうか。最近では、「男だから」「女だから」みたいなイメージからは大分解放されるようになったと思いますが、「優しそう」「モテそう」「お金持ってそう」みたいな見られ方に合わせた振る舞いをしてしまうことはあるのではないかと思います。

突然話は変わりますが、私は黒髪の女性が好きです。で、ある女性に昔そういう話をした時に、彼女が「髪の毛を少し茶色にするのは、世間に馴染むためだ」みたいなことを言っていて面白いと感じたことがあります。黒髪のままだと、「頑固そう」「意思が強そう」と思われることが多く、そういうイメージを嫌う人は少し髪を明るくするのだ、とのことでした。

「リア充として生きられそうなのに、生きるのが辛い系の人」は、「リア充っぽい」と見られてしまうが故に、そのイメージから外れるような振る舞いをすると「違和感」を持たれてしまうでしょう。実際に女性からそういう話を聞いたこともあります。「髪を茶色にする」みたいに何らかの方法で「リア充感」を減らせればいいですが、それも難しいでしょう。

だから、無理のない範囲でイメージに合わせた振る舞いをするしかありません。そして、そうであればあるほど「リア充感」は増すことになるので、やはりそのイメージから逃れられなくなります。

だから外から見るだけではなかなか判断ができません。

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