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【驚愕】キューバ危機の裏側を描くスパイ映画『クーリエ』。核戦争を回避させた民間人の衝撃の実話:『クーリエ:最高機密の運び屋』

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キューバ危機を背景に、1人の民間人が、大げさではなく「世界を救った」信じがたい実話に驚かされる

元々歴史に詳しくない人間なので、ただ私が知らなかっただけかもしれないが、「キューバ危機」という歴史上でも相当大きな出来事の裏で、1人の民間人が世界を救うために極限の奮闘をしていたという事実に驚かされてしまった。

「個人の決断が世界の命運を左右する」という点だけ捉えれば、まさに「セカイ系」としか言いようがない状況だ。一民間人に過ぎない人物が、ソ連から持ち出した機密情報はなんと5000を超え、「史上最も価値のある情報」とまで言われている。普通に考えれば、少し前まで「一般市民」でしかなかった人物が背負えるようなものではない。彼が与えられた任務を見事に全うしてくれたお陰で、私たちは「キューバ危機が回避された世界」に生きていられるのである。

偶然とはいえ、歴史の裏舞台で暗躍することになってしまった民間人の奮闘を、ベネディクト・カンバーバッチが演じる見事な作品だ。

映画の内容紹介

物語は、モスクワを訪れたアメリカ人観光客が、見知らぬ人物から「これをアメリカ大使館に届けてくれ」とメッセージを託されるところから始まる。

その情報は、アメリカのCIAに届いた。CIAに所属するヘレンがイギリスのMI6を訪れ、協力を要請する。アメリカ人観光客にメッセージを託した人物は、モスクワ科学委員会の高官オレグ・ペンコフスキーだった。彼はGRU(ソ連軍参謀本部情報総局)の大佐でもあり、ソ連の核兵器の状況にも詳しい。そして、「フルシチョフのような衝動的な人物が核のボタンを持っていることに対する危機感」から、ソ連の核開発の情報を西側に伝えたいと希望している。

CIAにはそれまで、ポポフ少佐という情報提供者がいたのだが、連絡が取れなくなっていた。CIAの預かり知らぬことではあるが、彼はスパイだとバレて処刑されてしまっていたのだ。そんなこともあり、CIAはMI6と連携して動くことを提案する。

MI6はさっそくペンコフスキーと接触しようと考えるのだが、ヘレンが待ったを掛けた。我々のような”プロ”ではなく、大使館とは無関係で、KGBに注目されるはずのない人物に任せる方がいいのではないか、と考えたのだ。

この提案が、1人の民間人の命運を左右することとなる。

グレヴィル・ウィンは、わざとゴルフに負けて商談を成立させ、そのことを妻に愚痴る、どこにでもいるようなセールスマンだった。しかしある日そんな彼の元に、官公庁の人間を装ってCIAとMI6が接触してくる。そしてグレヴィルは、スパイの打診を受けることとなった。ただし、具体的なミッションは知らされていない。「知らない方が身のため」と言うのだ。グレヴィルが求められたことはただ1つ、「ソ連に赴き、いつも通りセールスを切り開け」である。

状況は諜報機関によって整えられていた。グレヴィルがソ連の科学委員会で商談のためのプレゼンをすると、ペンコフスキーが話しかけてきたのだ。どうやら、諜報機関の面々から渡されたタイピンを見て判断したようである。こうして2人は自然な成り行きで接触を果たし、その後ペンコフスキーは疑われずに渡英を果たす。ここからは諜報機関の仕事であり、ペンコフスキーをイギリスに連れてきた時点でグレヴィルの仕事は終わり……のはずだった。

どうやらグレヴィルはペンコフスキーから気に入られたようだ。彼の知らないところで、ペンコフスキーが盗み出した機密情報をグレヴィルに持ち帰ってほしいという話になっていた。もちろんグレヴィルは、そんな重責を担えないと固辞する。しかしそのやり取りの中で、ヘレンから「4分前警告は嘘よ」と聞かされた。

核兵器が発射される4分前に警告がなされる、と言われている。けど、あなたの職場から自宅までどんなに急いでも10分。だから奥さんは家のシェルターに、子どもは学校のシェルターに逃げることになる。設計図を見たけど、どちらも核兵器に耐えられるような構造じゃない。
あなたは、繋がらない電話をずっと掛け続けるか、あるいは「この事態を回避できるチャンスがあった」と悔やむか。

要するに、「あなたが今ここで下りたら、核戦争が起こるかもしれない。そうなった時、あなたは後悔せずにいられる?」と聞いているのだ。グレヴィルは当然「脅すのか」と言って憤慨するが、最終的にはその役割を引き受ける決断をする。

民間人に課すにはあまりに重い責任をグレヴィルが見事全うしたことで、ソ連がキューバに核兵器の発射場を建設しようとしている事実が判明する。世界中が核戦争の危機を実感して緊張する中、ペンコフスキーとグレヴィルが命懸けで持ち出した情報によって「キューバ危機」はすんでのところで回避されるのだが……。

映画の感想

全体的には非常にシリアスな物語なのだが、状況的に許容されるだろう場面では、可能な限り明るい雰囲気で描きだそうとしているので、硬軟のバランスが良い映画だと感じた。特に劇中で流れる音楽は非常にポップだ。とにかく緊迫感溢れる作品だが、張り詰めっぱなしというわけでもなく、気軽に観ても楽しめる映画と言えるだろう。

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