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【天職】頑張っても報われない方へ。「自分で選び取る」のとは違う、正しい未来の進み方:『そのうちなんとかなるだろう』

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「自ら選ばない」生き方

自己啓発的な主張への違和感

私は、あまり自己啓発的な本を読みませんが、たまにそういう類の本を読むと違和感を覚えてしまうことが多くあります。その違和感を一言で説明すると、

「どうして【それ】が成功の鍵だと思ったのか?」が説明されない

ということになります。

例えば、「学校の成績が急上昇した」とします。この時、

「勉強時間を2倍に増やしたから成績が上がった」

という主張は理解しやすいでしょう。あるいは、

「朝ごはんを食べるようになったから成績が上がった」

という主張も、まあ納得感があるかもしれません。しかし、

「赤い下着を履いているから成績が上がった」

という主張はどうでしょう? 多くの人が「そんなわけないだろ」と感じるはずです。

しかしそもそも、効率の悪い勉強の仕方をしていれば、その時間を2倍に増やしたところで成績が上がるとは思えません。「勉強時間を2倍に増やしたから成績が上がった」という主張も、正しいかどうか分からないでしょう。

つまり私が言いたいのは、こういうことです。「学校の成績が急上昇した」という結果があった場合、我々はその原因を、「なんとなくの納得のしやすさ」で選んでいる、と。

「学校の成績が急上昇した」という期間に起こった変化というのは、実際には様々に存在するはずです。

・「隣の人が引っ越した」(騒音が減って勉強に集中できたのかもしれない)
・「毎日ガムを噛むようになった」(あごを動かすことで脳への刺激になったのかもしれない)
・「漫画『キングダム』を読み始めた」(それで歴史を理解できるようになったのかもしれない)
・「シャワーだけではなくて湯船に浸かるようになった」(血流の変化が良い影響を及ぼしたのかもしれない)

変化だけを取り出せば様々なものがあるはずなのに、その中から「変化の原因として納得しやすいもの」だけを選んでいる。私は自己啓発的な主張に対して、そう感じてしまうことが多くあります。

あなたは確かに成功したでしょう。そこには何らかの要因が当然あったのだと思います。しかし、あなたがそうだと思っている要因とは違う何かが強く影響している可能性は十分にあります。それなのになぜあなたは【それ】を成功の鍵だと考えているのでしょうか?

という疑問に対して明確に答えを出す自己啓発本は、ほとんどないと感じます。まあ当然ないでしょう。もしこの主張を厳密に行うとすれば、科学的な観点を取り入れた実験をしなければならないでしょうし、そんなこと、実人生においてできるはずがないからです。

自己啓発本を否定しているわけではありません。トップランナーがどういうタイミングで何を考えどう決断したのかという思考は興味深いことが多いですし、やはり、凄い人の経験や話は面白いものです。ただ、「◯◯したから成功した」「◯◯すれば上手くいく」というような主張は、基本的には眉唾で受け取るしかない、とも考えています。

自己啓発的ではない、内田樹の主張

そう考えた時、内田樹の主張は非常に面白いです。一般的な自己啓発本とは、まったく次元の違う話をするからです。

内田樹の主張の要点は、「自分で選択するな」ということになるでしょう。

流れに任せて、ご縁をたどって生きていたら、気がついたら「いるべきところ」にいて、適切な機会に過たず「なすべきこと」を果たしている。
そのことに事後的に気がつく。

本書を読んでも、「自分がどう行動すればいいか」についてはまったく分かりません。「こういう行動をすればいい」というような主張を、基本的にはしないからです。それは、自己啓発的な主張に慣れている人を戸惑わせるでしょう。「ん? じゃあどうすればいいの?」と感じるはずです。

しかし、そうい受け取り方は間違っています。

どんなとき、どんな場所でも、僕たち一人ひとりには、自分にできること、自分にしかできないことがあります。とりあえず、その場にいる他の誰もできないことが、自分にだけはできるということがある。
でも、ふつうはそれがなんだかはわからない。
修行を積むと、「今、ここでだと、私だけができること、他ならぬ私が最もそれに適した仕事がある」ということがわかるようになる。
そのときに、ふっとそれが「自分が前からずっとしたいと願っていたこと」のように思えてくる。
これが武運の勘所です

内田樹の主張は、「本来的に自己啓発本が必要な人間」には、上手く届くのではないかと私は考えています。

選ばない方が良い選択ができる

自己啓発本を実際に買っている人は、「自分の意思でバリバリ前進できるのだけれど、より良い道、より良い進み方があるのではないかと模索している人」が多いのではないでしょうか。そして、私の感触からすれば、そういう人は既に「啓発」されているので、自己啓発本なんか読まなくてもいいじゃないか、と思っています。

本来的に自己啓発的な主張を必要とする人というのは、私のように、自分の意思ではバリバリ前進できず、どうしても立ち止まってしまうことが多い人ではないでしょうか。そういう人こそ「啓発」してほしいものです。

これ以降は、ブログ「ルシルナ」でご覧いただけます

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