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【小説】日本の仔:第1話

【清水坂 孝】(量子科学技術研究開発機構) 「さあ、行こうか」  遂にこの時が来た。  数十年に亘る日本とEU諸国との国際研究と革新的な素材、機器開発により、実用核融合炉「JT-100」が試験運転の日を迎えたのだ。  この核融合炉が稼働すれば、従来のウランやプルトニウムによる核分裂炉発電所と同レベルの電力が、核燃料や核廃棄物の問題をほぼ起こさずに得られることになる。  燃料となるのは海水から取り出される重水素と、リチウムから炉内で作り出すトリチウム(三重水素)であり、放射レ

    • メガネ女子320

      • 【小説】日本の仔:第71話

         瑞希がコンタクトできるソマチットとは一体何なのだろう。  彼から述べられる話から判断すると、我々よりも科学的には先に行っている存在のようだが、実態は単細胞生物のようにシンプルな構造らしい。  普通に考えれば、生物は脳の重さに比例して複雑な思考が可能となるはずで、単細胞生物並みの微細構造では複雑な思考はできないと考えられているのだが。  となると、思考しているのは別次元や別の宇宙の存在で、たまたま物質化して目に見えているのが、あの単細胞生物ということなのだろうか。  そして

        • 【小説】日本の仔:第70話

          「ありがとうございます。では早速ご協力いただきたいのですが、先ほど会話に出てきた例のサービスとは何のことですか?」 「うわ、覚えとったか。参りよるなー...わしが言ったて内緒にしてくれるか?」 「もちろんです」  毛利は謎の調査サービス機関について話し始めた。  基本的には人探しのサービスだが、今まで何度か利用してきて、探し人が見つからなかったことはなかったという。現在の徳永秀康氏の居場所以外は。  ん?  ということは、例の魂とコンタクトを取れる能力者もそのサービスを使え

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        【小説】日本の仔:第1話

          【小説】日本の仔:第69話

          【鍊】(東京都内某病院)  徳永チルドレンの内、瑞希だけが無事で、果歩、茉莉、武蔵は意識不明で戻ってきた。  更に、エマとイーサンというアメリカの徳永アリスチルドレンまでもが意識不明で日本に運ばれ、全員がこの病院に秘密裏に入院して生命を維持している。  皆、深く眠っているだけの様に見えるが、瑞希がソマチットに聞いたところによると、魂が抜けてしまっていて、魂を月に迎えに行かなければならないという。  お伽話のようだが、あながち冗談とも思えない。  今、徳永秀康氏が月にいるの

          【小説】日本の仔:第69話

          【小説】日本の仔:第68話

           皆の身体の再構成には何日か掛かると言うことで、僕らは温泉の近くでキャンプをすることにした。  そして、ジュリアにはこれまでの間のアメリカの状況を聞かせてもらった。  アリスと徳永はその後、外惑星から資源を得る構想を立て、最初の中継基地となる月面基地の建設計画を立て、世界には公表しないまま既に月の裏側に基地を建設したらしい。  それで今、正に月面にいるということか。 「静、聞いてた?」  EPR通信で静に呼び掛けた。 「うん。多分そうかなと思って、月面まで行ける宇宙機を宇宙

          【小説】日本の仔:第68話

          【小説】日本の仔:第67話

           すぐに例の温泉が見えてきて、畔に着陸した。 「時子さん、それでどうすればいいの?」 「この辺りの土を掘って、皆を埋めてください」  え?まだ助けられるって言ったよね? 「大丈夫です。損傷したところを修復するだけです」  よく分からないけど、それで皆が助かるならばと、人が入れる程の穴を3つ掘り、武蔵、茉莉、果歩をその中に横たわらせた。 「瑞希さん、皆さんの外骨格と服は脱がせてください」  えー?!  後で果歩と茉莉に知られたら、絶対シバかれる...  でも生きるか死ぬかだ

          【小説】日本の仔:第67話

          【小説】日本の仔:第66話

          「諦めきれなかった私たちは、地球で生まれようとしていたある人間に使命を与えることにしたのよ。それが私たちの父と母」  そうか、それで徳永氏は地球をキレイにしようと色々な発明を続けてきたんだ。  でも、昔の人格に身体を乗っ取られて、元凶である人間を排除する形で地球をキレイにすることにしたということか。 「という訳で、父と母は地球をキレイにするために色々考えたのよ。でもあらゆる手段を取っても、人間がいる限り地球は以前の美しさを取り戻すことはできないと分かった」 「地球はもう君ら

          【小説】日本の仔:第66話

          【小説】日本の仔:第65話

           傘の代わりになる物については、墜とされた徳徳ドローンの残骸から装甲板を持ってきて、その上にたくさん石を載せてみた。  さすがに石は重いので、それほど多くは積めなかったから、これ以上の数のマイクロソフトブラックホールを撃ち込まれないことを祈るしかない。  ではフォーメーションを確認しよう。  右側面防御担当、武蔵。  左側面防御担当、茉莉。  上部防御状況確認担当、果歩。  下部攻撃兆し確認防御担当、時子さん。  下から攻撃されたら避けようがないから、時子さんが1/655

          【小説】日本の仔:第65話

          【小説】日本の仔:第64話

          【瑞希】  光子(ひかるこ)ちゃんて誰だ?  もしかして、時子さんの妹とか? 「光子は超強力な閃光弾だヨ」  静から期待外れの返答が来た。 「内蔵してる水素を核融合させて、瞬時に大量のガンマ線を放出させるんだけど、内部でガンマ線の振動数を落として、赤外線、可視光、紫外線を10秒間くらい出せるんだす。明るさは太陽の250倍!まともに見たらカメラでも壊れちゃうヨ」  何そのビッグバン直後の宇宙みたいな明るさ。 「武蔵の視力を活かして、光子が光ってる間に敵を制圧してちょ」  え

          【小説】日本の仔:第64話

          【小説】日本の仔:第63話

           いや、問題はそこじゃない、ドローン撃墜は罠だ! 「茉莉姉果歩姉、俺とシンクロして飛翔物を墜としつつ、前方へダッシュ!皆も続いてダッシュ!」 「どうしたの?」  瑞希兄が疑問顔をしている。 「いいから早く!」  恐らくドローン撃墜で脚を止めて、トンネルの側面からも含めて飽和攻撃が来る。  当然前方からも来るはずだ! 「茉莉姉頼む!」 「まかしとき!」  俺の視界を果歩姉を中継して茉莉姉に送る。  茉莉姉の速さなら、銃弾でも斬れるはず!  とその時、後ろから眩しい光が差し込

          【小説】日本の仔:第63話

          【小説】日本の仔:第62話

           弾着を確認した武蔵は、何事もなかったかのようにM107を片付け始めた。 「スゴいよ武蔵!さすがだね」 「それが俺の存在意義だからね。外したら終わりだ」  またクール武蔵になってる。  作戦が終わるまではしょうがないか。  無力化したSAM陣地に到着すると、敵のアンドロイドが6体ほど蹲って機能を停止していた。  それらは、例のイーサンとエマのような人間そっくりのアンドロイドではなく、無骨で知性を感じない外観のものだった。  AIも搭載されているようだけど、パーツを見る限りγ

          【小説】日本の仔:第62話

          【小説】日本の仔:第61話

           ブリーフィングを終えると、早速徳徳ドローンで基地に向け出発した。  途中、果歩からプライベート通信が入る。 「瑞希、その、何だ、まあ落ち込むなよ」  こういう時、隠し事ができないって辛い。 「傷口に塩を塗り込むのはやめて...」 「お前、自分では気付いてないと思うけど、どうも新たな恋が始まってるみたいだぞ」  え?どういうこと?  もしかして、知らない内に果歩を好きになってたとか? 「何でそう短絡的なんだ!ま、色々とよく思い出してみるんだな」  えー?誰のことを言ってるんだ

          【小説】日本の仔:第61話

          【小説】日本の仔:第60話

           翌朝、目が覚めるとテントの外がかなり明るくなっていた。これはもしかすると...  テントの外に出ると昨日まで降っていた雪が止んでいて、朝日が強烈に射し込んでいた。  降ったばかりの雪に朝日が当たって、キラキラ光ってる。  本当は今、とてつもなく寒いんだろうけど、外骨格のヒーターのおかげで、全く寒さを感じない。  日本を出発してから久し振りにお天道様を拝めた気がする。これは何かの前触れなのか?  夜の間は眠らなくてもいい時子さんが警戒をしてくれていたはずだけど、近くに見当たら

          【小説】日本の仔:第60話

          【小説】日本の仔:第59話

          【茉莉】  まさかこんなところで温泉に入れるとは思わなかった。  出発してからまともに身体を洗ってなかったから、スゴくありがたいわー。  外骨格を脱ぐと寒さが襲ってくる。急いでインナーを脱いで、温泉まで走り、湯加減を見ると、ちょっと熱いけど入れなくはなさそうだ。  岩場がいい感じの湯船みたいになってる。 「果歩姉、大丈夫そうだよ。先に入ってるね!」  ザブン!  おーっつつつ、熱ーい! 「あんたはホントに考えなしだね」  果歩姉が大量の雪をザブザブ入れてきた。  そうか

          【小説】日本の仔:第59話

          【小説】日本の仔:第58話

           次の日、早速シャイアン・マウンテン空軍基地に向かって出発しようとすると、アリアが付いて行きたいと言い出した。  基地に侵入するのなら、きっと役に立てるはずと、父親からもお願いされた。  かなり危険な旅になると告げたけど、僕をソマチットの王だと言って、連れていって欲しいと懇願してくる。  徳徳ドローンはもう一機あったから、連れて行けなくはないんだけど、彼女を守りながら戦うのは正直難しいと思う。 「基地に侵入するまででいいんです。あの基地はお伝えした通り入口は一つだけで、長い

          【小説】日本の仔:第58話