クマ

絵とか写真とか小説とか

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記事一覧

【小説】日本の仔:第82話

 静はいくら揺すっても起きなかったが、バイタルサインは正常値だったので、少し様子を見ることにした。 「ところで、23億6千万円の借金てどういうこと?」  さっきの父…

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1日前

【小説】日本の仔:第81話

【瑞希】  父さん②は自身の手首を擦りながら立ち上がり、 「お前ら、生き残れると思ったら大間違いだからな!」  と、ヤクザみたいな口振り。 「人間は一挙手一投足が…

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3日前

【小説】日本の仔:第80話

【鍊】  徳永チルドレンたちは遺伝的に特殊能力を持つことになったが、他の日本の子たちにはこんな能力は...  いや、そう言えば、日本の子には生まれる前に遺伝子操作が…

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6日前
1

【小説】日本の仔:第79話

 玲奈さんは手に持っていた金属製の箱を掲げて、床に置いた。 「この箱の中に入っているのは...」  気密性のありそうな蓋を開けると、え?、何これ?  カラフルな花み…

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8日前
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メガネ女子322

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11日前

【小説】日本の仔:第78話

「既にオゾンホールの自己再生の可能性は2%を切りました。また、先の温暖化で氷中のメタンが溶け出して、地中メタンの濃度が上昇し、可逆域を越えています。この40年の記録…

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11日前

【小説】日本の仔:第77話

「何かが月の中心に詰め込まれています。恐らくそれが月の見かけの質量を増加させているのだと思われます、スゴく嫌な感じがします。なぜでしょう」  時子さんにとって嫌…

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2週間前
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【小説】日本の仔:第76話

「月の見かけの質量が増加している原因は2つ考えられます。1つは、この宇宙機と同じように中性子核などの極端に重い物質を生成して月面もしくは月の中に設置した場合。もう…

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2週間前

【小説】日本の仔:第75話

「今の状況だと、約1年後に地球に衝突することになる」  月が地球に衝突したらどうなる?  月は地球の1/10の大きさだけど、ぶつかれば表面だけでなく地球内部にまでめり…

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3週間前
1

メガネ女子321

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3週間前

【小説】日本の仔:第74話

 外の景色も代わり映えしないので、静のそばのソファーに腰掛けた。 「月がいつも表の面を地球に向けているのはなぜか知ってるケロ?」  突然、静がなぞなぞのような話を…

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3週間前

【小説】日本の仔:第73話

「明朝0600、宇宙エレベータに搭乗し、静止軌道に向かいます。静止軌道ステーションから宇宙機に乗り換え、地球の重力を利用したスイングバイ航法で月に向かいます」  今…

クマ
3週間前
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【小説】日本の仔:第72話

【鍊】(環境省)  現在月面にいると思われる徳永秀康氏にコンタクトし、地球氷河期化を止めるプロジェクトは日本政府で秘密裏に進められ、月へ向かう宇宙機の製造と飛行…

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4週間前
2

メガネ女子320

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1か月前

【小説】日本の仔:第71話

 瑞希がコンタクトできるソマチットとは一体何なのだろう。  彼から述べられる話から判断すると、我々よりも科学的には先に行っている存在のようだが、実態は単細胞生物…

クマ
1か月前
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【小説】日本の仔:第70話

「ありがとうございます。では早速ご協力いただきたいのですが、先ほど会話に出てきた例のサービスとは何のことですか?」 「うわ、覚えとったか。参りよるなー...わしが言…

クマ
1か月前
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【小説】日本の仔:第82話

【小説】日本の仔:第82話

 静はいくら揺すっても起きなかったが、バイタルサインは正常値だったので、少し様子を見ることにした。

「ところで、23億6千万円の借金てどういうこと?」
 さっきの父さん①の借金の話が気になって、玲奈さんに聞いてみた。
「ああ、学生の頃、実験の後なんかに研究室によく皆で泊まってたんだけど、そこに全自動の麻雀卓があってね。よく皆でやったのよ」
 まさか賭け麻雀でそんな高額の借金を作ったってこと?

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【小説】日本の仔:第81話

【小説】日本の仔:第81話

【瑞希】
 父さん②は自身の手首を擦りながら立ち上がり、
「お前ら、生き残れると思ったら大間違いだからな!」
 と、ヤクザみたいな口振り。

「人間は一挙手一投足が地球環境に負荷を与えている。なにか作れば、必ずいつかゴミになる。食べ残せば食品ロスだが、食べても排泄物が出る。息をするだけでも二酸化炭素を吐き出す。もう人間は地球に必要ない!」
「それは地球を鑑賞対象としているから言えることでしょう?人

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【小説】日本の仔:第80話

【小説】日本の仔:第80話

【鍊】
 徳永チルドレンたちは遺伝的に特殊能力を持つことになったが、他の日本の子たちにはこんな能力は...
 いや、そう言えば、日本の子には生まれる前に遺伝子操作が行われると聞いたことがある。
 徳永チルドレンのような特殊能力を持つ遺伝子が既に解析されていて、同じ特殊能力を持った人間が生まれる遺伝子となるように操作がされているとしたら?
 徳永チルドレンは実験台で、「日本の子」政策の本当の目的は特

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【小説】日本の仔:第79話

【小説】日本の仔:第79話

 玲奈さんは手に持っていた金属製の箱を掲げて、床に置いた。

「この箱の中に入っているのは...」
 気密性のありそうな蓋を開けると、え?、何これ?
 カラフルな花みたいな形のわたあめ?
 綿飴アートらしきものが出てきた。

「あーっ!!それは!ブーゲンビリア1号。あれ?玲奈さん?」
 部屋中にさっきの父さんの声が響き渡った。
「秀くん。やっぱり気づいたね」
「わー!玲奈さん死んじゃったのかと思っ

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【小説】日本の仔:第78話

【小説】日本の仔:第78話

「既にオゾンホールの自己再生の可能性は2%を切りました。また、先の温暖化で氷中のメタンが溶け出して、地中メタンの濃度が上昇し、可逆域を越えています。この40年の記録では温暖化による生物種の絶滅が進み、数万種の固有生物が二度と帰らぬ存在となってしまいました。特に淡水域に生息していた微生物の減少により、淡水の浄化力が下がり、そのまま飲める水は地球上からなくなりました」
 40年前、玲奈さんがコールドス

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【小説】日本の仔:第77話

【小説】日本の仔:第77話

「何かが月の中心に詰め込まれています。恐らくそれが月の見かけの質量を増加させているのだと思われます、スゴく嫌な感じがします。なぜでしょう」
 時子さんにとって嫌な感じがするものが一体何なのか、ちょっと恐いけど、徳永氏が絡んでいることは間違いないだろう。

「全員チェック完了。一人ずつエアロックから船外へ」
「あ、ちょっとやることがあるから先に行ってて」
 玲奈さんがさっきの機械で何か作り始めたみた

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【小説】日本の仔:第76話

【小説】日本の仔:第76話

「月の見かけの質量が増加している原因は2つ考えられます。1つは、この宇宙機と同じように中性子核などの極端に重い物質を生成して月面もしくは月の中に設置した場合。もう1つは月で待機しているとされている人間の魂を、消滅させることによるダークエネルギーの消失です。ダークエネルギーは負のエネルギーなので、消失することによって見かけの質量が増すことになります」
 時子さんが詳しく説明してくれた。
 2つ目の原

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【小説】日本の仔:第75話

【小説】日本の仔:第75話

「今の状況だと、約1年後に地球に衝突することになる」
 月が地球に衝突したらどうなる?
 月は地球の1/10の大きさだけど、ぶつかれば表面だけでなく地球内部にまでめり込んで来そうだよね。
 そうなれば地殻や海だけでなくマントルも宇宙に吹き飛んで、地球が粉々に砕けてしまうかもしれない。
 そうなれば当然地球の生き物は全滅を免れないし、時子さんも無事では済まないだろう。
 何とかして食い止めないと..

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【小説】日本の仔:第74話

【小説】日本の仔:第74話

 外の景色も代わり映えしないので、静のそばのソファーに腰掛けた。
「月がいつも表の面を地球に向けているのはなぜか知ってるケロ?」
 突然、静がなぞなぞのような話をしてきた。

 改めて聞かれると、確かに不思議かも。
 月が常に同じ面を地球に向けてるってことは、月が地球を回る公転周期と月の自転周期が完全に同じってことでしょ。
 普通に考えたら、その二つが全く同じなんてことはあり得ないよね。
 月と地

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【小説】日本の仔:第73話

【小説】日本の仔:第73話

「明朝0600、宇宙エレベータに搭乗し、静止軌道に向かいます。静止軌道ステーションから宇宙機に乗り換え、地球の重力を利用したスイングバイ航法で月に向かいます」
 今回、宇宙機の機長を務める鍊がブリーフィングを仕切る。

 本来は宇宙エレベータの軌道端から宇宙機を射出した方が燃料などが節約できるけど、今回は月に到達できる早さを優先するために静止軌道から宇宙機で向かうことになっていた。
 静の設計した

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【小説】日本の仔:第72話

【小説】日本の仔:第72話

【鍊】(環境省)
 現在月面にいると思われる徳永秀康氏にコンタクトし、地球氷河期化を止めるプロジェクトは日本政府で秘密裏に進められ、月へ向かう宇宙機の製造と飛行プランの策定、海外で虐殺的なパンデミックを起こしたコロナウイルスのワクチン製造が進められていた。
 氷河期化を引き起こした原因についても調査を進めているが、海外での調査ができない今、ほとんど進んでいなかった。
 国民には未だ状況は知らされず

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【小説】日本の仔:第71話

【小説】日本の仔:第71話

 瑞希がコンタクトできるソマチットとは一体何なのだろう。
 彼から述べられる話から判断すると、我々よりも科学的には先に行っている存在のようだが、実態は単細胞生物のようにシンプルな構造らしい。
 普通に考えれば、生物は脳の重さに比例して複雑な思考が可能となるはずで、単細胞生物並みの微細構造では複雑な思考はできないと考えられているのだが。
 となると、思考しているのは別次元や別の宇宙の存在で、たまたま

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【小説】日本の仔:第70話

【小説】日本の仔:第70話

「ありがとうございます。では早速ご協力いただきたいのですが、先ほど会話に出てきた例のサービスとは何のことですか?」
「うわ、覚えとったか。参りよるなー...わしが言ったて内緒にしてくれるか?」
「もちろんです」

 毛利は謎の調査サービス機関について話し始めた。
 基本的には人探しのサービスだが、今まで何度か利用してきて、探し人が見つからなかったことはなかったという。現在の徳永秀康氏の居場所以外は

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