Luno企画

創作チーム「Luno企画」です。 ・小説 ・漫画原作(商業化作品は記事にて紹介) h…

Luno企画

創作チーム「Luno企画」です。 ・小説 ・漫画原作(商業化作品は記事にて紹介) https://note.com/lunoimago/n/n6d7a73e488f7

マガジン

  • 自己紹介など Luno imago

    わたしたちのこと。 ※2023.7.22 埋もれた企画掲載開始

  • 宿災備忘録 ー 空 薄鈍、そののち

    生まれながらに災厄を身に宿した存在【宿災】。その運命に生まれた少年と、ともに生きるもの達の物語。短編集。 使用画像 ・壱/みんなのギャラリーより/スナフ様(https://note.com/snafu_2020/) ・弐/みんなのギャラリーより/alexandre_141様(https://note.com/alexandre_141/) 作:月下 遊魚(つきもと ゆうな)/luno企画

  • 宿災備忘録-発

    信じる。信じない。教えてくれるものは、いない 生まれながらに災厄を宿した存在、宿災/しゅくさい その運命に生まれたものと、ともに生きるものたちの記録 自らの中に真実を求める、ミステリアスファンタジー

  • まつりのあと

    突然の、父の死 喪主となった晴菜には、ある秘密が託された やってきた女 やってきた男達 明かされる秘密の「どれが本当の真実」なのか 父さん 本当に貴方は 最期まで勝手な人でしたね バラバラになっていた家族が集い 「あの頃」と「今」 かたちがあった時には見えなかった思いに触れながら 晴菜は託された秘密の行き先を模索する 使用画像 マガジンヘッダー:ぱくたそ様 各話ヘッダー:みんなのギャラリー/kesano_sora様(https://note.com/kesano_sora/) 作:月下 遊魚(つきもと ゆうな)/luno企画

  • 宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節

    槙 深遠(まき しんえん)は、時の流れの異なる空間を往来しながら結界の修復を続ける【脱厄術師(だつやくじゅつし)】。主従関係にある鷹丸家の娘、維知香は、その身に災厄を宿す【宿災(しゅくさい)】として生まれた。 脱厄術師は宿災の守護とされ、深遠は維知香に宿災としての【在り方】を教え、見守りながら自らの任をつとめていた。 維知香は幼き日より深遠に恋心を抱き続けるが、深遠は維知香の思い、そして自分の本音に気づきながらも独りであろうとする。 自らの任と愛する人―― ふたつの間で逡巡する思いは、どこへたどり着くのか。 抗えない時の流れの中、一途な思いを抱く者達の四季を描く、恋愛ファンタジー。 著者:月下 遊魚(つきもと ゆうな)/luno企画

最近の記事

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作品紹介:「宿災備忘録」という物語について

管理人の十日夜です。 7月13日(土)に最終話を投稿した「宿災備忘録-発」は、月下氏が初めて書いた小説をもとに、何度も改稿を重ねた物語です。読書好きの月下氏が、自分はどんな物語が読みたいのか、を考えながらノートにキャラクターやあらすじを書いていったことから始まったそうです。 書いているうちに楽しくなり、少しまとまったところで友人に読んでもらったところ反応がよく、どんどん欲が出た結果、長編が完成した、とのこと。 本記事のサムネイル、本文中に掲出している表紙は、絵師の氷川こち

    • 雨、雪溶かす春の調べ

      黒の羽織を濡らすのは小糠雨。鼓膜は音を求めて鋭敏になる。周囲には背の高い杉が立ち並び、紛れて落葉樹も見られる。 根本付近に残雪。 山中であることは間違いないが、杉の並びは規則的で、明らかに拓けた場所に見えた。人影も、動物の姿もなく、鳥も雨に歌を奪われたのか、微かな囀りも聞こえない。 ――不思議な場所だ 深遠は足元に視線を落とした。白い玉砂利。足を進める。雪と石が軋む音。やっと音らしい音を聞き、深遠は肩の力が抜けたと自覚した。しかし、この場の不可思議さへの警戒は保

      • 【表紙・使用画像の紹介】宿災備忘録ー発:第4章

        管理人の十日夜です。 2024年創作大賞にエントリーしている「宿災備忘録ー発」では、主に「みんなのフォトギャラリー」より画像をお借りしています。 最終章となる第4章も、画像を提供してくださっている皆様のおかげで、各話に合った画像を見つけることができました。本当にありがとうございます。 4章では、下記の皆様よりお借りしています。 1話① eri_4455様 https://note.com/eri_4455_ 1話② spinozamotors様 https://no

        • 備忘

          湖野に於ける結界の役割は、向こう側(湖野でいう山神の庭)との往来の制限、零念の捕獲等であり、特殊要件はないと判断。他の場所とも共通するが、強い気の流れがある場所には、それによって歪みが生じることが多いと思われる。 民話にある山神の庭の入り口に関する場所には、大小様々な結界、また、その跡と思われるものがあった。綻びが生じた場所には適宜処置を施した。あの地域で最大の結界(湖野全域にわたる)には小さな綻びもなく、非常に強靭なものであるとわかった。それにより靄状になるほど増えた零念

        • 固定された記事

        作品紹介:「宿災備忘録」という物語について

        マガジン

        • 自己紹介など Luno imago
          11本
        • 宿災備忘録 ー 空 薄鈍、そののち
          10本
        • 宿災備忘録-発
          38本
        • まつりのあと
          7本
        • 宿災備忘録 四季 対岸の君と逡巡の季節
          68本
        • コーディネーターはスワンボートに乗って
          105本

        記事

          宿災備忘録-発:第4章6話②

          イルミネーションで彩られた街。吹きつける風。駅に向かう人々の波から、寒いね、と聞こえ、美影は小さく息を吐いた。吐く息は白い。確かに外気は冷えている。しかし美影は、心地良さを感じていた。自分に宿る災厄が、喜んでいるからかもしれない。 どう考えても以前の自分とは違う。その自覚があった。自分が何者かを考えずにいた頃には戻れない。少し前の普通が、なんだかとても遠く感じる。 「普通、か……」 思わずつぶやいて、口を噤み、首を横に振る。久遠達に出会う前と同じ生活、否、同じ感覚

          宿災備忘録-発:第4章6話②

          宿災備忘録-発:第4章6話①

          師走の風に乗る、線香の香り。細く揺らめいた煙は、寒風に吹き流される。墓前には白と薄桃のクリスマスローズ。美影は、質素な墓石に亡き人の顔を重ねながら、手を合わせた。 月命日は14日。先月の一周忌には、墓石が隠れてしまうほどの献花があった。墓の前でしゃがみ込む人の背中は途切れず、美影は、故人がどれほど愛されていたのか、改めて知った。今は自分以外の気配はない。ゆっくりと対面できることに、喜びを覚える。 「本当は生きてるうちに、たくさん向き合わなきゃいけなかったんですよね……

          宿災備忘録-発:第4章6話①

          宿災備忘録-発:第4章5話

          門の外。美影は玉砂利を踏みしめて立ち、木戸が開く瞬間を待っていた。久遠がしたように、開け放とうとも試みた。しかし災厄に思いが通じないのか、美影の体に変化は訪れない。 ――まだ?   まだなの? 気持ちを抑え切れない。木戸に体ごとぶつけてみる。しかし体に衝撃と痛みが伝わっただけで、木戸は微塵の隙も見せはしなかった。焦りに紛れた怒り。苛立ち。それを体現するように、両手は自然と拳に。 非難する相手が現れるのを待ち構える。木戸が軋む時を待ち侘びる。そして待ち人は、静かに現れた。

          宿災備忘録-発:第4章5話

          宿災備忘録-発:第4章4話

          巫女と久遠、向かい合い、沈黙。久遠は、黒が滴る巫女の顔を見据えた。この顔を知っている。石寄の手帳、隠されていた写真に写っていた女。 「湖主ハルだな……生きていたのか。なぜ嘘を?」 「黙れ」 「贖罪のつもりか」 「黙れと言った」 「写真とは、だいぶ違う。その姿を見られたくなかったか……突然吹き飛ばされたんだ。あいつは、まともに見てはいないだろう」 「はっ、慰めのつもりか……余計なお世話だ。そんなことを言ってる暇は、ねぇはずだぞ」 巫女は笑い、自分の足元に広がった漆黒の水

          宿災備忘録-発:第4章4話

          宿災備忘録-発:第4章3話②

          久遠が歩き始め、足元の雪がぎゅっと音をたてる。続いて、美影も足を動かした。寒気はとうに消え、黒いシャツは役目を終えている。しかし美影は、余った袖を数回折り返し、胸元のボタンを、ふたつ留めた。 再び屋敷に踏み入れる。四季を描いた襖は開け放たれたまま、深緋の回廊まで一直線。 2人は、申し合わせたわけでもないのに、同じ方向に足を進めた。神様の部屋。フキがそう表現した部屋に、巫女はいる。そんな予感があった。 襖の前に辿り着く。久遠は横目で美影の存在を確認した後、襖に手をか

          宿災備忘録-発:第4章3話②

          宿災備忘録-発:第4章3話①

          空間から言葉が消えて間もなく、白馬の嘶きが響いた。素早く反応した久遠は裸足のまま小屋を飛び出し、すぐに立ち止まる。美影も裸足で外へ。 小屋の前にフキの姿。厩から戻ってきたばかりなのか、両手は土で汚れている。顔は強張り、微かに震えているように見えた。 「みこさまが……あねさんらをよんでる」 震えた声。繰り返される嘶き。美影はフキのもとへ。久遠は白馬の声のするほうへ。 厩への道標は、フキが作った歩幅の狭い足跡。それを踏みながら久遠は進む。美影はフキの手をとって、久

          宿災備忘録-発:第4章3話①

          宿災備忘録-発:第4章2話②

          「だめだ!」 声を放ったのは、茜色の着物に身を包んだ少女。美影と久遠、2人の視線を受けた少女は、首を横に振りながら駆け寄り、襖に伸びた久遠の手を制する。 「だめだ、はいっては、だめだ!」 ぎゅっと久遠の手を握った少女。その声に、美影は強く反応。 ――この声を知っている 夢の中で聞いた少女の声。可憐さを含んだ残響は、確かに夢の中の音と同じ。 久遠にじっと顔を覗かれ、少女は沈黙。その目に涙が滲む。久遠は、その涙を拭う仕草を見せず、美影に視線を。

          宿災備忘録-発:第4章2話②

          宿災備忘録-発:第4章2話①

          白馬が刻む、一定のリズム。美影は、鼓膜を震わせる小さな音を追い続けた。妙に胸がざわつく。この音が消え去るのが怖い。 美影の隣を歩く久遠は、黙っている。ほんの僅かではあるが、久遠の気配が研ぎ澄まされている気がする、と美影は感じていた。なんらかの危険を、予感しているのだろうか。 ――もしもの時は私も祓いを? 美影は視線を手の平に。零念を祓うには、災厄と通じ、その力を貸してもらうのだという。祠の前で放った熱感は、自分と災厄の葛藤であり、災厄自身ではないと、灯馬は

          宿災備忘録-発:第4章2話①

          宿災備忘録-発:第4章1話②

          月夜にいななく高らかに いずこいずこと高らかに 月 微笑みて我を照らし 今宵も我に何も語らず 「月夜にいななく高らかに。いずこいずこと高らかに。声、枯れ果てて風に嘆き。空をさまよい何も届かず」 続く歌に声を重ねた美影。歌は音を潜め、美影の耳は次に訪れる音を待ち侘びる。しかし歌声は止み、夢の中で聞いた少女の声も、聞こえはしなかった。 「今の歌、知っているのか?」 「うん」 「話してくれないか……俺も、話したいことがある」 久遠は起き上がり、美影に視線を。美影

          宿災備忘録-発:第4章1話②

          宿災備忘録-発:第4章1話①

          昔あった話だと。雪溶けの頃、浜のほうから来た商人、山越えて行く途中で陽が暮れて、山ん中の祠の前で横になってたんだと。 うつらうつらとした頃、祠の中からおなご出はってきたんだと。おなご、身の丈三尺ほどで、祠のしめ縄から紙垂1枚抜いで顔さ貼って、すたすたと山さ入ってったんだど。商人、黙っておなごの後ろついてったんだと。 しばらくして、見事な屋敷の中さ、おなご入ってったんだと。商人も屋敷さ入ってみだっけ、広い座敷さ膳だの酒だの置いてあったんだと。誰もいねぇのにざわざわってし

          宿災備忘録-発:第4章1話①

          【表紙・使用画像の紹介】宿災備忘録ー発:第3章

          管理人の十日夜です。 2024年創作大賞にエントリーしている「宿災備忘録ー発」では、「みんなのフォトギャラリー」より画像をお借りしています。 第3章では、下記の皆様よりお借りしています。 1話① FUTAYAKU / Futayaku Camera Works様 https://note.com/futayaku/ 1話② keita様 https://note.com/keitafukui 2話・4話 稲垣純也様 https://note.com/inagakij

          【表紙・使用画像の紹介】宿災備忘録ー発:第3章

          宿災備忘録-発:第3章6話

          「あちら側に入る前に、災厄の解放の仕方を、教えておきたい」 祠の前で、久遠と美影は向かい合った。久遠の言葉に頷いたは良いが、美影は熱っぽさに襲われ、集中できずにいた。 合羽のボタンを全て外し、新鮮な空気を取り入れてみたものの、体に触れる清涼感は限りなく無に近い。額の汗を手で払い、大きく息を吐き出した美影。久遠は美影の異変を見逃しはしなかった。 「ただの熱じゃない。お前の中の災厄が力を高めている証拠だ。この祠に近づいたことで活気づいたんだろう……これから、ほんの少し

          宿災備忘録-発:第3章6話