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コーディネーターはスワンボートに乗って

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柾木博美(まさき ひろみ/25歳、男。金、夢、希望なし)は、異世界の住人でツアーコーディネーターのフリーコック(スタイル抜群でヒヒ顔のオス)にヘッドハンティングされ、とある世界へ…
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コーディネーターはスワンボートに乗って Ⅰ § Inter nokto kaj mateno : Betwe…

 不規則な揺れで目が覚めた。暗い船室に射し込む、薄く、柔らかな光。狭く蒸した空間。寝床が…

Luno企画
1年前
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コーディネーターはスワンボートに乗って Ⅱ①§ Membro kaj urbesto(=Aro)  : Me…

 俺は今、アーロという街にいる。石畳が敷かれた通りに、クラシカルな街路灯が立ち並び、ヨー…

Luno企画
1年前
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コーディネーターはスワンボートに乗って Ⅱ②§ Membro kaj urbesto(=Aro)  : Me…

「やったーーーーーっ! オレ、いっちばーーーん!!!」    両手をグーにして天井に突き上…

Luno企画
1年前
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コーディネーターはスワンボートに乗って Ⅱ③§ Membro kaj urbesto(=Aro)  : Me…

 細長いシルエット。背中に生えた四枚の薄い羽。ゴツイ複眼と小さな口。まるでトンボの王様・…

Luno企画
1年前
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コーディネーターはスワンボートに乗って Ⅱ④§ Membro kaj urbesto(=Aro)  : Me…

「なんだなんだァ、チェルボが行っちゃってさびしいのかァ? すっかり仲良しじゃないか。いい…

Luno企画
1年前
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コーディネーターはスワンボートに乗って Ⅱ⑤§ Membro kaj urbesto(=Aro)  : Me…

「お、着替え終わったな。袖と裾の長さ、どうだ?」 「ああ、まあ、ちょうどいい……ありがと…

Luno企画
1年前
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コーディネーターはスワンボートに乗って Ⅱ⑥§ Membro kaj urbesto(=Aro)  : Member and city §

 フリーコックの部屋で目覚める前日は、ハロウィンだった。俺は定時にパソコンの電源を落とし、会社を出た。仮装イベントには興味がない。いつも通り、まっすぐ駅に向かい、電車に揺られて自宅最寄り駅へ。次の日からは相当遅れてとった夏休みで、キャンプに行く予定だった。気分が浮かれて、たまに寄る立ち呑み屋に入った。一杯だけ飲んで帰ろう。そう思っていたはずなのに……  目覚めた俺を、ヒヒ顔がのぞき込んできた。絶叫して硬直。フリーコックはお構いなしに、さあさあ着替えなさいよォ、と笑顔で俺に自

コーディネーターはスワンボートに乗って Ⅱ⑦§ Membro kaj urbesto(=Aro)  : Me…

 フリーコックは俺に運命を感じたらしい。理由は、ヤツの【予備のトラベラーヴォ】が勝手に俺…

Luno企画
1年前
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コーディネーターはスワンボートに乗って Ⅲ① § En la mezo de la vojaĝo : …

 晴れた朝。この世界の青空は、やたらと鮮やか。運河の左右には草原が広がっている。建造物は…

Luno企画
1年前
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コーディネーターはスワンボートに乗って Ⅲ② § En la mezo de la vojaĝo : …

「おはよぉ……まだまだみたいねぇ」 「おはよう」 「あー……頭がぼんやりする。ねえ、なんか…

Luno企画
1年前
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コーディネーターはスワンボートに乗って Ⅲ③ § En la mezo de la vojaĝo : …

「おはよォ。オレの隣に戻ってきてくれよォ。淋しいじゃないかァ」  おはよう、とだけ返し、…

Luno企画
1年前
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コーディネーターはスワンボートに乗って Ⅲ④ § En la mezo de la vojaĝo : …

 マルコが係留施設の手続きを先に終えてくれたおかげで、俺達はスムーズに入港。更に、いい感…

Luno企画
1年前
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コーディネーターはスワンボートに乗って Ⅲ⑤ § En la mezo de la vojaĝo : …

 聞くとブランカは、元々はマッチングコーディネータだったとか。黙っていればそれなりに可愛…

Luno企画
1年前
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コーディネーターはスワンボートに乗って Ⅲ⑥ § En la mezo de la vojaĝo : In the middle of the journey §

 辺りは完全に夜の支配下。舗装のないガタガタ道はまっすぐに伸びている。左右は草原。建物も、すれちがうものもない。ハウスボートで半日。休憩して、そこから更に半日。まだ目的地にはつかない。かなり疲れている。まだ働いてもいないのに。  ブランカが多額の経費を突っ込んだ喫茶店を出て、ポルターントという乗り物で移動再開。俺のいた世界でいうところの馬車のような感じで、こっちの世界ではサイーゾというサイとゾウをかけ合わせたような巨大な動物が、小さなコンテナハウスを牽引する。中はワンルーム